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飲み会からの帰り道、誰もいない国道沿いの道を歩きながら、一期一会だったかもしれない飲み会での出会いに想いを馳せていると、
急に僕の影が僕に語り掛ける。
「歩道から外れて5,6歩内側に踏み出せば、君は解放されるのに」
僕は言う。
「いくら僕が精神に異常をきたしていたとしても、僕はそんなことはしないし、第一それをしたら轢かれて死んでしまう」と。
影は言う。
「その通り、俺はそれを提案しているんだよ。だって考えてみておくれよ。君が仮にこのまま生きていてなんの社会に役にたつんだ。」

「役に立たないさ。でも、社会に貢献することが人生の意味ではないだろう。」
「そうだね。そうかもしれない。でも、君がこの先どんな幸せを手に入れようと時間がその幸せを壊しに行くし、仮に君がその天命までその不幸を全うしようと、結局君は死ぬんだ。別に今死のうが、あとで死のうが変わらないだろう。」

「いや、あとで死ぬのと今死ぬのでは違いがあるよ。今から生きる期間で僕は人生の意味を見つけ出してすべてを得るかもしれないじゃないか。」

「最初の20年で何もできなかった人間が何かをなせる訳がないんだ。いわば君は人間の失敗作、そこらの石ころと何も変わらない」

影が僕に毎回そういうのだが、絶対に違うと思っている。けれど段々、時の経過と共に影のいう事が僕の身に染みてくる。

車は誰も歩行者を気にしていないかのように道を駆ける。
今日も己の影に諭された誰かが車輪に踏みつぶされているのかと想うと、他人事とは思えない無力さを痛感する。

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