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本に纏わる考察(読了の興奮のままに。ネタバレ含みます。)


ヒトの本質が純度100%で抽出された物語。


ユーモア優位の解釈困難なメタファーも
物語を展開させる複雑な装置もない。
キーパーソンたちのセリフにより
伏線が回収されていき、
最後には読者の期待通りの幕引きが
用意されている。
これまでの作品すべての集大成といえるような、モラトリアルな男たちの
アドレセンスとの訣別が描かれている。


現実と非現実、意識と無意識・・・
それらは壁をはさんで存在している。
恐れるならば、壁はいつでもそこにあり続け
ヒトによっては
『魂にとっての疫病』に侵されてしまう。
つまり、現実や非現実、意識や無意識が
何らかの理由で分断されてしまうことが
精神の病的なものなのだろう。

しかし本来、
壁は自由にその形と位置を変更するものであり
恐れなければ通り抜けることもできる。

そしてヒトには、
春の野原に出た若い兎のように
あるいは自由に空を飛びゆく鳥のように
壁を意に返さない心が備わっている。
つまり、心の有り様によって
現実や意識は変容可能なものであり、
それが精神の病的なものからの
回復の鍵を握っているのだろう。

心配することはありません。自分の心の動きに素直に従っていけばいいのです。その動きを見失いさえしなければ、いろんなことはきっとうまくいきます。そしてあなたの分身がきっとあなたの復帰を強く支えてくれるはずです。

街とその不確かな壁

そう、自分の心に100%の信頼を。
答えは、it’s so simple だったのだ。
わたしは心の専門家として働いていることを
誇りに思いました。

積読にしている、あるいは挫折しそうな諸君。
物語中盤までは辛抱ぜよ。
(といっても、原稿用紙600枚分🤭)。
興味深い登場人物たちや、
春樹さんらしい表現や言葉の組合せ、
モチーフやメタファーの解釈等は、また今度。

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