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筒井康隆『文学部唯野教授』に出てくる文献及び書籍をピックアップする~徒然備忘録~


このnoteの主旨

先日、筒井康隆『文学部唯野教授』という小説を読み終えた。

この小説では実在の文献や書籍が頻出する。
本記事ではその文献や書籍の情報を全てピックアップしてまとめておこう、というのが主な目的である。

ただし、文献及び書籍情報をピックアップするにあたって3つのルールを設けさせていただく。

①論文などの書籍化されてないものに関してはPDFにアクセスできるURLを掲載する。
②書籍化されているものに関してはAmazonのURLを掲載する。(楽天市場etc.のECサイトのURLは掲載しないため、Amazon以外で購入したい場合はご自分で探していただきたい。)
③Amazonの中でも基本的にはKindleで発売されているものを中心にピックアップしていく。もし、Kindleで電子書籍化されていないものに関しては紙の本でご紹介する。(私が基本的にKindle信者であるため。)

筒井康隆『文学部唯野教授』の構成

この小説は全9章で構成されている。(本文中では第○講という形で書かれている。)
基本的に、章の前半部では物語が進行し、章の後半部では唯野教授が大学で学生らに向けて講義を行うという形のものである。
このnote記事において重要なのは後半の講義部なのだが、一応「全てピックアップする」というルールにしているので物語部に出てくる文献及び書籍情報も紹介していくこととする。

本編

失礼、前置きが長くなってしまった。それでは本編に入っていこう。


第1講 印象批評

ライオネル・ゴスマン『文学と教育』(PDF)

これはイギリス王立諮問委員会への答申なので、私が探した限りではこれしか見つかりませんでした。日本語訳が見つからなくてごめんなさい。

小林秀雄『本居宣長(上)』(Kindle)

小林秀雄『本居宣長(下)』(Kindle)

上にあげた3つは全て講義部で語られているものです。


第2講 新批評(ニュー・クリティシズム)

以下に示すのは物語部に出てくるものなので新批評とは関係ないですが一応。

マックス・ウェーバー『社会学の基礎概念』(紙の本)

次からは講義部に出てくるものなので新批評と関係あり。

檀一雄『火宅の人(上)』(紙の本)

檀一雄『火宅の人(下)』(紙の本)

D・H・ロレンス『チャタレー夫人の恋人』(Kindle)
小説本文では『チャタレイ夫人の恋人』と出てきますが、光文社古典新訳文庫のKindle版ではこのような名前で出版されています。

トルストイ『戦争と平和1』(Kindle)

トルストイ『戦争と平和2』(Kindle)

トルストイ『戦争と平和3』(Kindle)

トルストイ『戦争と平和4』(Kindle)

トルストイ『戦争と平和5』(Kindle)

トルストイ『戦争と平和6』(Kindle)

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟1』(Kindle)

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟2』(Kindle)

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟3』(Kindle)

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟4』(Kindle)

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟5~エピローグ別巻~』(Kindle)


第3講 ロシア・フォルマリズム

以下は物語部に出てくるものなので…(以下略)

ポール・ド・マン『読むことのアレゴリー』(Kindle)
小説本文では『読むことのアレゴリイ』と出てきますが、講談社学術文庫のKindle版ではこのような名前で出版されています。

ポール・ド・マン『盲目と洞察―現代批評の修辞学における試論』(紙の本)
小説本文では『死角と明察』という名前で出てきますが、日本語訳ではこのような名前で出版されています。

トマス・ピンチョン『トマス・ピンチョン 全小説 重力の虹[上]』(紙の本)
小説本文では『重力の虹』とだけ書かれています。

トマス・ピンチョン『トマス・ピンチョン全小説 重力の虹[下]』(紙の本)

ジル・ドゥルーズ&フェリックス・ガタリ『アンチ・オイディプス 合本版 資本主義と分裂症』(Kindle)
小説本文では『アンチ・オイディプス』とだけ書かれています。

