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#390 憲法の面白さを思い出した

どうも,こんにちは。

古田博大(ふるたひろまさ)です。

このブログを初めてご覧になる方は,はじめまして。

いつもご覧くださっている皆様,いつもアクセスありがとうございます。

僕は,1990年生まれで現在30歳。2017年1月から弁護士として働き始め,ちょうど2年半が経過した2019年7月10日にうつ病を発症し,それから今日までずっと休職しています。

うつ病発症からしばらくは,眠ったり食べたりすることもままならず,生きることそのものが苦しい時期が続きましたが,長い時間をかけて少しずつ回復することができました。今は,週2日の休みをはさんで毎日出勤練習(慣らし勤務)を繰り返しながら,復職への準備を進めています。

今年(2020年)の12月1日から,少しずつ業務にも携わるようになりました。具体的には,理論的な調査や簡単な法律相談を担当するようになりました。今のところ,仕事を理由に大きく調子を崩してはいません。

うつ病をきっかけに「自分も何か行動したい!」と思い,2019年12月から,この毎日ブログを始めました。とはいえ,このブログでは,うつ病に関することだけでなく,日々考えたことを自由気ままに書いています。

書きたいことがたくさんあって,文章が長くなってしまうことも多いですが,ブログの負担が大きくなりすぎてうつ病に悪い影響を与えないよう,書き始めてから1時間程度でアップロードすることにしています(#ほぼ毎日時間オーバーしていることはナイショです

「書きたいがたくさんある」と「1時間でアップする」は両立が難しく,そのため,文章がつながっていなかったり,文章自体がわかりにくかったりと,弊害も多々あるんですが,どうしても「毎日ブログ」を続けたいので,毎日綱渡り状態ですが,アクセスしてくださる皆様のおかげで,今日までなんとか続けることができています(;^_^A

(ちなみに,「、」ではなく「,」を使っているのは,判決など裁判所の公式文書は全て「,」が使われていて,僕も仕事上それに合わせているからです。詳しくはこちら

僕のうつ病の経過については↓でまとめています。

それでは,今日も書いてきます!

さて,僕は弁護士ですから,司法試験(2015年)を受験し,合格しました。この「司法試験」には「憲法」という受験科目があります。

「司法試験」という試験の名前は聞いたことある方が多いでしょうけれど,その科目については,あまり知られていないかもしれません。

科目は,合計8つで,

憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法,刑事訴訟法,選択科目

です。

各科目,2時間ずつで,選択科目だけ3時間だった気がします。

選択科目は,倒産法,労働法,経済法(独占禁止法),知的財産法,租税法,国際私法,国際公法,の中から1つを選びます。

僕は,経済法(独占禁止法)を選択しました。だから,それ以外の科目はよく知りません。

これらの点数の合計点が,合格点を上回ることが,司法試験に合格する条件です。

「合格点」といっても,各科目で100点満点中50点~60点くらいとれれば,充分な合格圏内です。

結局,司法試験というのは,8科目で50点を獲得するゲームだということになります。

で,「憲法」という受験科目の話です。

どの科目もそうですが,司法試験では,判例を覚えなきゃいけません。一言一句覚えれらればそれに越したことはないんですが,そこまで覚える必要はありません。

どういった筋道で結論にたどり着いたのか,その「筋道」を覚えたうえで,答案に吐き出すのが,司法試験です。

で,「憲法」なんか,条文がたったの103条しかないので,条文の情報量はゼロに等しいです。

(ちなみに,憲法や民法などの条文は,配布された六法全書で試験中に見ることができるので,受験生は誰も覚えていません)

その「条文の情報ゼロ」のなか,出題された問題に含まれる「憲法違反」について考え,言語化し,答案に吐き出しているんです。

じゃあ,そもそも「憲法違反」ってどういうことさ,という疑問が浮かびます。

「憲法違反」とは,その名の通り,憲法に違反していることなのですが,実はそう単純じゃありません。

憲法は,条文が少ないにせよ,いろんなことが書いてあります。その中で,「基本的人権」について書かれている条文があります。

例えば,21条には,「集会,結社及び言論,出版その他一切の表現の自由は,これを保障する。」と書かれていて,表現の自由(自由に表現できる権利)が保障されていることが見て取れます。

このような,憲法上保障された権利が侵害された場合に,「憲法違反」となるのです。

とすると,「憲法上保障されているかどうか」を,まず判断しなきゃいけません。

憲法上保障されていない権利がどれだけ侵害されていても,憲法違反となりようがないですから。

次に,憲法上保障されているとしても,その権利が侵害されているとして,必ずしも「憲法違反」とはなりません。

例えば,表現の自由があるとはいえ,誰かを侮辱する発言をすれば,侮辱罪が成立しますし,名誉を毀損する発言には名誉毀損罪が成立します。

まあ,誰かを侮辱したり誰かの名誉を毀損したりする発言は憲法上保障されていないという考え方もあり得ますが,仮に憲法上保障されているとしても,侮辱罪や名誉毀損罪に当たるとして,刑罰を与えて,自由を制約しても憲法違反ではないと考えられています。

