#449 ちょっと難しめの話:利息や遅延損害金(法定利率)
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【 今日のトピック:利息・遅延損害金 】
さて,今日は利息や遅延損害金という,ちょっと難しめの話をしようと思います。
「利息(りそく)」は聞いたことある人もいるでしょう。
住宅ローンなど,借金をする場合,返済総額は,借りた金額よりもだいぶ増えますよね。
5000万円借りて自宅の新築代金を工面した場合,その5000万円の借金を,毎月返済していくわけですが,その返済総額は,6000万円くらいになることもあります。
5000万円しか借りていないのに,どうして1000万円も多く返済しなきゃいけないのでしょうか。
この増額が,「利息」ですよね。
借りたお金は,利息をつけて返済しなきゃいけないという契約になっているので,その契約で決めた分の利息を上乗せして返済していくわけです。
そうすると,最終的には,返済総額が1000万円も増えてしまうこともザラです。
この「利息」を「あくどい」なんて思う人もいらっしゃるでしょうが,お金を借りなければ自宅の新築代金は工面できなかったわけですから,利息に文句を言うのはお門違いですよね。
別に,自宅をわざわざ新築しなくても,賃貸物件なんて,世の中にいくらでもあります。
その賃貸物件に住めば,住宅ローンなんて借りなくても自宅を確保できたにもかかわらず,あえて,住宅ローンを借りて自宅を新築するという方法をとったわけですから,利息を「あくどい」というのは筋が通りません。
利息を上乗せしなきゃいけないにせよ,お金を貸してくれたからこそ,自宅を新築することができたわけです。
借りた金額以上を返済したくないのであれば,住宅ローンなんて,最初から借りなければよかっただけです。
自宅を確保するのに,土地や建物の「所有権」は一切不要です。
賃貸借契約を結んで,建物を借りれば,自宅を確保することはできます。
賃貸だと,毎月家賃を払っても,その物件が自分のモノにならない(所有権を獲得できない)からもったいない,なんてことも言われますが,僕としては,「必ず価値が落ちてしまう」モノである建物にお金を突っ込んでしまうことのほうが「もったいない」と思ってしまいます。
せっかくのお金が,「必ず価値が落ちる」建物に変わってしまうことが,僕はもったいなくて仕方ありません。
お金はお金として持っていれば,今のデフレ時代では,最も価値をキープしやすいのに,わざわざ「建物」に交換する必要はないでしょう。
土地についても,その地価が上がるかどうかは,将来のことなので完全な予測は不可能です。
むしろ,日本は人口が減少していきますから,土地はどんどん余っていくはずです。
だから,基本的には,土地の価値は値下がりしていくはずです。
もちろん,地価が上昇する土地もあるでしょう。とはいえ,自分が購入した土地の価値が上がるかどうかは,完全に予測できません。
せっかくのお金を,こういった値下がりリスクのある土地や,必ず値下がりしてしまう「建物」に交換してしまうのは,もったいないはずです。
日々の買い物は1円単位で節約する人たちが,土地や建物については,わざわざ借金してまで購入するのは,「もったいない」の基準がおかしくなっていると,僕は思います。
さて,住宅ローンへの文句をちょっと書きすぎましたが,利息の話に戻ります。
「利息」というと,「上乗せして払わなきゃいけない」という悪いイメージを抱きがちですが,これは,利息を払う側の話です。
利息を「もらう側」になって考えてみると,こんないい話はありません。
お金が増えて払われるわけですからね。めちゃくちゃいい話です。
でも,普通の人たちには「利息」なんて関係ない,と思われるかもしれません。
確かに,民法では,無利息が原則となっています。
つまり,貸金業者ではない,僕みたいな一般人がお金の貸し借りをした場合,利息の約束をしていない限り,その貸し借りは無利息となってしまいます。
だとすれば,お金を貸す際に利息の約束をしたくなりますが,利息をとってまでお金を貸そうとしたら,僕は完全に友達を失ってしまうような気がします(笑)。
だから,なかなか,僕のような一般ピーポーが,お金を貸し借りする際に利息の約束を取り付けることは難しいような気がします。
そうなると,「無利息の原則」通り,お金を貸し借りしても,利息は貰えなさそうです。
でも,ここで「遅延損害金」というやつが登場します。
この「遅延損害金」は,利息とは別モノです。ちょっと説明します。
例えば,僕が,2021年2月22日に,友だちに100万円を貸したとしましょう。会社を経営している友だちで,どうしても100万円を今週以内に用意して預金口座に入金しないと会社が倒産してしまうと言われ,仕方なく100万円を友だちに渡しました。
ただ,来月には,売掛金(後払いの売上)がまとまって入金されるから,来月末(3月31日)までに100万円を返済するという約束を取り付けたことにしましょう。
もちろん,僕にとってはかけがえない友だちですから,利息の約束なんてしていません。
100万円もの現金が手元から消えてなくなるのは,僕にとってはめちゃくちゃ大変なことなので,少しくらい色をつけて(利息を上乗せして)返済してほしいとは思いますが,まあ,きっと返済してくれるし,友だちだから,利息の約束はせず,無利息で貸すことにしました。
しかし,返済期限の3月31日になっても,その友だちは返済してくれません。
4月が過ぎ,5月が過ぎても,全然返済してくれません。僕が貸した100万円のおかげで,会社は無事に危機を乗り越えたようで,友だちは優雅な生活を送っています。
100万円くらい,すぐに返せそうなのに,全然返してくれません。
返済期限から半年が経過した2021年9月30日,僕は,この友だち相手に訴訟を提起しました。貸した100万円を全額今すぐに返済せよ,という訴訟です。
この訴訟って,どんな訴訟になるでしょうか。
