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3. 完全に「恋」してる。
確信に変わった日
その日は出かけていた。
でも、大切な木曜日。
配送時間の15分前にはちゃんと帰ってきた。
門扉を開けて、用意をしようと中に入った。
その瞬間、ガレージの奥に積み上げられた荷物が目に入った。
え、なに?どういうこと?
あわてて確認すると、間違いなくその日配送される商品達だった。
もう一度、時計を確認した。
やはり、まだ15分前。
なんで?
いつもの時間になり、近所の人達も集まってきたので、それをみんなでばらして分けた。
やはり、蓮は来なかった。
なんで??
がっかりが止まらない。
こんなに楽しみにしてたのに、顔が見れないの?
1週間待ったのに、なんで?
また、1週間待たないといけないなんて我慢できない。
せっかくの、逢えるチャンスがなくなった。
1回分を損した。
なんで?なんで?
がっかりを通り越して、それは怒りに変わった。
冷静に考えてみたら、さほど悪くはない。
きちんと商品は揃っていたし、冷蔵冷凍の処置もちゃんとされていた。
私だって、担当が蓮じゃなかったら、何も思わないだろう。都合で来れなかったんだなって思うだけ。
でも、どうしても我慢できなかった。
すぐに私は、その会社に電話した。
予定の時間よりかなり早く来てるようで、勝手に門扉を開けて中に入り、荷物を置いていってること。
量が多いので、梱包に使われていた箱達が邪魔なこと。来週まで、保管しておかないといけないのか?何の連絡もないし、勝手にそんなことされるのは困ると。
まるでクレーマーだな、私。
本当は、たいして邪魔でもないし、別に困ったわけではない。
ただ、蓮に会えなかった。
それだけを怒ってるだけ。
でも、そんなこと、言えない。
「とにかく、1度、担当の方から連絡頂きたいのですが。」
きつい口調で言った。
『分かりました。必ず、電話させますので少しお待ちください。』
少し、ホッとした。
よかった。
とりあえずこれで、蓮の声は聞ける。
よかった。
それからは、電話をひたすら待った。
うきうき、そわそわと。
そして、自分で悟った。
確実に、私、おかしくなってる。
もう、これは、憧れを越えてる。
もう、自分を押さえきれなくなってる。
完全に「恋」してる。
ぎゅっと胸の奥が痛くなった。
「嬉しい」だけで溢れてた気持ちの中に、
なんとも言えない苦しみが混じるようになった。
想定外の電話
約束どおり、電話がかかってきた。
蓮だ!
電話を通すと、声の感じが少しちがう。
内容より、声のトーン話し方笑い方に聞き入ってしまう。
そもそも、別に怒ってないしね。
でも、置きっぱなしになってる箱達を回収に来てほしいとは、お願いした。
表向きは、夫に怒られるから。
でも、本心は、顔が見たいから。
1回、逢えなかった分を取り戻したい。
そんなこんなのやりとりをしていたら、
蓮が、想定外のことを言い出した。
今後、何かあった時は、事務所ではなく直接、自分に電話をしてほしいと。
つまり、担当者に対してのクレームを事務所にかけられると、その担当者の成績に影響するらしい。
え?それは困る。そんなつもりはなかった。
「ごめんなさい。」私は、謝った。
『いえいえ、全然大丈夫なんですけど、むしろ、こんなこと頼む方が申し訳ない。』
そう言って、いとも簡単に蓮は、個人の携帯番号を教えてくれた。
もちろん理由は彼自身の保身の為。
でも、あまりに簡単に彼の携帯番号を知ることができて、とまどってしまった。
その様子を誤解したのか
『あ、もちろん、あこさんだけじゃないですよ!他の組合員さんで何人かには教えてますから。だから変な意味は全くないですから。』
なんか焦ってる感じが、おかしかった。
「じゃあ、私も昼間はいつも出掛けているので、今回のような事があった時は、私も携帯に、連絡ください。」
こうやって、お互いの個人の携帯番号を交換した。
あまりの想定外に、電話を切ってからも、しばらく動けなかった。
大阪に出てきてからは、人様に言えるような生き方をしていなかったので、
昔の交遊関係は、夫と結婚する時にすべて断った。
私の携帯には、唯一の親友と、前の会社の主任くらいしか入っていない。
あとは、すべて、身内と幼稚園と習い事関係のみ。
もちろん、男友達なんているわけもない。
私の携帯に、初めて、夫以外の男性の電話番号が登録された。
それだけで、すごい秘密を抱えた気がして、ドキドキした。
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