このように,憲法上保障された権利かどうかを乗り越えた後にも,その権利侵害(制約)が許されるかどうかを判断しなきゃいけなくて,許される場合であれば,憲法違反ではなく,逆に,許されないのであれば,憲法違反ということになります。

こういった論理展開で,憲法違反を認めたのが,森林法違憲判決です。

この最高裁判決は,昭和62年とかなり古めですが,大法廷で,森林法のうち,共有物分割請求を制限している条文が憲法違反と認めました。

そもそも,この最高裁判決以前は,森林法の条文には,2分の1以下の持分しか持っていない共有者からの共有物分割請求ができないと定められていました。

「共有物分割請求」とは,共有状態を解消し,単独所有に移行する手続きのことです。

例えば,1つの土地を2人で2分の1ずつの割合で共有していた場合,共有者は,その土地を,共有状態から単独所有状態に移行すること=共有物分割請求を,裁判所に対して求めることができます。

もちろん,2人の話し合いで共有状態を解消できればそれでいいんですが,話し合いでの解決ができない場合,裁判を起こせば,裁判所が共有状態を解消してくれます。

でも,森林の場合で,なおかつ,持分が2分の1以下の場合,それができなかったんですね。

共有状態を解消するために裁判を提起できるのは,2分の1を超えて持分を持っている人だけでした。何人かの持分を寄せ集めて2分の1を超えれば,それでも裁判は起こせたのですが,そうでもない限り,無理だったのです。

そうすると,2分の1以下の持分しかない場合,共有状態を解消できず,いつまでも共有状態が継続してしまいます。

そうなってしまったのが,この最高裁判決の事案です。

父から2分の1ずつの割合で森林を生前贈与された兄弟が,父亡き後にモメにモメて,弟が兄に対し,共有物分割の訴えを提起したんです。

この訴えは最高裁まで争われ,最終的に,森林法が憲法違反という理由で,弟の訴えが認められました。

さて,森林法では,2分の1超の持分がないと共有物分割請求できないと定められていたのですが,これは,共有物分割請求という権利を制約するものです。

この「共有物分割請求」が,憲法上保障された権利でなければ,憲法違反となりようがないんですが,最高裁は,「共有物分割請求」が,憲法上保障された権利と認めました。

その理由は,結局,共有状態を解消して単独所有へ移行することが,めちゃくちゃに大事だから,ということです。

「単独所有」が原則であり,共有状態はあくまで例外だから,そりゃ,原則状態に戻す権利がなきゃおかしい。そういった理由で,共有物分割請求が,「憲法上保障された権利」だと認められました。

ただ,憲法上保障された権利だとしても,その制約が許されるかどうかがを次に判定しなくてはなりません。

この判定の際は,制約の目的と,その目的を達成するための方法が適切かどうか,が考慮されます。

森林法の場合,2分の1以下の持分しか持っていない場合に,共有物分割請求を禁止した目的は,森林の細分化を防止することでした。

森林は,細分化を避け,広い範囲で所有・管理する必要があるのは,確かにその通りでしょう。

木の育ち方も,日当たりによって変わるでしょうし,森全体の様子を見ながら,伐採の箇所を決めなきゃいけないでしょうからね。

森が細分化して,隣地同士でいがみあっていたら,確かにマズそうです。

森林は,住宅資材として,国民生活を支えていますから,住宅資材が,森林の隣地所有者同士でケンカしたせいで提供できなくなったら,その影響は大きいでしょう。

特に,時代は昭和60年代です。まだまだ住宅需要がうなぎ登りだった頃ですからね。森林が細分化して,住宅資材の供給が減ったら大変だったでしょう。

でも,です。最高裁は,ここから踏み込みます。

確かに,森林の細分化防止という目的は正当だろうけれど,その目的を達成する手段として,持分2分の1以下の共有者からの共有物分割請求を禁止する必要はあるのだろうか?

この疑問に対し,最高裁は,「ノー」を突きつけました。つまり,共有物分割請求を禁止するのは,やりすぎだということです。

持分2分の1以下の共有者からの共有物分割請求を禁止しているとはいえ,持分を寄せ集めれば,共有物分割請求できるわけだから,森林の細分化を,完全に防止できるわけではないし,今回の兄弟げんかのように,2分の1ずつの割合で共有している場合に,お互いがケンカしてしまうと,共有状態を解消できないまま,ケンカ状態が続いてしまい,その場合は,共有状態を解消できないせいで,森林がめちゃくちゃになってしまう可能性もある。

だから,共有物分割請求の禁止は「やりすぎ」で,この「やりすぎ」によって,共有物分割請求という,憲法上保障された権利を侵害しているから,森林法は憲法違反であると,最高裁は結論づけました。

