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#490 犯罪にあたるかどうか

【 自己紹介 】

※いつも読んでくださっている方は【今日のトピック】まで読み飛ばしてください。

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あらゆる法的問題を網羅することは難しいですが,日々の弁護士業務を通じて,「これは多くの方に知ってもらったほうがいいな」と感じたポイントを,ギュッとまとめてご紹介しています。

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【 今日のトピック:これって犯罪? 】

僕は,弁護士であることを公開し,実名も公開して毎日個人のブログを更新しています。

もちろん,僕にもありがたいことに友だちがいるんですが,僕自身が弁護士なので,「これやったら何罪になるの?」とか「これやったらダメなの?」とか聞かれることもあります。

僕は,そういった質問全部ウェルカムなので,いくらでもぶつけてもらって構いません(笑)

法律の話をわかりやすく伝える練習になりますし,僕は,その作業が好きなので,本当にウェルカムだと思っています。

今日は,「これってダメなの?」「これって犯罪なの?」についてちょっと書いていこうと思います。

さて,弁護士以外の方にとって,「犯罪」って,かなり遠い存在だと思います。

犯罪を犯してしまった人にとっては,犯罪は他人事ではなく「自分事」なので,遠くはないでしょうが,その人にとっても,犯罪を犯すまでは,犯罪って遠い存在だったと思います。

だから,「犯罪」のイメージがよくつかめないと思うんですが,「犯罪」って,おおごとです。本当におおごとなんです。

だって,「逮捕」されちゃうんですよ?

「犯罪」なのであれば,逮捕していいです。

何かしら「悪いこと」であっても,それが「犯罪」ではなければ,逮捕されることはありません。

でも,「悪いこと」が「犯罪」なのであれば,「逮捕」されちゃいます。

「逮捕」するかどうかは,警察・検察次第です。僕ら一般ピーポーには決められません。

でも,犯罪であれば,どれでも「逮捕」できちゃうので,「犯罪」にあたるかどうかって,本当に大切なんです。

僕らは,こういう目で「犯罪」を見ているんです。

「犯罪」に当たるせいで,逮捕されてしまい,生活がめちゃくちゃになってしまった人たちをたくさん見てきているので,「犯罪」に当たるかどうかって,本当に人生を大きく左右します。

「犯罪」かどうかが分かれるのって,例えば,無銭飲食(食い逃げ)があります。

無銭飲食って,説明するまでもありませんが,お金を払わずにレストランや食堂でご飯を食べることなんですが,これが「犯罪」なのは,言うまでもない気がします。

でも,「犯罪」は,刑法などの法律で罰則が設けられた要件に当てはまって初めて「犯罪」になるのです。

「お金を払わずに食べるのは悪いことなんだから犯罪だ」なんてぶっきらぼうな話ではないんです。

無銭飲食が,どの犯罪に当たるのかを,きちんと見極めなきゃいけません。

じゃあ,いったい,無銭飲食がどの犯罪に当たるかというと,まあ,「詐欺罪」でしょうね,普通は。

最初からお金を払うつもりもないのに,お金を払うように装って注文して,料理の提供を受けると,「詐欺罪」が成立します。

お金を払うつもりもないのに注文した,という部分が,「欺罔行為(ぎもうこうい)」といって,「相手をダマす」ことになり,ダマした結果,店員が「この人はお金を払うつもりだよね」と勘違いして,料理を提供してしまう。

この一連の過程が「詐欺罪」に当たります。

ほとんどの無銭飲食が,これでしょうね。最初から払うつもりもないのに注文してるんです。

じゃあ,食べた後に「やっぱり払いたくないな」と思ったらどうでしょうか。

注文した時点では払うつもりがあったけれど,食べ終えた後に払うつもりがなくなったというケースがどれくらいあるのかわかりませんが(たぶん,よっぽどの事情がない限りないと思います),本当に,注文時点では払うつもりがあったけれども,食べ終えた後に払いたくなくなり,「ちょっと店の外で電話してきます」と言ってお店の外に出て,そのまま支払わずに帰宅したら,これも「詐欺罪」に当たります。

お店の代金を踏み倒すために,「ちょっと店の外で電話してきます」と言ったことが詐欺罪に当たるんです。

じゃあ,本当に電話がかかってきて,お店の中で喋ったら悪いなと思って,「ちょっと店の外で電話してきます」と言って外に出て,電話を終えた後,「やっぱり払いたくないな」と思い,払わずに帰ってしまった場合,どうなるでしょうか。

もちろん,ほとんどの場合,そんなことないと思います。最終的に払わずに帰ってしまうような人なのであれば,そもそも最初から払うつもりなかったと考えるのが普通でしょうから。

