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7/1:青い友達


noteを書くきっかけになったのは、一番付き合いの長い友達だった。
その友達とは幼稚園からの仲で、本の好みや思考のクセが似ているのでとても気が合った。
家が近所で、よくどうでもいい話を延々としながら一緒に下校した。どうでもいいけれど話したいことはたくさんあって、帰るのが名残惜しくて、ランドセルを背負ったままお互いの家を行ったり来たりしていた。
中学からは別々の学校に通い、偶然会えてもゆっくり話す時間がないことがほとんどだった。
なので、一番付き合いが長いといっても私は彼女がこれまでに何を見て何を感じてきたのかをほとんど何も知らない。最後に一緒に食事をしたのがいつだったかさえわからない。
それでも私たちはとても仲が良くて、どんなときでもあの頃と同じように話すことができるのだという底抜けの自信があった。

そんな友達と、先日初めて飲みに行った。
新しく追加された特記事項はあれど、二人ともさして変わってはいなかった。友達の社会的なラベリングは変わっていたようだったけれど、本質が変わっていないことにひどく安心したので正直どうでもよかった。


流れで日記の話になり、スマホを交換して、私は友達のnoteを、友達は私のアプリでの日記をそれぞれ読んだ。
たまたま二日前にnoteアカウントを作ったのだと話すと、「いいじゃん!書きなよ!」と明るく言われた。スキを押す目的で作ったアカウントなので何かを書くつもりは特になかったのだけれど、まんまと影響を受けてこうして筆を取っている。
私はちょろい。

友達は私の日記に共感し、集めたり考えたりしたフレーズや私の作った短歌を好きだと言ってくれた。気に入った短歌に星をつけてくれて、「少なくともこれを好きだと思う人がここに一人はいるからね」と言ってくれた。作品を褒めてもらえて嬉しかったけれど、それよりもっと単純で純粋な、感情を共有できた嬉しさの方が大きかった。

友達が「短歌見たい!」と言った時、なんのためらいもなく、これまで作った短歌全てが書いてあるメモを自分から差し出していた。
以前彼氏にも短歌を見せたことがあったが、全ての短歌なんてとても見せられなかった。
この違いはなんだろう。
友達が創作活動をしていないから、あるいはそれを私に見せていないからだろうか。


彼氏は音楽をやっている人で、サークルでの軽音活動、個人での作曲や作詞をしている。趣味として詩や日記を書くこともあるらしい。
最初は同じ「書く人」の視点から見たアドバイスが欲しくて、作品を見せて相談した。彼は的確にこちらの意図を拾ってくれるので、それに味をしめた私はそのうちただ褒めてほしくなり、相談を謳って作品を見てもらうようになった。それはただ良い出来のものを褒めて欲しいがための行動であって、出来の悪いものは見せなかった。もっとたくさん感想を聞きたい気持ちと恥ずかしさがせめぎ合っていて、「もっと見せてよ」と言われても厳選した一部しか見せられなかった。彼氏に作品を否定されたことはなく、むしろそこに込められた感情に共感し、凝らした工夫の好ましさを伝えてくれた。それでも自信のないものへの言葉が予想できなくて怖かった。
それに、彼氏への尊敬と自己肯定感の低さがそれぞれ作用して、私自身が自分の作品を否定しつつあるのが一番嫌だった。


書いていてなんとなく思う。
褒められることを望んで見せるか、共感や理解を求めて見せるかの違いなのかもしれない。

あるいは、付き合っているか否かの違い。恋愛に基づいた仲はどうしたっていつか関係性と名称が変わるし、終わりは簡単に訪れ得る。でも友達はずっと友達のままだ。
いつか来るかもしれない終わりを恐れているから彼氏には全てを曝け出せないし、終わりなんてないと確信できるから友達には躊躇わずに見せられる。そういうことかもしれない。

友達はやると決めたことに対してあまりにもまっすぐに向き合い進んでいく人なので、こちらの自己肯定感が下がりまくっている時に友達の話を聞くのは眩しすぎて辛いかもしれないな〜と思うけれど、それでもやっぱり、この友達には私の人生にいてほしいと思う。


この友達の話をするなら青色についても書かなければならない。彼女は青色を偏愛している。服もメイクも髪色も青。推しのテーマカラーも青。真っ青な格好の人を見かけたらほぼ確実に友達なので、待ち合わせの時はかなり助かっている。
こんなにものびのびと自己表現をしているのが時々羨ましくなる。名は体を表すというけれど、表しすぎじゃないだろうか。でもそのくらいでちょうどいいのかもしれない。なによりとても似合っている。「普通の服を着たいとも思うんだけど…」と言うことがあるけれど、その度に「自分が好きだと思える服を着ろ!」と強く推している。いつも全体的に青くて派手で妙に組み合わせ方が上手い友達の格好が私は結構好きなので、ぜひ辞めないでほしい。こっちはもう次会う時の服装が楽しみなので。


______________________💠BGM
逃亡 / ヨルシカ - 盗作

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