弁護士の僕ならこうやって遺産相続を進めます-15(遺留分を請求するか)
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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。
僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。
ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。
あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。
ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。
【 今日のトピック:遺産相続 】
今日で15日目ですが、引き続き、遺産相続についてお話していきます。
昨日は、「父が遺言を残していたケース」のうち、
①遺言のおかげで僕自身がたくさん遺産を貰うことができ、他の相続人は遺留分すら足りない
という場面について書きました。
今日は、逆に、
②遺言のせいで僕以外の相続人がたくさん遺産を貰ってしまい、僕は遺留分すら足りない。
という場合についてお話しようと思います。
さて、この場合、法的には、僕は遺留分を請求することができます。
まあ、そもそも「遺留分に足りているかどうか」よくわからないケースもあります。
例えば、「すべての財産を妻に相続させる」という遺言を父が残していた場合、遺言のせいで、僕が貰える遺産はゼロになってしまっているので、遺留分が不足しているのは明らかです。
そもそも、「遺留分」というのは、遺留分の限度で遺言の効力を覆す(遺言よりも遺留分が優先される)という仕組みなのですが、↑に書いたような「全部の財産」を対象としていれば、遺留分が不足しているのは明らかなんですけど、そうでなければ、遺留分が不足しているかどうか判断が難しいケースもあります。
判断が難しいケースの典型例は、「少しだけ遺産を貰っている」というものです。遺言のせいで、何も遺産を貰えなくなったわけではなく、少しは遺産が貰えている場合は、その「少し」が遺留分に足りているかどうか、判断が難しくなってしまうことがあります。
「少し」が遺留分に足りていれば、それ以上に、たくさん遺産を貰った人に対して、「もっとよこせ」と請求することはできません。
あくまで、「遺留分の限度で」、遺言に優先するからです。
じゃあ、遺留分が足りているかどうかは、どうやって判断するかというと、まずは、遺産の総額を算出しなければいけません。
今回の設定では、父の遺産は、
・自宅土地建物
・農地10筆
・預金500万円でした。
そして、相続人は、妻と子供3人なので、子どもである僕の遺留分は、12分の1(法定相続分6分の1の半分)です。
例えば父が、「50万円は古田博大(=僕)に相続させる」という遺言を残していた場合、僕の遺留分が足りているかどうかは、遺産の総額が決まらなければ、判断しようがないんです。
今回の設定では、自宅土地建物及び農地10筆のどちらも価値が「0円」でしたので、遺産の総額は、預金と同額の500万円でした。
そうすると、僕が貰った50万円は、遺産の総額の10分の1なので、遺留分12分の1よりも多いです。
だから、僕の遺留分は足りています。だから、僕は遺留分を請求することはできません。
しかし、例えば、自宅土地建物に1000万円の価値がある場合は、遺産の総額は1500万円まで跳ね上がります。
そうすると、僕の遺留分12分の1=125万円なので、50万円では、遺留分に75万円不足してしまいます。
遺留分に足りない75万円を確保する手段が、「遺留分侵害額請求」で、この請求をすると、たくさん貰った相続人に対して、75万円の支払いを求めることができます。
(※こう考えると、「遺留分がほしい」というのは「遺留分侵害額請求する」を意味することになります)
さて、じゃあ、僕が、この「遺留分侵害額請求」をやるかどうか、というところから話を始めます。
これは、昨日までの話とかぶるんですが、やっぱり、遺言を残した理由が大切なんです。僕にとっては。
昨日までは、僕が遺言でたくさんの遺産を貰った場合に、父が遺言を残した理由がそれなりに説得力があるのであれば、その理由を説明して、「遺留分はやめておく?」と他の相続人に提案する、ということを書いてきました。
逆に、僕の遺留分が足りていない場合でも、僕は、理由次第で、遺留分を請求するかどうか、判断を変えると思います。
もちろん、父が、僕以外の相続人にたくさんの遺産を相続させるという遺言を残したという事実から、その相続人に感謝していたんだろうなとか、世話になったと感じていたんだろうな、ということは推測できます。
でも、それは、推測の域を出ません。
遺言を残すというのは、そういうことですからね(笑)。生前に世話になったり、感謝したりしている人に対して、より多くの遺産を渡そうとして、遺言を残すんです。
だから、「遺言を残した」という事実だけでは、僕が遺留分を諦める理由としては不十分です。
何かもっと、「そこまで考えて、遺言を残したのか」と思えるような理由がなきゃだめです。
僕だって、父との交流がないわけではないし、息子として、それなりに父の幸せに役立ってきています。
息子が生まれたというだけで、父は相当に嬉しかったでしょうし、僕の存在自体が父にとってかけがえのないものだったはずです。
にもかかわらず、僕には遺留分にすら足りない遺産しか渡そうとしなかったわけですが、それをきちんと説明してもらわないと、僕は納得できません。
「説明」と言っても、父は既に死んでいるので、父に説明してもらうことはできないんですが、残された遺言書の内容や、父の日記、生前の行動などから、ある程度合理的に説明してもらわないと、「遺留分を諦める」という結論を出すことはかなり難しいです。
こう書いてくると、遺言を残す際は、「どうしてこういう遺言を残したのか」という理由を、きちんと明記する必要がある気がします。
遺言を残したとしても、法的には遺言より遺留分が優先されるので、遺留分の限度で、遺言は覆されてしまいます。
そうすると、遺言のとおりに財産が分配されることを、より高確率で実現させるためには、遺言によって遺留分すら足りなくなる相続人が、遺留分を諦めてくれるだけの理由を、遺言書に明記するべきなのかもしれません。
自分が死んだ後に、遺言のとおりに遺産が分配されるかどうかなんて、どうでもいい気もしますが、ただ、遺言を残す人は、「なるべく遺言のとおりに遺産が分配されてほしい」と思うものでしょう。
そうであれば、遺言の内容を決めた理由を、きちんと説明して、遺留分を諦めてもらえるように手立てをしておくのが賢明だと思います。
今日はこれくらいにします。
それではまた明日!・・・↓
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