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交通事故の被害にあった場合に弁護士の僕ならどうするか-25(労働能力喪失期間)

【 自己紹介 】

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このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:交通事故 】

昨日に引き続き交通事故について書いていきます。(まだまだまだ終わりませんよ!)

さて、昨日は後遺症逸失利益を考える上で大切な「労働能力喪失率」についてお話しました。

「労働能力喪失率」とは、別に「労働」に限らないんですが、事故による後遺症によって、どれくらい「お金を稼ぐ能力」が減少したのか、というパーセントを意味します。

お金を稼ぐ能力が5%減少したのなら、労働能力喪失率は5%です。

「後遺症」とは、「一生改善しない病状」ですから、後遺症によってお金を稼ぐ能力が5%減少したのなら、一生、5%減少したまま、ということです。

今回、僕は、事故の損害賠償を請求するため、訴訟を提起したわけですが、その訴状には、この「一生5%減少したまま」というのを、計算して表現しなければいけません。

ただ、「一生」といっても、死ぬまでずっと働き続けるわけではありませんよね。

僕の仕事は弁護士ですが、弁護士は特に、会社に所属しなくても、個人事業主として、いつまでも働くことが可能です。

とはいえ、年齢を重ねていくごとに、だんだんと働けなくなってきます。

50代頃までは(身体にガタがはくるものの)、それほど仕事を続けることに問題はないでしょうが、還暦を迎え、70代に突入し、80歳を超え・・・と年齢を重ねていくどこかで、必ず引退するはずです。

死ぬ直前まで働いている人もいるでしょうが、それはレアケースで、平均的には、亡くなる前のどこかで引退して、収入が年金頼みになることが普通です。

そうすると、「一生5%減少したまま」とはいっても、ここでいう「一生」は、働いて収入が得られる年齢までの期間を意味します。

「死ぬまで」じゃないんです。だって、死ぬまでずっと働き続けて収入が得られるのは「普通」・「平均的」じゃないからです。

本当は、事故の被害者である僕本人が、何歳まで働いて、それまでの収入の合計を割り出して、その5%を算出しなきゃいけないのでしょうけど、そんな証明は不可能です。

将来のことすぎて、誰もわかりません。僕ら人間は、たった1秒先の未来のことさえ、全くの五里霧中ですから。

だから、「普通に考えて」「平均的にいえば」、どこかで引退して収入が年金頼みになるわけだから、その「平均的な」引退時期を基準として設定してあげる必要があります。

それが、「67歳」と考えられています。

つまり、普通は(平均をとれば)、67歳まで働いて引退するよね、と考えられているんです。

だから「一生収入が5%減少する」の「一生」は、「67歳まで」を意味します。

僕の場合であれば、31歳で症状固定となったので、それから67歳までの36年間にわたって収入が5%減少する、ということになります。

(あくまでこれは、訴状にこう書くということです。裁判官が実際にこの主張を認めてくれるかどうかは別問題です。)

ここまでくれば、後遺症逸失利益の算出はできそうです。

おさらいですが、事故当時、僕の年収は480万円でした(という設定です)。

この年収が、67歳まで36年間続くと仮定し、事故によって毎年5%年収が減少するわけですから、

480万円×5%×36年間=864万円

これが、僕の「後遺症逸失利益」ということになりそうです。

でも実は、こうじゃないんです。

この計算式だと、僕は、36年後の収入を既にもらっていることになります。

今年の収入減も、36年後の収入減も、同じ「480万円×5%=24万円」となってしまっています。

36年後に減るであろう24万円と、今年減少する24万円は、法的には価値が違います。

「中間利息控除」という難しい言い方をすることがありますが、発想としては、↑に書いたとおり「今年の24万円と36年後の24万円は違う」ということです。

わかりやすくすると、例えば↓

・今すぐ現金24万円と交換できる引換券

・36年後に24万円と交換できる引換券

の2つがあるとして、どちらも同じ値段で買いますか?、ということです。

同じ値段では買いませんよね。当然、36年後に引き換えるほうは、安い値段しか出しません。

これと、全く同じ発想で、算出するんです。

僕は、これから36年間、毎年24万円ずつ収入が減少します。これを今、お金で補填してもらうのが、「後遺症逸失利益」です。

本来なら、毎年毎年24万円ずつお金をもらうほうが正確なんですが、そうはいかないので、36年後の24万円も、現在の価値に換算します。

1年後も36年後も同じ24万円や!というふうに思う人が多いのかもしれません。

しかし、民法では、「法定利率」といって、「毎年何もしなくても、お金ってこの利率で増えていくよね」という利率が定められています。

この利率は、ついこの前まで「年利5%」でした。つまり、お金は、何もしなくても年利5%で増えていくよね、という理屈が法的にまかりとっていたのです。

しかし、さすがに「年利5%で増えていく」という理屈は現状にあっていないということで、現在は年利3%となっています。

年利3%というのも現状にあっていませんが(何もしなくてもお金が年利3%で増えていく定期預金なんて今の御時世には存在しません)、まあ、これが法律です。

選挙で選ばれた国会議員たちが賛成多数で決めた法律なので、これに従うしかありません。

ただ、年利3%の法定利率は、3年ごとに変動します。そのまま3%ということもあれば、2%になったり、4%になったりするんです。

年利3%が、2.5%とか、小数点以下の数字になることはありません。必ず整数です。

だから、今後、法定利率が2%→1%と下がっていく可能性はありますが、とはいえ、今は年利3%です。

かなり踏み込んで法定利率の話をしてしまいましたが、この法定利率は、「今24万円もらう」と「36年後に24万円もらう」が違うという話につながってきます。

今日はここまでにして、明日続きを書きます。

それではまた明日!・・・↓

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