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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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映画キャラクター考察(ネタバレあり)

漫画家として売れることを夢見る主人公・山城圭吾(菅田将暉)。
高い画力があるにも関わらず、お人好しすぎる性格ゆえにリアルな悪役キャラクターを描くことができず、万年アシスタント生活を送っていた。
ある日、師匠の依頼で「誰が見ても幸せそうな家」のスケッチに出かける山城。
住宅街の中に不思議な魅力を感じる一軒家を見つけ、ふとしたことから中に足を踏み入れてしまう。
そこで彼が目にしたのは、見るも無残な姿になり果てた4人家族…… そして、彼らの前に佇む一人の男。
事件の第一発見者となった山城は、警察の取り調べに対して「犯人の顔は見ていない」と嘘をつく。
それどころか、自分だけが知っている犯人を基に殺人鬼の主人公“ダガー”を生み出し、サスペンス漫画「34(さんじゅうし)」を描き始める。
山城に欠けていた本物の【悪】を描いた漫画は異例の大ヒット。山城は売れっ子漫画家となり、恋人の夏美(高畑充希)とも結婚。二人は誰が見ても順風満帆の生活を手に入れた。
しかし、まるで漫画「34」で描かれた物語を模したような、4人家族が次々と狙われる事件が続く。 刑事の清田俊介(小栗旬)は、あまりにも漫画の内容と事件が酷似していることを不審に思い、山城に目をつける。共に事件を追う真壁孝太(中村獅童)は、やや暴走しがちな清田を心配しつつも温かく見守るのだった。

そんな中、山城の前に、再びあの男が姿を現す。
「両角って言います。先生が描いたもの、
リアルに再現しておきましたから。」
交わってしまった二人。
山城を待ち受ける“結末”とは?

(以上は公式HPのStoryより)

これから以下はネタバレを含みます。(1回映画を見ただけですので伏線の見逃しや、セリフの不正確さはご容赦ください)

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そもそもこの作品にミステリー要素があるのかもわからずに見たのですが、そっちの方向で意外性を持たせるのか!と唸らされました。伏線回収のために、何度も見たい映画だと思いました。

山城は目撃情報を隠していた負い目から、両角のことはずっと警察へ黙秘すると思っていたので、早々に清田へ洗いざらい話したのは、意外でした。警察側が少しずつ両角にたどり着くストーリーを見せる映画ではない…?犯人もわかっている、となると?と思っていたところ、まさかの清田の死。

小栗旬という大物だからこそ、余計に死を予測させていないのは凄いと思いました。

そこで明かされる。「共犯」

これも、両角がコミュニケーションに難があるキャラであったため、余計に共犯の可能性が無いとミスリードされていて、とても良かったです。

そして、4人家族というキーワードを回収する、「幸福ではない4人家族」と「本当に幸せな4人家族」。山城と母のよそよそしい態度、夏美のお腹の子供…「俺たちは4人家族か?」の山城のセリフでやっと気付きましたが、うわーっとなりました。

ラストまで見届けて、私なりの全体を通してのキャラクターの考察。

山城は善良で気弱、自分の中に無い「キャラクター」を両角に見い出し、そこからインスピレーションを受けて漫画34を連載したと思っていた。(本人自身も)

でも実は、山城自身が持っていた凶悪な面が、両角をきっかけに引きずり出されたというのが真実。(漫画の師匠「自分にない物は書けない」というセリフが伏線)

4人家族をターゲットにした連続殺人の漫画は、いびつな4人家族を持つ山城が、無意識に幸せな4人家族を壊したい衝動を表していた。(最初の殺人を目撃した時も、恐怖と共に一種の快感的なものを得ていたのかもしれない。そして山城の仕事場は、殺人計画をしているサイコパス犯の雰囲気があり、両角の部屋の雰囲気と似ているように感じた)

終盤、山城と両角の乱闘で、笑いながら両角にとどめを刺そうとする山城は、殺人衝動を初めて自覚した瞬間だったのだと思う。(漫画34のセリフで、「人間には殺人衝動がある者と無い者がある」という言葉があり、無い者と思われた山城はある側の人間だった)

そして笑顔で組み敷かれた両角は、「ほら僕が言ったとおり、やっぱり先生もこっち側の人間じゃないか」という気持ちだったのだと思う。

山城が撃たれて両角の上に折り重なるシーンは、漫画ではダガーが上になっており逆であった。これは「ダガー」は両角ではなく山城自身であったという暗喩かと思います。

そしてラストの両角のセリフ。「僕は誰?」

強烈なキャラクターと思われた両角が、実は戸籍も名前も無い、そして自分自身も無い「空っぽな人間」であった。(ダガーの器にすぎなかった)

善良な人間と思われた山城は、実は殺人衝動を持ち、ダガーの本体は山城の凶悪面の「キャラクター」であった。

…と私は捉えました。

両角の生い立ちは、4人家族が幸せという特殊な村のコミュニティーに居たのは間違いないかと。(今は保養所になってるんだというセリフもあったし)ただ、そこから1つ目の一家殺人へ至る経緯は不明。配達員として一家を訪れた際、殺人衝動の引き金となるような、トラウマ的な何かがあったのかもしれない。(と想像する)

狙った4人家族が、すべて子供は男女だったのも気になる。村の新聞記事は一瞬だったから、詳細を読み取れなかったけれど、「男女の子供」も幸せな家族には必須だったのかも?

もしかしたら、両角は2人目の男の子として生まれ、幸せな4人家族には当てはまらないため、村や家族に阻害されたり捨てられたりした可能性もある。ただ、それでは両角が「4人家族こそが幸せ」という洗脳をされる期間が持てないかなと思ったり。でも一組目の4人家族殺害後、同じ食卓に座ってたことから、両角は幸せな家族の食卓に自分も居たかった想いを持つ、望まれない5人目だった可能性も捨てきれず。

一方山城が、子供が男女の4人家族ばかりを描いたのは、自分の家族構成との対比から、無意識に同じ家族構成をターゲットにしたのかと。(終盤、身代わりでなく本物の家族をおとりに使ったのも、無意識に歪な家族は壊れても構わない…と考えてた、というのは考えすぎかな。)

あと、ラストで共犯者の辺見は捕まってたと私は勘違いしていましたが、まだ逃亡中だった…となると、夏美の外を気にする素振りや、エンドロールの刃物音はバッドエンドでしょうか。

辺見と両角の関係は、両角が辺見のファンでそのうち逆になったとのこと。そして大量の辺見からの手紙。過去の辺見の事件も、辺見が16歳のとき…くらいしか私は聞き取れて無かったのですが、一家殺人だったのかも?

きちんと見返したら伏線を回収できるのかもしれません。(二人の関係性はきちんと作品内に描かれてると書いてある方のコメントをちらっと見ました)

なんにせよ、見終わったあとに、考察をいっぱいしたくなるような、余白を残したとても面白い映画でした。

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