とはいえ,本当に,電話でお店の外に出て初めて,「払いたくないな」と思い,そのまま帰った場合,詐欺罪は成立しません。

犯人の行動は,外見上は全く同じなのですが,犯罪が成立するのは,「店の外で電話してきます」と言った時点で「払いたくないな」と思っていたケースで,外に出て初めて「払いたくないな」と思ったのであれば,犯罪にはならないんです。

ダマすつもりもなく,本当に電話するために外に出るために「ちょっと電話してきます」と言ったことは犯罪ではありません。

そして,外に出てそのまま帰ったことで,代金を踏み倒したことにはなりましたが,無言で代金を踏み倒すことは犯罪には当たりません。

もちろん,お店の店主は,踏み倒して帰ったお客に対し,代金の支払いを請求することはできますが,ただ,その人が犯罪者だと警察に突き出すことはできないんです。

まあ,「外に出て初めて払いたくないなと思いました」という言い訳が通用するケースはほとんどないでしょうが,それでも,「ぜったいにあり得ない」わけではありません。

こういう感じで,犯罪に当たるかどうかを,厳密に考えるのが僕らの仕事で,厳密に考えられるだけの知識と論理的思考を日々積み上げているわけです。

まあ,実際の刑事事件で,「犯罪に当たるかどうか」が争われることもそんなに多くないんですが,「犯罪かどうか」が争われた有名な事件があって,それは「ライブドア事件(ホリエモン事件)」です。

ホリエモンが実刑判決を受けて服役したのはめちゃくちゃ有名ですが,その刑事事件は,ライブドアの会計処理が「犯罪かどうか」というのが争われたのです。

ホリエモンは最高裁まで争いましたが(最高裁で弁護人を務めたのは,カルロス・ゴーン事件の弁護人でもあった弘中惇一郎弁護士です),ライブドアの会計処理が犯罪であることは覆らず,実刑判決が確定しました。

ライブドア事件って何が起きたのかというと,ライブドアは,自社の株価を高く見せたかったんです。

ライブドア(=ホリエモン)は,いろんな会社を買収していたんですが,その際に,「株式交換」といって,自社の株式を対価としていました。

他の会社を「買収する」=「買う」のであれば,当然,対価が必要なわけですが,その対価は,現金でもいいし,自社の株式でもいいんです。

自社の株式を対価にするのであれば,自社の株式が高額であればあるほど,有利ですよね?

ライブドア株が,1株1000円の場合は,100万円の会社を買うためには,1000株が必要ですが,ライブドア株が1株1万円であれば,100株で買えます。

だから,株式交換で会社を買収していたライブドアにとって,自社の株価を高く見せる必要があったのです。

そのために何をしたのかというと,ライブドアは,子会社にライブドアの株式を買わせて,高くなった時点で売却し,その売却益をライブドアの連結会計(子会社も含めたライブドアグループ全体の会計)に計上したのです。

この売却益のぶん,利益が計上されますから,その利益が反映された決算書を見た投資家たちは,ライブドアは利益が出ていると思ってライブドア株を買うので,その買い注文によって,ライブドアの株価は値上がりします。

まあ,子会社が親会社の株式の売却益を,収益として連結会計に計上するのはダメ(犯罪)なのですが,ライブドアは「子会社」ではなく,子会社の孫会社くらいの会社が,ライブドア株を購入していました。

だから,厳密に言えば,「子会社が親会社株を売却した利益を計上した」ではなかったんです。

現在では,子会社だろうが,孫会社だろうが,大本の親会社の株の売却益を連結会計に計上するのは犯罪であることが明確になっているらしいのですが,ライブドア事件当時(2006年当時)は,これが明確ではなかったらしいです。

だから,「犯罪かどうか」が争われ,結果として,「明確ではなかった」のであれば,「犯罪ではない」と結論づけるべきであったにもかかわらず,「犯罪です」という結論が出てしまいました。

まあ,僕自身も,「子会社じゃダメだから孫会社を使った」というのは「ズルい」とは思いますが,とはいえ,「犯罪かどうか」は明確に線引しなきゃいけないと思っているので,本当に「明確ではなかった」のであれば,堂々と無罪という結論を出すべきだったと思います。

【 まとめ 】

「犯罪かどうか」を,僕ら弁護士はめちゃくちゃ厳密に考えます。

仕事上「犯罪」に接しますし,「犯罪かどうか」で人生が大きく左右されることを知っているからです。

ライブドア事件のように,「犯罪かどうか」が争われた事件も実際にあります。

弁護士が話す「犯罪かどうか」の思い,少しは感じてもらえたら幸いです(笑)

それではまた明日!・・・↓

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