サミュエル・リチャードソン『パミラ、あるいは淑徳の報い 英国十八世紀文学叢書』(Kindle)
小説本文では『パメラ』とだけ書かれています。

サミュエル・リチャードソン『クラリッサ』(PDF)
URL先のページ下部にある「Clarissa translation in PDF format, about 57 megabytes」をクリックするとPDFをダウンロードできます。(北海道大学の名誉教授が出しているものなので、たぶん法的にも大丈夫なもののはず。たぶん。)

テリー・イーグルトン『クラリッサの凌辱―エクリチュール,セクシュアリティー,階級闘争』(紙の本)
小説本文では『クラリッサの凌辱』とだけ書かれています。

ヘンリー・フィールディング『アミーリア』(紙の本)

ヘンリー・フィールディング『トム・ジョウンズ(上)』(Kindle)
小説本文では『トム・ジョーンズ』と出てきますが、Kindle版ではこのような名前で出版されています。

ヘンリー・フィールディング『トム・ジョウンズ(下)』(Kindle)

ここからは講義部に出てくるものなのでロシア・フォルマリズムと関係あり。

ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ 上』(Kindle)

ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ 中』(Kindle)

ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ 下』(Kindle)

小林多喜二『蟹工船』(Kindle)

徳永直『太陽のない街』(Kindle)

三島由紀夫『潮騒』(紙の本)


第4講 現象学

以下は物語部に出てくるものなので…(以下略)

ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』(Kindle)

ロマン・ロラン『魅せられたる魂〈1〉』(紙の本)

ロマン・ロラン『魅せられたる魂〈2〉』(紙の本)

ロマン・ロラン『魅せられたる魂〈3〉』(紙の本)

ロマン・ロラン『魅せられたる魂〈4〉』(紙の本)

ロマン・ロラン『魅せられたる魂〈5〉』(紙の本)

ロマン・ロラン『愛と死との戯れ』(Kindle)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール『チボー家の人々』(紙の本)

ロジェ・マルタン・デュ・ガール『ルリュ爺さんの遺言』(紙の本)
これは(少なくとも日本語訳で)単体では書籍化されていないみたいですが、1927(昭和2)年に第一書房刊の『近代劇全集 第18巻』にて収録されているみたいです。

フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル1』(Kindle)

フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル2』(Kindle)

フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル3』(Kindle)

フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル4』(Kindle)

フランソワ・ラブレー『ガルガンチュアとパンタグリュエル5』(Kindle)

モンテーニュ『随想録』(Kindle)

ウィリアム・フォークナー『サンクチュアリ』(Kindle)

ここからは講義部に出てくるものなので現象学と関係あり。

『世界の名著 第62巻』(中央公論社刊)(紙の本)
この書籍に関しては少し特殊です。というのも、唯野教授が「フッサールの著作が3つ入っている」と述べているのみで具体的な著作名は明言されていません。が、本記事に載せておくべきだと思ったので紹介しておきます。

エドムント・フッサール&ジャック・デリダ『幾何学の起源』(紙の本)

遠藤周作『沈黙』(Kindle)

遠藤周作『イエスの生涯』(Kindle)

ジャン=ポール・サルトル『存在と無』(紙の本)

エドムント・フッサール『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』(紙の本)


第5講 解釈学

第5講において物語部に出てくる文献及び書籍はありません。
従って、講義部で出てくる文献及び書籍を紹介します。

ハイデガー『存在と時間』(Kindle)

シェイクスピア『夏の夜の夢』(Kindle)
小説本文では『真夏の夜のゝ』と出てきますが、角川文庫のKindle版ではこのような名前で出版されています。

ハンス=ゲオルク・ガダマー『真理と方法 Ⅰ 哲学的解釈学の要綱』(紙の本)

ハンス=ゲオルク・ガダマー『真理と方法 Ⅱ 哲学的解釈学の要綱』(紙の本)

