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#448 いつか必ず離婚できます

【 自己紹介 】

※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。

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【 今日のトピック:いつか必ず離婚できる 】

今日は離婚の話をしてみようと思います。

最近,離婚の相談を2件受けました。

1つは,離婚したいという妻からで,もう1つは,離婚したくないという夫からの相談でした。

離婚したいという妻の相談のほうは,夫が不倫したりDVしたりしているわけではなく,別居は一応しているのですが,まだ別居開始から2か月ほどしか経っていないので,離婚が裁判で認められる条件である「婚姻関係の破綻(夫婦関係が崩壊して修復不可能な状態)」にはまだ至っていませんでした。

だから,今すぐ離婚訴訟を提起しても,裁判所は離婚を認めてはくれません。

今すぐ離婚するためには,離婚届に夫に署名押印してもらうしかないのですが,それは夫が拒否しているようです。

そうすると,離婚調停をやって離婚訴訟を提起して,その訴訟で離婚の判決を出してもらわなければ離婚できないのですが,夫が不倫したり暴力を振るったりしているといった,「離婚やむなし」と評価できるだけの明白な事情がない場合,「婚姻関係の破綻」を裁判所に認めてもらわなければ,離婚はできません。

その「婚姻関係の破綻」は,現状では,裁判所は認めてくれないでしょう。

これに対し,離婚したくないという夫の相談のほうも,↑の妻と状況はかなり似ていました。

↑の妻も,夫との離婚を決意して,子どもを連れて実家に移り,別居を始めていましたが,夫から相談を受けた方の妻も,同じように,子どもを連れて別居を始めていました。

一応言っときますけど,同じ夫婦の双方から相談を受けたわけではありません。

全く何の関係ない,別々の夫婦なのですが,どちらの妻も同じように,子どもを連れて別居を始めていました。

別居を始めた時期も似通っていましたが,それも単なる偶然です。

そういった,同じような状況にある2組の夫婦の,妻側からと夫側から,それぞれ相談を受けたのです。

で,夫側からの相談の話に戻りますが,夫としても,理由もよくわからないまま別居を始めてしまうような妻と,今後も夫婦でい続けたいと積極的に思っているわけではなく,あくまで,子どものことを考えると,生まれてずっと暮らしてきた家を離れて,妻の実家での生活を新たに始めるよりは,今までどおりの生活を続けたほうがいいと考えているのです。

だから,「離婚したくない」と思っていらっしゃいました。

ただ,この「離婚したくない」という思いを,法的に完全に実現する手段はありません。

タイトルにも書いたとおり,離婚は,諦めなければ,いつか必ず法的に実現できるからです。

これは,逆から言えば,つまり,離婚「したくない」と思っている配偶者の側から見ると,「離婚したくない」という思いは,いつか必ず負けてしまうということを意味します。

言うまでもありませんが,夫婦それぞれが署名した離婚届を市役所に提出すれば,離婚することはできます。

ただ,夫婦のどちらかが離婚届に署名押印しなければ,離婚届を提出しても,市役所は離婚届を受け付けてくれません。

夫婦双方が署名押印した離婚届しか,市役所は受け付けてくれないのです。

まあ,市役所は,提出された離婚届を見て,その署名押印が本当に夫婦のそれぞれの署名押印なのかどうかは確かめないので,一応,署名押印がなされていれば,市役所は離婚届を受け付けてくれて,戸籍上,籍は別々になります。

とはいえ,本人の承諾もないのに,勝手に離婚届に署名押印すると,それは文書偽造で犯罪なので,ゼッタイにやっちゃダメです。

離婚は,最後には必ず実現できるわけですから,わざわざ犯罪者になる必要はありません。正々堂々と,最後まで諦めずに離婚を求めればいいのです。

文書偽造なんてやっちゃうと,自分に不利な事情を自分で作り出してしまいます。相手につけこまれるスキを与えるだけです。

そんなことせずに,最後まで正当に離婚を求め続ければいいです。そうすれば,いつか必ず離婚できます。

もちろん,相手が死んでしまっては離婚できませんが,まあ,死んでしまえば,わざわざ離婚する必要もないですよね。

離婚せずにいれば,相続もできますからね。

だから,純粋に経済合理的に考えると,離婚を求めている場合,相手が死んでくれるのが,最も手っ取り早いです。

ちょっと残酷なことを書いてしまいましたが,相手が生きているせいで「離婚」という方法に頼らざるを得ない,という人は,やっぱりいらっしゃいます。

暴力でひどく傷つけられて離婚を決意する方は,相手が死んでくれたらどれだけラクになれるか,と考えておられるでしょう。

離婚せずとも暴力から解放されるなんて,そんな素晴らしいことはありません。

ひどい考えかもしれませんが,そんなキレイ事言ってられないケースもあります。

もちろん,相手を殺害してはゼッタイにダメです。殺害しなくても,「離婚」であれば,いつか必ず実現できますから。

殺害するしかない,と本気で決意した人を,僕が止める方法は何ひとつありませんが,ただ,「離婚」であれば,いつか必ず実現できますし,住民票上の住所を相手に教えられなくする,という方法もあります。

だから,相手を殺害せずとも逃げる方法はあります。

もちろん,相手が日本中を血まなこになって探してきて,生活場所を突き止めてくる可能性は最後の最後まで残りますが,そんなやつのために,自分が犯罪者になってしまうことはないと僕は思います。

