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『いちばんすきな花』最終話の前に書いておきたいこと

 ドラマ『いちばんすきな花』があと1話で終わる。羽生結弦アイスショーRE_PRAYからの帰りの新幹線、20年ぶりに会い2日間を共に過ごした幼馴染がポツリと言った。
「『いちばんすきな花』見てる?」
「どんな話?」
「うーん、そんなことあったなって。考えるんだいろいろと。」

彼女は話を展開しなかった。だから、
「見てみるよ」
それで終わった。

 約束は果たさなきゃ。ありがたいことに今は見逃し配信をやってくれる。遡って数話見続けた。
 クライマックスが有るわけでなく、4人の会話、あるいは2人の会話がメインだった。過去の記憶を描きながら言葉が綴られる感じ。
 中心人物の実家は花屋だ。花要素はそこだけのように見えた。このタイトルを見た時SMAPの『世界に1つだけの花』を思い浮かべた。花屋が登場したので、より歌詞が思い浮かんだ。当たり前だが皆が知ってる『世界1花』の話ではない。静かに展開していくこのドラマを最終回まで見届けることになりそうだ。
 何が描かれていたか、言葉で説明するのがおっくうだったのではないかと車中の友の表情を思い出している。そうだね、そうだったね、そう思うよ、相槌を打ちながら1時間が流れて行く。透明人間の自分が5人目のキャストでそこに居るような感じだった。
 でも5人目の登場人物が現れて私は追い出されたみたい。ただこの登場人物は5人目の席に座ることを好まなかった。あとから加わることには勇気が要る。既に居る人に悪気は無くても疎外感を感じたりする。人にとって居心地はとても大事だ。彼女は4人の、一人には同級生で、一人には塾の先生で先輩で、一人には学校の先生で、一人にはいとこのお姉ちゃん、一人4役の女性だった。4役ではないな、全てが彼女を構成してる要素の1つずつだっただけのこと。
 誰でも相手によって違う自分って存在してて、会社での自分、家族の中の自分、友達同士の自分、仮面被ってるかもしれない自分、素の自分。どれも自分なんだ、きっと。

 ラスト1話にしてこんなシーンがあった。食い付いたのは私だけか?
友達でもないヤツらから友達がディスられる場面で。

「大して知らないのに黙ってろ!知らないヤツのこと知ったように言うな!」
「ヤフコメ書いてるのお前らだろ!コメンティーター気取りが!」
「バカ、バーカ、バーカ!」
「バカにも伝わる言葉ってバカぐらい!」
「(バカと) 言ったこと、後悔してません!」

 教室に入れないで廊下に佇む毎日を保健室で過ごしてる子がいる。同級生の吐く毒ある言葉と受けてコソコソ話するその他の子。聞いてその場を去る場面では、

「ネットニュースの見出しみたい」
「ウソをホントっぽく言うのが上手い」
「信じられる人はいいよね。傷つける側に回れて。傷つかなくてすむから。」
「他人の間違ってるところが好きなんだよ。間違い探しみたいに。」

 ついこの間の自分を思い出す。推しに対する理不尽な記事とヤフコメに物申した日。なに?羽生さんの記事への憤りもしかして拾ってくれた?いつこの回話が撮られたか知らないけれど、思い遣りのない言葉に皆傷ついているんだ。皆怒りたいんだ。訴えたいんだ。書いた記事私も後悔していない。

 実家の花屋で花を選んでる兄貴に「いいと思ったのをかき集めても良い花束は作れない、人間関係もいっしょ。」花屋を継いだ弟が言う。
 会社も、政治も、社会も好き同士のコミュニティでは成り立たないだろう。様々な考えが寄り集まってこその進歩もある。たとえ好き嫌いはあったとしても。
 それでもいちばん好きな花があることはきっと自分を支えてくれる。その花が持つ意味はその人の芯となり得るものなのではないかと思う。それが世界中に1つの花を咲かせるのかもしれない。
 あくまでも私の感想。視点が違うことが結構あるので緩く見てくださればうれしい。

 日本の好きなところは何?って聞かれたら、私は四季があることと答える。温暖化でそれも危うくなってきてるけれど。
最後に4人の名前を記しておく。

春木椿
潮ゆくえ
佐藤紅葉
深雪夜々

 春夏秋冬が偶然集まった。作者は意図的に集めたよね。出来過ぎがしらけるとかいう感想もあったみたいだけれど。

 椿は未だ寒さを残す春に咲く花。春の花の代名詞桜はいいとこどりで咲く、気候も、人の注目も。椿の花は一つ一つの花に存在感があって凛とした強さを感じるのに、花が枝にいることに耐え切れなくなるとポトンと落ちる。首が落ちるように捉えられて武士社会にはトンデモナイ花だったんだろうな、屋敷内に植えてはならぬ花木にされた。

 潮は海。潮の流れ。海の水の満ち引き。海のイメージは力強くナツ。

 紅葉はそのまま秋。美しくて、はかなくて、寂しくて、でも優しい。落ちた葉っぱは虫たちの家となり、植物にとっても厳しい寒さから根っこや芽出しを守るための布団になる。

 深雪もそのまま深い雪。穢れを知らない真っ白な、深く深く降り積もる、静かな静かな里の冬を思わせるような深々と降り続ける雪。豪雪の厳しささえも飲み込んで美しい。

 昔むかしもし神様がいて本当に日本を創ったとしたら、いいと思ったモノをかき集めて作ったのが四季かもしれない。四季があって日本が完成している。自分の人生だっていいと思ったモノをかき集めて創っていけたらどんなに幸せだろうと思う。



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