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フランス詩を訳してみる

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2021年7月の記事一覧

アンリ・ド・レニエ「抒情小曲 Ⅰ」(フランス詩を訳してみる 29)

Henri de Régnier (1864-1936), Odelette I (1897)

ちいさな葦の葉ひとつあれば
背の高い草を
いちめんの野を
やさしい柳の木を
歌う小川を ふるわせることができた。
ちいさな葦の葉ひとつあれば
森に歌を歌わせることができた。

通るものらはそれを聞いた、
夜の底に 心のうちに
静寂のなか 風のなかに
はっきりと またかすかに
近く また遠くに……。

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ヴェルレーヌ「Green」(フランス詩を訳してみる 28)

Paul Verlaine (1844-1896), Green (1872)

果物と花と葉っぱと枝を差し上げましょう
それからあなただけのために打つぼくの心を。
どうか真っ白な両手でぼくの心を引き裂かないでください。
ささやかな贈り物があなたの美しい瞳に快く映りますように。

体じゅうに朝露をまとったままぼくは参りました。
朝の冷たい風で 額の露は凍てついています。
願わくは ぼくの疲れがあな

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