ハンス=ゲオルク・ガダマー『真理と方法 Ⅲ 哲学的解釈学の要綱』(紙の本)

紫式部『源氏物語』(Kindle)
ちょっと長いですが…

高橋源一郎『優雅で感傷的な日本野球』(Kindle)


第6講 受容理論

第6講においても物語部に出てくる文献及び書籍はありません。
従って、講義部で出てくる文献及び書籍を紹介します。

ポンタリス『フロイト以後』(紙の本)
『フロイト以後』に関しては日本語訳が見つかりませんでした。たぶん日本語で書籍化はされていないのではないでしょうか。(知らんけど。)
したがって、原著のままフランス語版を引っ張ってきました。これでご勘弁。

ダンテ『神曲 地獄篇』(Kindle)

ダンテ『神曲 煉獄篇』(Kindle)

ダンテ『神曲 天国篇』(Kindle)

川端康成『雪国』(Kindle)

ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク〈1・2〉』(紙の本)

ジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク〈3・4〉』(紙の本)

ここで、ロレンス・スターン『トリストラム・シャンディ 上中下』ヘンリー・フィールディング『トム・ジョウンズ 上下』が出てきますが、第3講「ロシア・フォルマリズム」でも取り上げているので割愛します。

ハンス・ロベルト・ヤウス『挑発としての文学史』(紙の本)

ジャン=ポール・サルトル『文学とは何か』(紙の本)

大江健三郎『死者の奢り』(紙の本)
紹介する書籍は大江健三郎の短編集であり、『死者の奢り』の他に『他人の足』、『飼育』、『人間の羊』、『不意の唖』、『喝采』、『戦いの今日』が収録されていますが、小説本編で言及されているのは『死者の奢り』のみです。

ロラン・バルト『テクストの楽しみ』(紙の本)
小説本文では『テクストの快楽』と出てきますが、Kindle版ではこのような名前で出版されています。

ジェイムズ・ジョイス『ユリシーズ』(紙の本)


第7講 記号論

第7講においても物語部に出てくる文献及び書籍はありません。
従って、講義部で出てくる文献及び書籍を紹介します。

フェルディナン・ド・ソシュール『新訳 ソシュール 一般言語学講義』(紙の本)


第8講 構造主義

第8講においても物語部に出てくる文献及び書籍はありません。
従って、講義部で出てくる文献及び書籍を紹介します。

ノースロップ・フライ『批評の解剖』(紙の本)

蓮實重彦『小説から遠く離れて』(紙の本)

村上春樹『羊をめぐる冒険』(Kindle)

井上ひさし『吉里吉里人』(Kindle)

丸谷才一『裏声で歌へ君が代』(紙の本)

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』(Kindle)

中上健次『枯木灘』(Kindle)

大江健三郎『同時代ゲーム』(Kindle)

石川淳『狂風記 上』(Kindle)

石川淳『狂風記 下』(Kindle)

ウラジーミル・プロップ『昔話の形態学』(紙の本)

A・J・グレマス『構造意味論―方法の探求』(紙の本)

ジョヴァンニ・ボッカッチョ『デカメロン』(Kindle)

ジェラール・ジュネット『物語のディスクール―方法論の試み』(紙の本)

マルセル・プルースト『失われた時を求めて1 ~第一篇「スワン家のほうへⅠ」~』(Kindle)

マルセル・プルースト『失われた時を求めて2 ~第一篇「スワン家のほうへⅡ」~』(Kindle)

マルセル・プルースト『失われた時を求めて3 ~第二篇「花咲く乙女たちのかげにⅠ」~』(Kindle)

マルセル・プルースト『失われた時を求めて4 ~第二篇「花咲く乙女たちのかげにⅡ」~』(Kindle)

マルセル・プルースト『失われた時を求めて5 ~第三篇「ゲルマントのほうⅠ」~』(Kindle)