無利息ですから,100万円だけを支払え,という訴訟になりそうですが,実は,そうではないのです。
返済期限の翌日以降の「遅延損害金」なるものを,100万円に上乗せして支払うよう請求することができるのです。
「遅延損害金」とは,なんか難しそうですが,漢字を見ると,意味がなんとなく見えてきます。
「遅延」の「損害金」と書かれていますが,要は,返済期限が過ぎても返済しなかったことによって発生した損害金が,「遅延損害金」です。
仮に,返済期限までに100万円がきちんと返済されていれば,僕は,返済された日以降,そのお金を増やすことができたはずです。
定期預金に預けるなり,国債を購入するなり,株を購入するなり,何かしら事業を立ち上げるなり,100万円もあれば,お金を増やすことができたはずです。
にもかかわらず,約束通り返済されなかったせいで,この「増やすチャンス」が失われてしまいました。
この「チャンス喪失」が,「損害」と考えられています。
じゃあ,この「チャンス喪失」が,どれくらいの金額なのかというと,年利3%となっています。
つまり,この日本では,お金は,ほっといても年利3%で増えていく,と民法は考えていて,そうすると,返済期限までに返済されなかったせいで,本来年利3%で運用できた「チャンス」を失ってしまったという損害が発生し,その損害を,返済が遅れている相手に請求できるのです。
これが「遅延損害金」と呼ばれるやつです。
この「遅延損害金」は,利息とは全く別モノです。
利息は,返済期限までに返済しようがしまいが貰えるものです。
例えば,僕が,先ほどの例で,100万円を,年利12%で貸していた場合,僕がお金を渡した日から1か月後(3月22日)に利息も含めて全額返済するには,101万円を返済しなければなりません。
この場合,返済期限までに返済しているので,「遅延損害金」は発生しませんが,年利12%の「利息」は発生して,その利息が1万円(年利12%の1か月分)となります。
この利息1万円も含めて返済しないと,全額返済したことにはなりません。
ただ,本当の僕は,利息の約束はしていませんでした。友だちだからという理由で,無利息で貸していました。
この「無利息」パターンでも,「無利息」なのは,返済期限までの話です。返済期限が過ぎた後は違います。
返済期限が過ぎた後は,「遅延損害金」を請求できるのです。そして,その利率は年利3%と,民法で決められています。
だから,僕は,返済期限の3月31日までに100万円を支払ってくれなかった友だちに対して,100万円だけでなく,4月1日からの遅延損害金(年利3%)も上乗せして請求できます。
もし,この友だちが,返済期限から1年後の2022年3月31日に,遅延損害金も含めて全額返済するには,100万円+年利3%の遅延損害金(=3万円)も,返済しなければいけません。
つまり,2022年3月31日に返済する場合,103万円を返済しないと,全額返済したことにはならないのです。
この友だちは,返済が遅れれば遅れるほど「遅延損害金」が膨れ上がることになるので,さっさと返済したほうが賢明です。
「遅延損害金」は,利息とは全く別モノで,利息の約束があるかどうかは無関係です。
返済期限から遅れたら,遅延損害金は必ず請求できます。その場合の利率も,民法で年利3%と決まっています。
この利率は,3年ごとに変動することになっていますが,その変動幅も,年利3%から年利3.128947%,みたいに細かくなることはありません。
3%から変動する場合,変動後の利率は2%又は4%です。3%のまま変動しないこともあります。
変動するにしても,上下1%以内だし,必ず整数%なのです。小数点以下は出てきません。
民法改正前(2020年3月31日まで)は,年利5%で固定でした。
お金は,ほっといても年利5%で増えていく,というのが民法の考えだったのです。
でもまあ,それが時代錯誤だと指摘され,↑に書いたような変動制に変わりました。
変動するのも3年毎で,その情報も,Twitterなどで誰かがつぶやいてくれるでしょうから,「変動制になったことで,法定利率がよくわからなくなっちゃう!」とアタフタする必要はないと思います。
この「遅延損害金」と「法定利率」は,先ほどのお金の貸し借りの場面にも当てはまりますが,よくあるのは,交通事故の損害賠償です。
交通事故の被害者は,加害者に対して,ケガの治療費や慰謝料などの損害を,お金に換算して請求できるのですが,この損害額に,事故日からの遅延損害金も上乗せして請求できます。
それが,民法改正前までは年利5%だったのですが,現在は,年利3%となり,少し目減りしてしまいました。
2020年3月31日までに発生した事故であれば,年利5%で遅延損害金を請求できるので,まだまだ年利5%で請求できる案件は多そうですが,とはいえ,今後しばらくは年利3%です。
【 まとめ 】
「利息」と「遅延損害金」は,ごっちゃになりやすいです。
利息が返済期限までの上乗せで,遅延損害金が返済期限の翌日からの上乗せ,と区別すると覚えるとわかりやすいと思います。
遅延損害金は「年利3%」と書きましたが,約束がある場合は別です。
サラ金(アコム,アイフルなど)は,遅延損害金の利率も契約書に書いていますが,このように,遅延損害金の利率も契約書に書いてある場合は,その利率が適用されます。
年利3%となるのは,先ほどの書いたような,遅延損害金の約束がない場合や,交通事故など,そもそも契約がないような場合に限られます。
アコムやアイフルは,「遅延損害金」という名前ではなく,「違約金」や「延滞利息」,「遅延利息」という名前をつけていることもあります。
「利息」と書かれていますが,これはすべて「遅延損害金」を意味します。
わかりにくいですが,しっかり区別するべきだと,僕は思います。
それではまた明日!・・・↓
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