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キラークライアント8 「別離」

こんな危うい関係 いや 飼い犬とご主人様か



とにかく平穏に長続きする訳もない



喧嘩や言い争いが絶えない



そして 彼も ついにブチギレした




「アクセサリーは捨ててくれ もしまだ手元にあったなら ラブレターは燃やすか 自宅のポストに返却するか とにかく合鍵と一緒に返して欲しい あれは 自分の全てだったから



この話を聴かされた時 正直ホッとした



この劇場から解放される 彼には辛いだろうが まだまだ若い 次の恋だってすぐ目の前に待っているかもしれない


暫くして



一度も使われなかった合鍵とラブレターが自宅ポストに返却されていた らしい



何でも 指輪はケースが大きくてポストに入らなかった云々の言い訳も書いてあったらしい



「まぁ、しょうがない ですね 実際入らないですから」



君はどこまで お人よしなんだ?



このトリックに気付かないのか 気づかないふりをしているだけなのか?



あえて 言わなかった いや 言えなかった



これで終わるのなら 



彼女は 絶対に指輪を捨ててはいない



単なる物欲

善意に考えれば 執着?

未練かもしれない



合鍵持ってる彼女に ポストの大きさなんて 無関係だろ ドア開ければ済むことだから



彼は 理解していない 今でもそうだろう


彼女の幸せは わがまま


彼の幸せは  このまま



これで 手離せ スッキリしろ



その後の噂



彼女は しばらくして結婚した



一方の彼は 



まぁ ヤツらしいのだが



ずっと独身を貫いている



「先生 初恋が最後の恋 って 何か粋じゃないですかぁ」



「ああ 素敵 かもなぁ」



これだけは確実に言える



男ってバカだ 滑稽だ 喜劇だ


誰かのセリフ 「男の人生なんて 女のスカートの中の劇場にしか過ぎない」



でも 神様の悪戯は 気まぐれだ



数十年後に またこの青年の相談を受けることになろうとは


さすがにウンザリした


しかし 

骨は拾うと約束もした

どーしたんだ?

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