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「ワシの名前は何だった?」―青ブラ文学部「忘れっぽい詩の神」企画募集作品



人間界へ降臨

リリックは 天界では
ちょこっと 知られた神様で
「詩神(ししん)」とよばれたり
したこともある
自分では 繊細な感覚を持ち
今でも 女神のファンは沢山いると
自負していた

数百年を 神として生きてきたが
年を経てもひげもしろくなったが
生来の 「いたずら好き」の
性格だけは 治らなかった

気が向くと 魔法の 水晶杖をもって
人間界に降りてきては こっそりと
いたずらをくりかえした
今回 降りて来たのは 中世が
色濃く残る ドイツの小さな町だった
街はは オスマン帝国の侵略戦争に
おびえていた

楽しい「いたずら」1

大型犬のラブラドルを
みつけて 杖を振り魔法をかける
犬の 外見には変化ないが
中身は 猫になった
大声で ミャーミャーなき
ネズミを 猛スピードで追いかけ
すれちがう人の足に スリスリする
気に入らないと ネコパンチもどきを
くりだし 飼い主に傷を負わせる
街の大金持ちたちは こぞって
この世にも珍しい「犬猫」を
是非 自分のペットにしたいと
飼い主の鼻先に 金貨を積んだ

楽しいいたずら2

ピザのお店の 太った中年店主に
魔法をかけてみる
店主は 髭もじゃの顔で
頬紅を付け 体をしならせて
通行人に 流し目を送る
送られた人は 跳び上がって
逃げていく
そのうちに 警官がやってきて
店主は 警察に連れていかれる
店主は 警察署でも 口を尖がらして
投げキスを 警官たちに送り続ける
警官はみな 吐き気を覚えて
トイレは 満室になる

楽しいいたずら3

街の広場に 建っている
馬上の騎士の像に
魔法の呪文をとなえる
たちまち像は うごき、
馬に乗ったまま 走り出して
大声で「敵だ 敵だ
イスラム教徒が せめてくる」と
町中に 触れてまわる
町中は バケツをひっくり返す大騒ぎ 
とうとう 軍隊が 出動して
街の門という門を 守る
でも 敵の騎馬隊 どころか
キャラバンさえ 現れない
軍の隊長は 嘘つき騎士探しに
躍起になり 怒りまくり 付き添い兵の
おしりを足で 蹴り上げる

リリック神は 大笑いして
これらの光景を 日がな一日楽しむ 
笑いすぎて お腹が痛くなった

天上への道がわからない

そろそろ 天へかえらねば
ならない時間に なった
そこで あれ!?? 何も思い出せない
「あれ~ わしの名前は 何じゃった???
ワシは なんの神様であった?
天の 何処へ 戻ればよかったのかな??」

丁度 そのころ 天上界の 大神様が心配して
天使に リリック探索に 依頼していた
天使は リリックを 捜して 遠くは
南の島 北はシベリアまで 飛び廻って
やっと 街中に ぼんやりと佇んでいる
リリックを見つけ出して
ようように 天界に連れ帰った

この逸話が 起きて以来 天界では
リリックのことを「忘れっぽい詩の神」と
別名で呼ぶ事が 定着した。
ギリシャ神話でも リリックのおまぬけな
話が語られているというが、
真偽のほどは 雲の中だ

山根あきらさんの#青ブラ文学部
お題 #「忘れっぽい詩の神」応募作品です。
山根さん またおせわになります

#私の作品紹介 #青ブラ文学部   #忘れっぽい詩の神 #山根あきらさん

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