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#413 相続の話:引出金はとても頻繁にモメる(今日は遺産分割の話がメインです)

【 自己紹介 】

※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。

弁護士古田博大の個人ブログ(毎日ブログ)へようこそ。

このブログでは,2017年1月に弁護士に登録し,現在弁護士5年目を迎えている私古田が,弁護士業界で生き残っていくために必要不可欠な経験と実績を,より密度高く蓄積するため,日々の業務で学んだこと・勉強したこと・考えたこと・感じたこと,を毎日文章化して振り返って(復習して)います。

僕の経験と実績を最も届けなければいけないお相手は,このブログを読んで,僕のお客さんとなってくださるかもしれない方々,つまり,法律のプロではない皆さんだと思っています。そのため,日々の業務・経験がこのブログのトピックになっているとはいえ,法律のプロではない方々にわかりやすく伝わるよう,心がけています。

後戻りの必要なく,スラスラと読み進められるようにも心がけていますので,肩の力を抜いて,気軽な気持ちでご覧くださるとと大変嬉しいです。

【 今日のトピック:相続(引出金) 】

さて,昨日までの3日間で詐欺について説明してきましたが,今日は,相続と引出金についてお話したいと思います。

さて,「引出金」は,その名の通り,預金口座から引き出されたお金のことです。

預金口座から引き出したお金が「引出金」です。

この「引出金」を返せという請求が,相続で頻繁に問題となります。

本当に,めちゃくちゃ頻繁に問題となります。

さて,ここで「被相続人」という用語に慣れていただこうと思います。

「被相続人」は「ひそうぞくにん」と読みます。

「被相続人」は,亡くなったご本人を指します。

相続とは,亡くなった方が残した財産=遺産を,誰にどのように分配するのか,という話なんですが,遺産を残して亡くなった方ご本人を「被相続人」と呼びます。

法律用語ですが,話がわかりやすくなるので,「被相続人」というワードを使っていこうと思います。

多くの場合,相続の問題は,親の死によって引き起こされます。両親が同時に亡くなることは稀で,普通は,両親のどちらか一方が最初に亡くなるわけですが,その場合は,存命中のもう一方の親(父親が亡くなった場合の母親,母親が亡くなった場合の父親)が,遺産すべてを引き継ぐことが多く,遺産を誰に分配するのかでモメることは少ないです。

でも,両親がどちらも亡くなると,相続人である子どもたちの間(兄弟間)で争いが熾烈になることが多い。

で,争いの対象となる1つが,引出金です。

というのも,被相続人が亡くなると,被相続人の預金口座の履歴を相続人は見ることができるようになります。

銀行が履歴を見せてくれるんですね。まあ,亡くなっている人にプライバシーはありませんし,しかも,その預金口座は,相続人が「共有」している状態にありますから,共有者の1人である相続人から,口座履歴の開示を求められたら,これを拒むことはできません。

「共有」というちょっと難しいワードが出たので少し説明します。

さて,被相続人は,いざ本当に亡くなるまでずっと生きています。

当たり前すぎて言うまでもありませんが,相続問題なんて,多くの人にとっては,一生に一度出会うくらいなので,当たり前のことから説明します。

遺産というのは,被相続人が亡くなるその瞬間まで,存命中の被相続人の持ち物です。だから,被相続人が生きているのであれば,被相続人の財産をどうするかを決められるのは,被相続人自身だけです。

これが,近代が生み出した「所有権」の大原則です。

所有物をどうするか(売るのか,誰かにあげる(贈与)するのか,捨てるのか,壊すのか)を決められるのは,所有者本人だけで,所有者本人が決めてしまえば,その所有物をどうしようが所有者の勝手です。

この大原則は,所有者が亡くなったらどうなるんでしょうか?

所有者が亡くなると,つまり,被相続人が亡くなると,被相続人の所有物は,相続人全員の「共有」となります。

この「共有」というワードがくせ者なんです。

被相続人が亡くなって「共有」の状態が発生した場合と異なって,普通の「共有」状態が発生した場合,例えば,2人で半分ずつお金を出し合って自動車を購入して,その自動車を「共有」した場合,共有者の2人は,その自動車を自由に使えます。

ちょっと曖昧な言い方になりますが,共有しているモノに「手を出していい」のが,普通の「共有」です。

そのモノを使ってもいいし,そして,めちゃくちゃ大事なのは,「共有物分割」という訴訟を提起できるのが,普通の「共有」です。

「共有物分割」というのは,その名の通り,「共有物」を「分割」することです。それを裁判で実現しようとするのが「共有物分割」の「訴訟」です。

自動車の例でいえば,自動車を「共有」している2人は,「共有物」である自動車の「分割」を,相手に対して法的に請求することができ,相手と話し合いで解決ができない場合は,訴訟を提起して,裁判所に自動車の分け方を決めてもらうことができる。