マルセル・プルースト『失われた時を求めて6 ~第三篇「ゲルマントのほうⅡ」~』(Kindle)

アーネスト・ヘミングウェイ『殺し屋』(紙の本)
『殺し屋』はヘミングウェイの短編小説であり、紹介する短編集『われらの時代・男だけの世界: ヘミングウェイ全短編』に収録されています。また、小説本文では『殺し屋たち』と出てきますが、本書では『殺し屋』というタイトルで収録されています。

谷崎潤一郎『痴人の愛』(Kindle)

シャルル・ボードレール『猫たち』(紙の本)
『悪の華』はシャルル・ボードレールが生前に出した唯一の詩集であり、岩波文庫版の『悪の華』には『猫(Le Chat)』という名前で詩が載っているようです。

〈参考〉

ロマーン・ヤコブソン&クロード・レヴィ=ストロース『シャルル・ボードレールの〈猫たち〉』(論文)
『シャルル・ボードレールの〈猫たち〉』はヤコブソンとレヴィ=ストロースの共著論文で、前述したボードレールの詩『猫たち』を構造主義の方法で構造分析したのだそうです。
いくつか文献はありますが、まずは元の論文がそのままあったので以下に紹介しておきます。PDFボタンをクリックするとPDFをダウンロードすることができます。

次に日本語訳を確認していきましょう。『現代のエスプリ No.58 構造主義』(紙の本)にて佐々木明氏による日本語訳が載っていることを確認しました。

更にもうひとつ日本語訳を紹介します。『構造主義―構造主義の理論と方法を探究(マイケル・レイン編)』(紙の本)にて山田明氏による日本語訳が載っているそうです。

花輪光『詩の記号学のために―シャルル・ボードレールの詩篇「猫たち」を巡って』(紙の本)
本書は、前述したヤコブソンとレヴィ=ストロースの論文『シャルル・ボードレールの〈猫たち〉』と、これに対する反論の内の重要なものを1冊にまとめたものだそうです。
小説本文では『詩の記号学ために』と題されていますが、実際にはこのようなタイトルで出版されています。


第9講 ポスト構造主義

第9講においても物語部に出てくる文献及び書籍はありません。
従って、講義部で出てくる文献及び書籍を紹介します。

ジャック・デリダ『カフカ論―「掟の門前」をめぐって』(紙の本)
小説本文では『カフカ論』と出てきますが、実際にはこのようなタイトルで出版されています。

フランツ・カフカ『掟の門』(Kindle)
『掟の門』はカフカによる短編小説であり、岩波文庫版の『カフカ短編集』に収録されています。
また、小説本文では『掟の門前』と出てきますが、岩波文庫版「カフカ短編集」では上述したようなタイトルで収録されています。

〈参考〉

バルザック『サラジーヌ』(紙の本)
『サラジーヌ』はバルザックによる短編小説だそうです。紹介する本書では『サラジーヌ』を題に含む短編集として出版されています。

ロラン・バルト『S/Z―バルザック『サラジーヌ』の構造分析』(紙の本)
小説本文では『S/Z』と出てきますが、実際にはこのようなタイトルで出版されています。

ここで、ロラン・バルト『テクストの楽しみ』が出てきますが、第6講「受容理論」でも取り上げているので割愛します。

渡部直己『読者生成論―汎フロイディスム批評序説』(紙の本)
小説本文では『読者生成論』と出てきますが、実際にはこのようなタイトルで出版されています。

終わりに

以上!小説自体はおもしろかったです。ただ、最近読書離れしていたので勘を取り戻すのにやや時間がかかりそう!易しくて軽い小説を読んで徐々に勘を取り戻していこうかなとか思ってます。いきなり難しいやつに挑んでも3行読んで2行戻るの繰り返しなので非効率!
でも、まとめをやったのは我ながら偉い。そこだけは自分を褒めようと思います!
それではまた気が向いたらnoteを更新します~
さらば!

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