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民間への外注と職員への権限委任は違う

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、700日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

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【 今日のトピック:外部と内部 】

昨日は、児童相談所長が、民間の弁護士に裁判手続を委任することは可能だけれど、イチ公務員である(児童相談所長の部下である)弁護士に裁判手続を委任できるの?、というところで終わっていました。

さて、どうなんでしょうね。

民間の弁護士に裁判手続を依頼できるのなら、行政内部の弁護士なら、当然に依頼することができそうです。

でも、ちょっと待って下さい。

行政内部で権限を渡す場合は、法律の根拠が必要なんでした↓

法律の根拠なく、権限をやり取りしちゃダメなんでした。

この理由について説明していませんでしたが、公務員の誰が権限を行使できるかは、国民の権利を「誰が」制約できるか、というのを左右するので、法律の根拠が必要なんです。

誰にどんな権限を持たせるか(持たせられるか)って、それはつまり、「誰が国民の権利・地位を制約できるか」に直結します。

だから、行政が勝手に決めちゃダメなんです。

国民の権利を制約できる人物を決められるのは、国民だけです。

自分の権利を制約できるのは自分だけで、これが、民主政では、「国民全員に平等に投票の機会を与えられた選挙で選ばれた国民の代表だけが、国民の権利を制約できる」という理屈となり、結局、「選挙で選ばれた国民の代表のみで構成される国会の議決を経た法律だけが、国民の権利を制約できる」ということになります。

法律は、国民の選挙で選ばれた国会議員の多数決によって了承されているので、国民全員の権利を制約していい。

これが、民主政の大原則で、ここから、「法律に基づく行政」という原則が導かれます。法律に根拠があるからこそ、国民の権利を制約できる(国民の権利を制約する権限が行政に与えられる)わけで、法律の根拠がなければ、国民の権利を行政が制約することは許されません。

しかし、権限の有無だけ法律は決めればいいわけではなく、権限を「誰が行使できるか」も法律で決めなきゃいけません。

「権限があるのなら、誰が行使しても一緒でしょ?」なんて理屈は通用しません。

権限を誰に持たせるかで、適切に行使されるかどうかが左右されてしまうのは、僕が言うまでもないでしょう。

だから、「誰に権限を持たせるか」も法律で決めておかなきゃいけません。

したがって、権限を誰に渡すかも、法律の根拠が必要なんです。

とはいえ、地方自治法153条に、「知事や市町村長の権限は、他の職員に渡せる」という、一般的な条文があるので、結局、この法律にしたがって、かなり自由に権限のやり取りが行政内部で可能になっています。

じゃあ、児童相談所長が市長から渡された権限を、部下の弁護士に渡してもよさそうなもんです。

でも、本当にそうなんでしょうか。

それは、地方自治法153条の解釈をどう考えるか、ということに帰着します。

地方自治法153条は、あくまで、「知事や市町村長から」、他の職員に権限を渡すことを認めた条文です。

権限の起点は、知事や市町村長であって、職員ではありません。

つまり、地方自治法153条は、知事や市町村長を起点として、権限を他の職員に渡すことを認めているに過ぎず、既に知事や市町村長から権限を渡されている職員が、さらに別の職員に権限を渡すことまでを認めているわけではないんです。

とはいえ、知事や市町村長から他の職員に権限を渡すことが認められているのであれば、さらにもう一度、権限を別の職員に渡すことを認めてもよさそうです。

権限の「再委任」とか「再移譲」とでもいいましょうか。知事や市町村長が、別の職員に権限を渡していいのなら、さらにまた別の職員に権限を渡してもよさそうなもんです。

でもそれは、地方自治法153条の解釈上、禁止されています。

なぜなら、地方自治法153条に基づいて、そこまで認めてしまっては、「権限を渡すのに法律の根拠が必要」という大原則が骨抜きにされてしまうからです。

再委任がオーケーなら、もちろん、再々委任もオーケーになります。

再々々委任も、再々々々委任も、再々々々々々々々々々委任もオーケーになります。

こんなことまでオーケーにしておいて、「誰に権限を渡すかも、きちんと法律に基づいてますんで( ー`дー´)キリッ」とは、さすがに言えないでしょう。

だから、地方自治法153条で認められているのは、あくまで、知事又は市町村長を起点とした権限委任だけなんです。

知事又は市町村長から権限を渡すことを認めているだけで、その先の、職員から別の職員への権限委任は認めていないし、むしろ、↑に書いたように、無限に再委任が繰り返されると、「権限を誰に渡すかも法律の根拠が必要」という大原則が骨抜きにされてしまうので、これを回避するため、再委任は禁止されていると解釈しています。

その結果、何が起きるかというと、児童相談所長が、知事から渡されている権限を、職員である弁護士に渡すことは、地方自治法153条によって禁止されることになります。

それはつまり、職員である弁護士は、児童相談所長の代理人に「なれない」ということです。

児童相談所長は、民間の外部弁護士には裁判手続を委任できるのに、行政内部の弁護士には、裁判手続を委任できない。

これが、法的な結論です。

僕が話したかったのは、ここです。

メインディッシュはお話できたので、明日は、少しデザート的に、追加で少しお話したいと思います。

行政内部の弁護士に児童相談所長は裁判手続を委任できないにもかかわらず、行政内部の弁護士に裁判手続を委任している自治体がどうもあるらしく、そこについて少し考えてみたいと思います。

それではまた明日!・・・・↓

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