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「いちばんすきな花」がある家の座敷童子たち~最終話に思うこと~

(正源の娘の雑記)

【主な登場人物 4人と一人】

春木椿
潮ゆくえ
佐藤紅葉
深雪夜々
     
志木美鳥

 多かれ少なかれ人は皆、他者との関係がなければ生きていけないこの世界で傷つきながらも生きている。

 生きづらさを抱えたまま大人になった4人が、出会うべくして出会い住んだ家があった。嫌いなこと嫌いなモノ、苦手なこと苦手なモノを話すことができて、そんな自分を受け入れてくれる仲間に巡り合うことで、生きやすくなったと感じる自分を手に入れて、その家を巣立つ日がやってきた。大人の自分がちょっとだけ強くなれたかもしれないと言うことが、子どもの頃の自分にはどうすることもできなかったことを大人の自分が解決したっていうことにならないか。辛かった子どもの自分の心にも生きやすさを上書き出来たのではないか。TVの前の私にははっきりと見えたよ。楽しそうに見送っていた子どもの頃のあなたたち4人が。あなたたちにも見えたはずだと思ってる。笑顔で行ってらっしゃいと手を振る子どもの自分たちが。

 座敷童子を見た者には幸福が訪れるという。家に富をもたらすともいう。いたずらっ子だけれどね。
妖怪なのか、霊なのか、神なのか知らないけれど、住み心地のいい家に住み着いて幸せをもたらしてくれて、居心地が悪くなると出ていくらしい。
あの家は住み心地がよかった。家主の元へまず3人が集まってきた。より住み心地の良くなった家は4人の座敷童子を残して、新しい主にバトンタッチされた。塾の先生の新しい主の元には子どもたちが集うし、元主たち4人もかわるがわる訪れるだろう。座敷童子たちが棲む条件は整っている。新しいこの家の主が幸せになるのも間違いなさそうだ。

 最終話もまたさり気なく、生きにくい理由となりうる事例を言葉に込めて描かれていた。違うことは全て解決された現在進行形であることだ。

 餃子はたぶん皆好きだと思うけど、使う調味料は好き好き。お酢だけ使う夫と餃子タレにラー油一杯入れる妻。私はこの妻さんと気が合うな。ポン酢が好きな人も知っている。小さなことだけど認め合ってる。その小さな事の積み重ねが大切なんだ。ゴミ袋をどこにしまうかとか、ゴミ袋の入っていた袋をどう使うとか、一緒に暮らす上ではとっても大事なことなんだ。

 小さなすれ違いで縁が切れたと思った人たちが集って楽しそうに何気ない会話を楽しんでいる。置いて行かれた立場にある4人には戸惑いはあっても、さよならする場面では優しさと充実感に満ちていた。今後付かず離れずのいい関係が築かれていきそうな予感を残して。キーポイントはカレーだから。日常でカレーほど万能な役割担う料理ないんじゃないかと個人的には思っている。

 潮ゆくえはテレビに映った優勝力士が過去の出来事を糧にして強くなったことを知った。彼だ。どっちがどっちでもよかった。きっともう一人の彼も頑張って生きているに違いない気がした。子どもの頃の記憶から彼女の心に引っかかっていた一つが消えた。

 深雪夜々 私はあなたが一番心配なんだ。ずっと昔に失恋した自分のシチュエーションが似過ぎてて思い出してしまった。でも「愛想笑いをしなくていい、嫌なときはイヤと言えばいい」と見ててくれる人が近くにいた。愛情でも友情でも何でもいい。理解していることが重要だ。

 紅葉には見えていない場所での優しさの交換もよかった。紅葉の強がりと小さな誤解が理由で断絶してしまった高校の同級生二人が紅葉のイラストが表紙の本をそれぞれに2冊買ってきて、1冊をプレゼントしあうのだ。手元にある本は2冊で同じなのに2冊ともが大切な本に変った。もっと大人になった三人がいつか再び交差しあう日が約束されたような気がした。

 自分が思うほど他人は自分を見ていないし気にもしていない。だから自分も気にすることはしなくていいんだ。必要としてくれて必要とする人のところへ行けばいいんだ。
 好きの反対は嫌い。愛の反対は無視なんだって。だったら好きな人を一生懸命愛して、嫌いな人を無視すればいいんじゃない。そう割り切れる自分でいたらずいぶん生きやすくなるだろう。割り切れる自分になるために手助けしてくれるのが自分を必要としてくれる人なんだ。
ずいぶん回りくどくなってしまったな。

美鳥ちゃんの言葉で言うと、

みんなみたいにみんなにならなくていい。
みんなにきらわれている子なんていない。

だれかにとってはゴミになるものでも他のだれかにとっては大切なものだったりする。

 結婚したらどちらの性を名乗るとか、男女の友情が成立するかとか、どっちでもいい、人それぞれ。
だれがいちばん好きとか、いちばんすきな花を決めなくていい。
いちばんすきな花は人?いちばんすきな人は一人じゃなくていい?
大切なのはいちばんすきな花があること。いちばんすきな人がいること。

 見続けてきた人たちが幸せそうでよかった。いろいろぶつかる壁はあるに違いないけれど乗り越えてくれそうな強さを最後に見せてくれてよかった。
私の中にはいつからか傍にあったモノが二つある。
 一つは、4人の距離を縮めた4つの色のカップ、美鳥ちゃんが疎外感を覚えた4つの色のカップ、この家にまた集うことを信じて置いて行った4つの色のカップ。
 もう一つは美鳥ちゃんのすきな花として描かれたオレンジのガーベラ。
ガーベラの花言葉は「希望」「常に前進」「辛抱強さ」
オレンジ色の意味するものは「明るい気持ちにする、親しみやすいイメージを与える」
ちなみにオレンジの精油の香りは気持ちを明るくする作用があって、気持ちを上げてくれる。
色や香りってきっと生きる上での彩に必要なものなんだと思う。

 最後に繰り返すけれど4人を結び付けたきっかけは家だった。人が住むから家は生きる。家があるから人が生きる。
こんな寒い冬の日は居心地のいい家で皆が過ごせていますように。
クリスマスの日に世界中の人に家がありますように。
100パーセント当たり前じゃ無いことを承知で呟いてみる。


藤井風さんの生歌がラストに豪華な花を添えていた。

色々な姿や形に惑わされるけど
いつの日か全てがかわいく思えるさ
わたしは何になろうか
どんな色がいいかな
探しにいくよ 内なる花を
    藤井風 『花』

ビタミンカラー







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