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質問には知識と想像力が必要

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このブログでは、2019年7月にうつ病を発症し、それをきっかけに同年12月からブログを始めて、それ以降、600日以上毎日ブログ更新してきた、しがないサラリーマン弁護士である僕が、日々考えていることを綴っています。

毎日ご覧くださってありがとうございます。本当に励みになっています。

法律に関する記事は既にたくさん書いていますので、興味のある方は、こちらにテーマ別で整理していますので、興味のあるテーマを選んでご覧ください。

【 今日のトピック:質問するのは大変 】

今、僕は児相(=児童相談所)で働いています。

児童相談所に対して抱くイメージは人それぞれでしょうが、結構現場作業が多いイメージありませんか?

「現場作業」といっても、道路工事や建築作業ではなく、家庭訪問したり、子どもを保護したり、面接したりと、そういった「現場作業」なんですが、そういう業務を児相は行っています。

虐待の通告があれば、その家庭まで訪問しますし、子育ての相談も受け付けていますし、虐待の通告を受けたら家庭訪問して終わりではなく、虐待のリスクが低くなるまで様々な援助活動を行います。

こういった援助活動は、子ども本人や親と直接会って話したりします。

僕は、こういう面接も、れっきとした「現場作業」だと思っています。

「現場作業」は、工事現場以外にも当てはまると思っています。工事現場で顔を合わせるのは仕事仲間だけですが、児相での面接は、いきなり家庭訪問された保護者や、虐待に苦しんでいる子どもだったりします。

こういった人たちと目の前で対面して話すのって、めちゃくちゃ気を使います。

慣れれば緊張はなくなってくるでしょうが、人と話すのって知らずしらずのうちに体力を消耗します。

どれだけ話すのが好きでも、話すという作業は単純にカロリーを消耗します。なおかつ、時間も使います。

家庭訪問は、移動時間もバカになりません。1日の時間は24時間と限られているので、移動時間や面接時間が長くなればなるほど、自分の時間や休息に必要な時間が減っていきます。

こういったフィジカルとメンタルの消耗度合いに照らすと、児相の業務は、まさに「現場作業」だと思います。

で、長々児相の業務について話してきましたが、僕は、児相で働いているものの、こういった現場作業は行っていません。

僕は、現場に出ることはなく、何をしているかというと、ずっと会議しています。

なんかエラそうですが、児相って、いろいろと決断していかなきゃいけないんです。

その途中途中で、一時保護するかどうかとか、子どもの処遇をどうするか(里親に委託するか、施設に入所させるか、家庭に戻すか)を決めなきゃいけなくて、それを決める会議を毎週いろいろと行っています。

で、この会議って本当に大切で、例えば、子どもが施設に入所することを会議で決めた場合、その会議の結果に基づいて、施設に説明します。

施設への入所は、行政処分として行うので、施設は有無を言わず従ってもらうことになります。

もちろん、正式入所に先立って内諾は得ておきますが、しかし、「施設入所」って、現実に子どもが施設に入って、そこで暮らし始めるわけですから、子どもが現実に生活する施設としては、どんな子どもなのかとか、どうして施設入所措置となったのかとか、施設入所になったのはいいけど、どうしてウチの施設なのかとか、そういったことがめちゃくちゃ気になります。

そういった事情は児相の担当職員から施設の担当職員宛に説明しますが、ただ、その説明内容は児相での会議結果が反映されます。

児相では、各子どもに担当職員がついて、その担当職員が面接や学校への調査を通じて方針を決めるんですが、その方針はあくまで暫定的で、その暫定的な方針を確定的な方針に決めるのが会議の役割です。

ま、こういった会議システムは、行政だけでなくいろんな企業でも採用されているのでしょうけど、僕はこういった大きな組織で働くのが初めてなので、働き始めて約3か月経ってもまだ、なんか新鮮な感じがします。

で、この会議で、僕はいろいろと質問しまくっています。

新参者のくせに、なんかズケズケと質問しまくっているのです。

見方によっては、「何も知らないくせに、知ったような口を聞くな」という話ですが、これには反論が2つあって、1つは、「新参者が口を挟めない会議に価値はないよね」ということです。