それが,「共有物分割」の「訴訟」です。この「共有物分割」をできるのが,普通の「共有」なんです。

ちなみに,「共有物分割」は,現物を分割するのが原則です。だから,自動車の場合であっても,原則的には,自動車という「現物」をどうやって分けるのか,それを考えることになります。

でも,自動車という「現物」を分けると,普通は,自動車の価値を大きく下げてしまいますから(フレームとドアを片方に,エンジンとタイヤをもう一方に,なんて分けても仕方ないですよね笑),多くの場合は,自動車を売却してその売却代金をはんぶんこするか,もしくは,自動車を一方の単独所有にして,単独所有となった人から,自動車の価格の半額をお金でもう一方に払う,という方法がとられます。

さてさて,めちゃくちゃ本筋からそれまくっていますが,話を続けます。

被相続人が亡くなったことで発生した「共有」は,普通の「共有」とは違う,という話でした。

被相続人が亡くなると,その瞬間,被相続人の財産はすべて相続人の「共有」となる,と民法に書かれているんですが,この「共有」は,普通の「共有」とは違って,「共有物分割」ができません。

できないんならどうするかというと,「共有物分割」ではなく,「遺産分割」をやるんです。

「遺産分割」は,「訴訟」ではありません。「共有物分割」も,最初は話し合いから始まりますが,話し合いに決着がつかない場合は「訴訟」」を提起します。

これに対し,「遺産分割」も,最初は話し合いから始めますが,話し合いに決着がつかない場合,「遺産分割調停」を提起します。「遺産分割調停」とは,遺産分割の話し合いを裁判所でやる,ということです。

遺産分割調停で話し合いがつけばいいんですが,それでも決まらない場合,「遺産分割審判」といって,裁判所が決める手続きに入ります。

裁判所が決める,という意味では,「遺産分割審判」も「共有物分割訴訟」も似ているんですが,「遺産分割審判」は家庭裁判所で,「共有物分割分割訴訟」は地方裁判所なので,全然別の手続きです。

最終的に「遺産分割審判」が裁判所から出されると,これによって,遺産分割の方法(どの相続人にどの遺産をどれくらい分けるか)が決まり,遺産の「共有」状態が解消されます。

さて,預金口座を相続人が「共有」しているから,銀行は相続人に対して口座の履歴を拒めない,なんてことを書いてしまったがために,「共有」について書きまくってしまいました(汗)。

被相続人が亡くなって発生する「共有」の状態を,普通の「共有」と区別するため,「遺産共有」と呼ぶことも多いです。

僕は必ず「遺産共有」というワードを使います。「遺産共有」は,普通の「共有」と全然違うからです。

僕としては,民法の条文に「遺産共有」と書いてほしいくらいです(笑)。

そして,言うまでもありませんが,「遺産共有」は,相続人が2人以上いないと発生しません。

相続人が1人の場合は,被相続人が亡くなった瞬間,すべての遺産を,その1人の相続人が引き継ぎますから,「遺産共有」は発生しません。

被相続人が遺言で,相続人でもない人に財産を譲ると書いていたら話は別です。その場合の話は,またいつかします。

さて,「引出金」の話に戻りましょう。

被相続人の財産=遺産が,相続人の「遺産共有」状態となる結果,銀行は,相続人に対して預金口座の履歴を開示してくれるわけですが,そうすると,いろいろと被相続人の預金口座からお金が引き出されていることが発覚するんです。

まあ,預金口座からお金を引き出すのは,普通っちゃ普通です。

というか,皆さん,預金口座からお金を引き出していますよね?

引き出したお金を生活費として使っていますよね?

僕はあらゆるキャッシュレス決済方法をスマホに取り揃えているので,現金でしか決済できない店に行く場合以外は一切預金口座からお金を引き出すことはありませんが,でも,まだまだ「現金派」の方は多いと思います。

預金口座からお金を引き出して,生活費に充てる。それは普通すぎて,何にも咎められる筋合いじゃありません。

でも,生活費とは思えないほど多額の現金が預金口座から引き出されていた場合,その引き出しを知らない相続人は疑問を持ち,そして,激怒してしまう場合もあります。

引き出されたお金は,あいつが全部横領したんだぁぁっ!

とね。

特に,預金口座からの引き出しって,何月何日にいくらのお金を引き出したのか,預金口座の履歴で完全に明らかになりますから,めちゃくちゃ「リアル感」があるんですね。

その「リアル感」が,「お金」という側面で巻き起こりますから,感情を逆なでしちゃうんだと思います。

さて,今日はこれくらいにして,明日は,「引出金」を返せ,という請求が法的に通るのか,通るとして,じゃあ引き出されたお金のうち,どれくらいを返してもらえるのか,その辺についてお話したいと思います。

それではまた明日!・・・↓

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