まるごと旅日記1997

旅することをとおして人間と世界のありかたを解明してゆくことを目的とする

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最近の記事

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まるごと旅日記98年1月トルコ

    • アマスヤの少女(トルコ)

      トルコを旅行していたときからもう四年近くたつけれど、今でもときどきディディムから手紙が来る。  いちばん最近来た手紙によると、今年(二〇〇一年)の秋、彼女は故郷のアマスヤを離れて、黒海沿岸のトラブゾンという町の全寮制の高校に進学したということだ。  トラブゾンには私も立ち寄ったことがある。旅行者のあいだでは、スメラ修道院の遺跡への中継点として知られる大きな町だ。ただ、大きな町ではあるが、あまりにぎやかなところのない静かな町だったように記憶している。外国人のツーリストも、地中海

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        まるごと旅日記97年10月アンダルシア

        • アンダルシアの日々(スペイン)

          一九九七年十月十二日、ポルトガルの南端の町サンアントニオから、川向こうのスペインの町アヤモンテへ渡る。  空はポスターカラーの原色のブルーのような青空で、一点の陰りもない。  とても十月の太陽とは思えない真夏の太陽に茹であげられて、頭の中がぼーっとしてくる。数日前までいたリスボンとはもう完全に別世界だ。  サンアントニオの町は、日曜日だからなのか、それとも何かの祭の最中なのかは分からないが、町全体に市が立ってにぎわっている。買物客の半分くらいは、スペイン側から来ている人

        まるごと旅日記98年1月トルコ

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          まるごと旅日記97年7月

          まるごと旅日記97年7月

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          ミスター・ジョーンズ(タイ)

           PSゲストハウスのPSとは、パット・サンポーンのイニシャルから取ったものだという。 「パット・サンポーンですか。なるほど。だれかの名前みたいですね」 「先生の名前だよ」  といって、イギリス人は庭先のテーブルでノートをつけている中年の女性を指差した。  小柄で痩せぎすの女性だが、一見して非常にエネルギッシュな印象を受けた。タイの女性にしてはめずらしくてきぱきとした立ち居振舞いをする人だった。 「彼女は高校の英語の先生をしていたんだよ。だから英語はぺらぺら。私よりもうまいかも

          ミスター・ジョーンズ(タイ)

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          まるごと旅日記97年10月

          まるごと旅日記97年10月

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          ブシュランとナディア(モロッコ)

          その少女の名前はナディアといった。野性的な眼の光が印象的な少女だった。はっとするほど美しい顔立ちをしていたが、その美しさはどこか人を不安にさせる美しさだった。少なくとも家庭的な美しさではない。  彼女の足の指は長く、力強かった。その十本のみごとなオブジェは、彼女の体を奇妙に不安定な形で岩場の上に固定していた。ナディアは両足をぴんと伸ばしたまま前かがみになり、豊かな茶色い髪を振り乱して、休みなく水中で手首を動かしていた。  色とりどりの洗濯物が、気持ちよさそうに水の中でゆれ

          ブシュランとナディア(モロッコ)