僕らは、現実に存在している「子ども」の処遇について結論を出す会議を行っているんです。

「新参者が口をはさむな」という、よくわからない価値観よりも、「子どもにとってベストな処遇を導く」ほうが大切なのは明らかです。

ただ、新参者が口をはさむことによって、子どもにとってのベストが導けなくなるのであれば、それは口をはさないほうがいいです。

ここからは反論の2つめに入りますが、結局、何が大切かって、子どもにとってのベストを導くことです。

で、子どもにとってのベストを僕が導けるかというとそうではありません。新参者だけで導けるほど簡単な話だとは僕も思っていません。

僕に求められているのは、僕だけでベストな結論を導くことではなく、僕が参加した会議でベストな結論を導くことです。

で、僕は、弁護士として、会議で法的な疑問や問題点を解消する役割を担っているのは間違いないんですが、それ以外にも、かなり積極的に質問しまくっています。

僕は別に、児童福祉に関して何か専門的な知識を有しているわけではなく、あくまで、弁護士視点で見ているだけですが、それでも質問が浮かんでくるんです。

というのも、弁護士の仕事をしていると、事実を見る目が育つんです。

「事実を見る目」というのは、まあ、「常識」と言ってもいいかもしれません。

「常識に照らして考えると、こういった事実がはずだ」とか、そういう「常識」です。

まあ、世界に対する「関心」と言ってもいいかもしれません。

こういう「事実を見る目」が育つと、素朴に疑問が湧いてくるんです。

・普通はこういう行動をするはずなのに、違った行動をしているのはどうして?

・あるはずの事実がないのはどうして?

・これとこれが合わさってこういった結論になったと思うんだけど、その理解で正しいですか?

こういう疑問です。

で、こういった疑問は、何かしら予定調和の答えがあるのではなく、予定調和ではないからこそ、事実に対して肉薄することができます。

僕の疑問に対して答えがスッと出てこないのであれば、それは調査不足で、そういった調査不足をあぶり出す役にも立ちます。

なんか抽象的な話が続いていますが、例えば、

・家事が忙しくて子どもに使える時間が少なく、その結果として暴力や暴言によって子どもに言うことをきかせようとしている場合に、家事の負担はヘルパーさんなどで減らすことができるけれども、そういった家事援助を受け入れていないのはどうして?

・性的虐待を受けたと主張しているのなら、父親に対する強烈な嫌悪感があるはずなのに、それがないのはどうして?

・ネグレクトとヤングケアラーによってストレスがたまり、家出や希死念慮につながった、という理解で正しいですか?

こんな疑問が自然と浮かんできます。これらの疑問に答えられないとすれば、それは調査不足(正確には、事情聴取のツッコミ不足)です。

で、こういった「事実を見る目」と「素朴に浮かぶ疑問」は、児相としての方針を固める上でとっても大切だと僕は思っています。

こういった「素朴な疑問」って、僕ら職員(プロ)以上に、子どもや親など、児相職員以外の人たちが抱きがちなんです。

だから、こういった疑問にあらかじめ対処しておくのは、子どもや親に対する説明への準備になりますし、そして、方針が正しいかどうかを確かめる役割も果たします。

そして、会議の運営上大切なのは、こういった疑問って、やみくもにぶつければいいわけじゃありません。

会議の時間は限られていて、限られた時間で最善の方針を決めなきゃいけません。議論できる時間は限られています。

そうなると、結局、知識と想像力が必要です。知識不足や想像力を補う時間は残されていないからです。

・子どもにとってのベストが何か

・子どもにとってのベストを導く方法は何か

・現状はどうなっているか

・現状からベストへどうやって導くか

こういうことを考えるのには、「ベストが何か」と「ベストを導く方法」について知識を蓄えておくと同時に、現状を正しく捉えて、そこからベストへ導く方法を想像することが必要です。

で、大切なのは、現状を正しく捉えるのにも、大きな想像力が必要です。

現実って、見えているようで本当に見えていません。

対話を重ねることで、現実への理解が深まり、その現実を踏まえた方針が立てられるわけです。

その「対話」に必要なのが想像力で、想像力は「常識」及び「常識との食い違い」から導かれるんです。

今の僕は、知識がまだ足りていないので、そこは少しずつ補充しています。知識って一朝一夕には身につきませんしね。

ただ、「常識を踏まえて想像力を働かせて考える」というのは、これまでの経験で身につけているので、この思考法をフルに働かせて、限られた時間で質問をぶつけています。

タイトルに戻りますが、この「質問」って、質問する側が大変なんです。

・知識

・想像力

この2つがきちんと揃って初めて、有効な質問が生まれ、議論がより深く正しい方向に向かうのです。

限られた時間で方針を決めるのは本当に大変で、質問するのは質問する側にとっても負担ではあるんですが、これをしないと、会議は単に担当職員の意見を追認する場になってしまいます。

担当職員がきちんと理解できているかを確認するのも、会議の大切な役割で、この会議は大切な教育の場であったりもします。

どれだけウザいと思われても構わないので、これからも想像力を働かせて質問しまくっていこうと思います。

それではまた明日!・・・↓

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