ちょっとまとめに入りますが,「憲法違反」なんて,弁護士になって役に立つことはほとんどありません。

だって,日々直面する事件は,離婚や相続,交通事故に不動産,刑事事件など,憲法とは関係ない分野ばかりです。

でも,「憲法違反」を主張する場面に,時折出くわします。

それは,最高裁と戦うときです。

日本では「三審制」がとられていて,同じ事件を,3回判断してもらうことができます。

1回目は,地方裁判所(又は家庭裁判所),2回目は高等裁判所,そして3回目が最高裁判所です。

しかし,不服を申し立てれば,必ず判断してもらえるわけではなくって,不服を申し立てる理由が決まっています。

特に,高等裁判所の判断に不服がある場合に,最高裁判所へ再判断を求める場合(上告や特別抗告)は,不服の理由が憲法違反に限られています。

だから,最高裁と戦う場合は,憲法違反を主張しなきゃいけないんです。憲法違反じゃないと,最高裁が受け付けてくれないからです。

最高裁への不服申し立て(上告や特別抗告)は,それなりにあります。

というか,依頼者が高等裁判所の判決に納得できない場合には,弁護士としては,最高裁への不服申し立てを躊躇してはいけません。

もちろん,憲法違反のみが上告理由となりますから,高等裁判所の判断が覆る見込みは,基本的には小さいですし,紛争の解決も,最高裁へ不服を申し立てる期間の分だけ遅れてしまいます。このことは充分に説明します。別途必要となる費用についても説明します。

でも,そういった充分な説明及び話し合いを経て,それでもなお,最高裁への不服申し立てが必要ならば,弁護士は堂々と最高裁と戦わなきゃいけません。

それが,弁護士なのです。

そうすると,最高裁への不服申し立ては,いつやってくるかわからないわけで,その場合は,憲法違反の主張が必要になりますから,司法試験の受験勉強で憲法の素養を身につけておくことは,やっぱり重要なんです。

特に,先ほどご紹介した,財産権侵害を理由に憲法違反を認めた森林法判決なんか,めちゃくちゃ大事です。

「財産権」というのは,民法など,普段扱う事件のほとんどに関連しています。

いざ最高裁へ不服申し立てる場合に,その事案で問題となっている「財産権」が,憲法上も保障されているか,そして,その侵害が,目的と手段の合理性・必要性によって正当化されるか。

このような判断基準は,弁護士であれば,会得しておく必要があります。

くれぐれも,僕は,自ら進んで憲法訴訟をやりたいとは思っていません(笑)。そこまで気合に満ち満ちてはいません。

でも,憲法違反を,いつでも主張できる準備を整えておくことは必要です。

まあ,本音を言えば,憲法違反を認めた最高裁判決は,最高裁も,めちゃくちゃに気合を入れて書いていて,読んでいてとてもおもしろく,僕はおもしろい文章を読みたいだけだけなんです(笑)。

事案自体もおもしろいので(森林法判決は,結局のところ,最高裁を巻き込んだ兄弟げんかです),読んでいて飽きません(笑)。

森林法判決という,とても重要な憲法違反の最高裁判例について,少し学ぶことができて,よかったです。

【今日のうつ病】(うつ病経過まとめ:こちら

まだまだ僕のうつ病は治っていないので,毎日うつ病の経過を記録しています。

今日までに経過した期間↓

・うつ病発症(2019年7月10日~):535日(1年5か月と16日)

・実家療養後の1人暮らし(2019年9月27日~):456日(1年2か月と29日)

・午前中の散歩(2019年11月7日~):415日(1年と1か月と19日)

・毎日ブログ(2019年12月3日~):389日(1年と23日)

・出勤練習(2020年3月30日~):271日(8か月と26日)

今日で,出勤練習を始めて8か月と26日です。新型コロナウイルスの影響で,4月13日~5月11日までの約1か月間,一時中断されていましたが,それを差し引いても,約8か月間出勤練習を積み重ねてきました。

そして,今年(2020年)の12月1日から少しずつ業務に携わるようになりました。

具体的には,理論上の問題を調査したり,簡単な法律相談を担当したりするようになりました。

裁判所への出頭はまだですが,これから少しずつ,やっていけたらいいなと思います。

今日は出勤しました。午前9時~午後6時まで滞在予定です。

今日の「SleepCycle」を見ると(睡眠記録アプリ「SleepCycle」についてはこちら),午後11時53分~朝8時2分までの睡眠が記録されています。昨晩は少し寝つきが悪かったので,耳栓を装着し,首にマッサージ機を当てました。そしたらすぐに寝つけました。今朝も,昨日と同様にアラームで目が覚めました。熟睡感もありました。睡眠時間は8時間と充分で,SleepCycle独自の睡眠品質も87%/100%と高得点です。

(なお,僕のうつ病は,主な症状が不眠(①寝つきが悪い②中途覚醒③朝早く目が覚めてしまい二度寝もできない)で,この不眠症状の有無が,その日の調子の良し悪しや,回復の進み具合を左右します。そのため,毎日の睡眠時間や睡眠の質について,睡眠記録アプリ「SleepCycle」に記録されているデータをもとに逐一書き出すことにしています。)

最近また少しずつ元気が出てきたので,運動を始めてみました。バーピージャンプを夜に10回だけやっていますが,これだけでも,体重と体脂肪率が減りました。

できる範囲で運動しながら,少しずつ体力をつけていこうと思います。

今日もブログ書けてよかった!

それではまた明日!・・・↓

昨日のブログ↓

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※うつ病への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。


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