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#473 子の氏の変更:離婚と同時に子どもの名字は変わりません

【 自己紹介 】

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【 今日のトピック:子の氏の変更 】

今日は,離婚絡みでよく出てくる,子どもの名字(=「氏(うじ)」)について話についてお話しようと思います。

さて,そもそも「離婚する」ってどういうことかというと,戸籍上「夫婦」となっている男女2人を,「夫婦じゃなくする」ことです。

戸籍上の夫婦を「夫婦じゃなくする」方法は,婚姻の無効や取消しなんてのもあるのですが,これは,婚姻自体に不備があったパターンなので,あんまりありません。

「離婚」とは,婚姻自体には問題がなかったものの,その後,後発的に婚姻関係に亀裂が生じて,夫婦関係を終了させることです。

で,「婚姻」すると,つまり,「婚姻届を役場に提出すると」,婚姻した男女の戸籍に変化が起きます。

どんな変化かというと,婚姻した男女どちらかを筆頭者にした戸籍が新しく作成されます。

婚姻届を提出する前は,夫も,妻も,それぞれ何かしらの戸籍に入っていたわけですが,婚姻届を提出すると,夫又は妻を筆頭者にした戸籍が出来上がります。

ただ,既に夫又は妻を筆頭者にした戸籍がある場合,例えば,夫がバツイチで,その前の結婚の際に,自分を筆頭者とする戸籍が新しく作成されていて,その夫が再婚するケースでは,新しく妻となる女性が,その前婚で作成された戸籍に入る,ということがあります。

この場合は,戸籍が新しく作成されることはありません。

とはいえ,夫婦どちらかを筆頭者とする戸籍に,筆頭者とはならなかった配偶者が入る,ということには変わりありません。

こんな感じで,婚姻すると(婚姻届を提出すると),戸籍が新しく作成されたり,戸籍に変化が起きたりします。

なんか,戸籍について事細かに説明してきましたが,「戸籍」は,「名字(=氏)」と密接に関わっているのです。

今日のテーマは,子の名字(=氏)ですが,そもそも「氏」とは,「筆頭者の名字」です。

例えば,古田博大を筆頭者とする戸籍に在籍している人の名字は,「古田」となります。

古田博大が結婚して,古田博大を筆頭者とする戸籍が新しく作成され,妻がその戸籍に入籍し,その妻との間に子ども(長男)が生まれたとしましょう。

生まれた長男は,出生届を古田博大又は妻が提出することによって,古田博大を筆頭者とする戸籍に入籍します。

そうすると,筆頭者の名字が「古田」なので,生まれた長男の名字も「古田」となります。

こうやって,戸籍内の人物は,筆頭者の名字に統一される仕組みになっています。

でも,古田博大が離婚すると,離婚した妻とは戸籍が別々になります。

離婚した妻は,「復氏(ふくうじ)」といって,結婚する直前に入籍していた戸籍に戻ります。

結婚する直前に入籍していた戸籍の筆頭者は,当然ながら,古田博大ではないので,名字は「古田」ではなくなります。

(ちなみに,妻が古田博大と結婚する直前に入籍していた戸籍の筆頭者の名字が「古田」でも,名字は「別」と考えます。同じ「古田」で,見かけ上名字は一緒ですが,戸籍の筆頭者が違うからです。もし仮に,結婚する直前に入籍していた戸籍の筆頭者が,「古田博大」と同姓同名でも,筆頭者が違う人物であることは変わらないので,名字(=氏)は「違う」ことになります。)

ただ,離婚した妻は,婚姻中の名字を使い続けることができます。

そうすると,結婚する直前に入籍した戸籍に戻ったにもかかわらず,名字は婚姻中のまま,という事態が生じてしまいそうですが,そうはなっていません。

離婚後も,婚姻中の名字を使い続ける場合は,戸籍の方を操作します。

本当は,「復氏」によって名字は変更されているのですが,婚姻中の名字を使い続ける場合は,離婚した妻だけの戸籍が作られます。

本当の名字(「民法上の氏」と呼ぶらしいです)とは違う名字で,妻だけの戸籍が作られ,「復氏」と「戸籍内の名字の統一」のバランスをとっています。

妻だけの戸籍が作られる結果,「戸籍内で名字が統一される」という原則は貫かれます。

さて,ここで「子どもの氏」の話を始めますが,離婚しても,戸籍に変動があるのは,配偶者だけです。

離婚すると,筆頭者ではない配偶者が,その戸籍から離れます。

そして,既にお話したとおり,戸籍から離れた配偶者は,婚姻する直前の戸籍に戻るか,または,新しく自分だけの戸籍を作ることになります。

2つのどちらを選ぶのかは,自由に選んでいいです。

ただ,婚姻中の戸籍から離れた配偶者が,離婚後に,子どもを自分の戸籍に入籍させたいのであれば,選択肢は1つです。

自分だけの戸籍を作らなければいけません。

というのも,婚姻する直前の戸籍は,配偶者の親が筆頭者になっていることが多いでしょうが,その場合は,孫を戸籍に入れることはできないからです。

婚姻する直前の戸籍も,自分が筆頭者であれば,その戸籍に戻って,子どもを入籍させることもできますが,婚姻直前の戸籍の筆頭者が親であれば,自分の子どもを,婚姻前の戸籍に入籍させることはできません(「三世代戸籍の禁止」と呼ばれます)。

じゃあ,離婚後に,自分だけの戸籍を作ったとして,それだけで,子どもが戸籍にやってくるわけではありません。

「子の氏の変更」という手続きをしなきゃいけません。

「子の氏の変更」は,子どもが14歳までは,親権者が代わりに行うことができます。

だから,例えば,妻が親権者となって離婚し,婚姻中の戸籍(夫が筆頭者)を離れて,妻だけの戸籍を作ったとしましょう。

この場合,子どもは,婚姻中の戸籍(夫が筆頭者)に取り残されますが,「子の氏の変更」を行うことで,妻だけの戸籍に移すことができます。

この「子どもの戸籍を移す」のが,「子の氏の変更」です。子の「氏(名字)」を変更するから,「子の氏の変更」と呼ばれます。

子どもが14歳までは,親権者である妻が,代わりに「子の氏の変更」ができます。

離婚後,夫には親権がないので,夫が子の氏の変更を拒むことはできません。

子どもが15歳以上の場合は,子ども自身が「子の氏の変更」手続きを行います。

ただ,実際のところ,「子の氏の変更」は,家庭裁判所に申立書を出せば自動的に許可が出るような運用をしているようです。

だから,実際は,母である離婚後の妻が,子どもの承諾を(一応)得て,代わりに子の氏の変更を行っているケースも多いと思います。

【 まとめ 】

「子の氏の変更」を行えば,子どもの戸籍を移すことができます。

しかし,戸籍を移そうが,移さまいが,離婚の際に親権者となった妻(又は夫)の親権がなくなるわけではありません。

離婚後も,婚姻中の名字を使い続けるのであれば,子どもが夫の戸籍の入籍したままであっても,それほど不都合はないような気もします。

とはいえ,離婚後に名字を旧姓に戻し,それに伴って子どもの名字を変更したい場合は,「子の氏の変更」は必ず必要です。

「子の氏の変更」は,見落としがちなので,離婚の際は気をつけてください。

それではまた明日!・・・↓

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