生活場所を突き止められて,再び暴力を受けたら,警察に通報して逮捕してもらいましょう。

逮捕・勾留されているうちに,再び生活場所を移しましょう。

さて,少し脱線が過ぎましたが,離婚の話に戻ります。

いつか必ず離婚できる,という話です。

さて,先ほど説明したように,離婚届が提出できればすぐに離婚はできます。しかし,相手が離婚届に署名押印してくれないことがあります。

その場合は,離婚調停を提起します。「調停」というのは,裁判所での話し合いです。

この「調停」で,離婚を拒んでいた相手が折れて,離婚に同意してくれれば,調停の最後に作られる「調停調書」を市役所に持っていけば,離婚できます。

自分の欄だけ署名押印した離婚届と調停調書を持っていけば,市役所は離婚させてくれるのです。「調停調書」は,こういう役割を果たします。

調停調書を作った後に,相手が前言撤回して「離婚したくない!」と言い出してもムダです。

相手の前言撤回なんか完全に無視して調停調書を市役所に提出して離婚しちゃえばいいです。

ただ,離婚調停でも,相手が折れないことがあります。離婚するかどうかの決着がつかないまま,離婚調停が「不成立(=交渉決裂)」となることも,もちろんあります。

そうなると,次は,離婚「訴訟」を提起することになるのですが,この離婚訴訟では,法律に書かれた「離婚原因」があるかどうかを,裁判官が判断します。

「離婚原因」とは,「こういう事情があったら離婚させていいよ」という事情を意味します。

「不倫(他の異性とのセックス)」が代表例です。

相手が不倫していたら,離婚できるわけです。

ただ,自分が不倫したことを理由に離婚することはできません。

もちろん,相手が離婚に同意してくれたら離婚できますが(まあ,多くの場合は,離婚に同意してくれるでしょう),相手が「離婚したくない!」と言ってしまうと,自分の不倫を理由に離婚することはできません。

これは「有責配偶者からの離婚請求」と呼ばれるやつです。

自分で不倫して夫婦関係を壊しておきながら,その不倫を理由に離婚を請求することはできない,と決まっています。

でも,この「有責配偶者(不倫した配偶者)」であっても,いつかは必ず離婚できます。

仮に,有責配偶者の不倫によって夫婦関係が崩壊したとしても,その「崩壊」状態が,例えば10年ほど継続したのであれば(不倫をきっかけにした別居が10年続いているとか),婚姻期間によっては離婚が認められる可能性が出てきます。

婚姻期間が短ければ短いほど,別居期間は短くて済みますが,とはいえ,「最低5年」なんて言われたりもします。

それくらい,有責配偶者からの離婚請求は認められにくいです。

とはいえ,いつかは必ず,有責配偶者であっても,離婚が認められます。

そして,「有責配偶者」ではない配偶者からの離婚請求であれば,「婚姻関係の破綻」が認められれば,裁判官が離婚させてくれます。

有責配偶者からの離婚請求の場合は,「婚姻関係の破綻」が認められても,原則として,裁判官は離婚させてくれないのですが,有責配偶者でなければ,「婚姻関係の破綻」があれば,裁判官は離婚の判決を書きます。

「婚姻関係の破綻」は,別居期間が主な判断材料ですが,別居期間だけが重要なわけではありません。

「別居」というのは,夫婦で生活場所が異なっていることを意味します。夫婦それぞれが,別々の生活場所を持っているということは,当然,夫婦の関係が「崩壊」していることを意味しますから,「婚姻関係の破綻」が認められやすくなります。

生活場所が別々ということは,生活の基盤(収入など)も,それぞれ独自に持っていて,お互いがお互いを頼らずに生活していることも意味します。

この「お互いがお互いを頼らずに生活している」というのも,「婚姻関係の破綻」が認められやすくなる事情です。

「お互いがお互いを頼らない」と関連しますが,家計を別々にしていることも大切です。

離婚する,ということは,当然,家計は別々になります。

離婚前は,「婚姻費用」といって,収入の多いほうが少ない方に生活費を支払う義務があります。だから,婚姻費用はどちらかが支払う必要はありますが,それ以外の家計は完全に別々にすることが,「婚姻関係の破綻」のためには必要です。

離婚後も,未成年の子どもがいる場合は,「養育費」の支払いは受けられますが,とはいえ,金銭的なつながりは「養育費」のみで,家計は別々になるはずです。

こういう感じで,生活場所を別々にして,家計も別々にする,という生活を続けていれば,その蓄積が「婚姻関係の破綻」に繋がります。

この「別々」が,2年も続けば,多くの場合,「婚姻関係の破綻」は認められるでしょう。

そうなれば,法的に離婚はできるのです。「婚姻関係の破綻」が認められれば,裁判官は「離婚する」という判決を書かなきゃいけないので。

【 まとめ 】

今日は,離婚の話でしたが,離婚したいと思っていらっしゃる方にとっては,明るい話題だったと思います。


生活場所を分けて,家計を分けて暮らしていれば,その日々の生活が「婚姻関係の破綻」につながり,「離婚」というゴールをもたらしてくれます。

反対に,離婚したくない!と思っている方にとっては,かなり暗い話題となってしまいました。

離婚したくない!と思っている場合,「婚姻関係の破綻」を作り出さないよう気をつけなきゃいけないわけですが,しかし,相手配偶者は,自分とは違う人間なので,どこかに縛り付けるわけにはいきません。

縄や鎖で本当に縛り付けてしまっては,それこそDVとして,離婚原因となってしまいます。

離婚したいと思う相手配偶者が,生活場所を分け,なおかつ,家計を分けてしまうことを止める方法はありません。

その結果,いつか必ず「婚姻関係の破綻」が認められてしまい,離婚の判決は出てしまいます。

例えば,有責配偶者からの離婚請求であれば,離婚訴訟で,1回は勝てる(離婚を認めないという判決が出る)でしょうが,2回目以降も勝てる可能性は低いでしょう。

法的にはこういう結論になってしまいます。

それではまた明日!・・・↓

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