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【散文詩】半自動筆記に依る夜想曲(12)-3<完>:『メルキゼェデクとイスマイールとバラモン』-3<完>

 私は虚無に嫉妬して居た。私自身が空でも無でも無い事を僻み、
激しく嫉妬した。仮に、虚無に限り無く近似はし得ても、決して虚無そのものにはなれない・・・・・・・・・・・・・・・事に、悲しくて幾晩も枕を濡らした。
 胸を切り裂く様な嫉妬の嵐が通り過ぎると、私の心を虚脱と絶望が覆いつくした。戸外では、青と赤が相も変わらず、
何時もの様に鬩ぎ合いを続けて居る。
 其れはまるで此の地域一帯に纏わり付く石炭の煙と爛れた霧雨の様に何時迄も絶える事の無い円環の理を成し、万象を輪廻の軛に縛り付けて居た。
 私は、全てが嫌になった。存在其の物・・・・・で在る事が嫌に為った。私は、己を括ろうとした。私は、縄で自分を括ろうとした。しかし私の目の前には、結んだ縄の輪が永劫に回帰して、居た。

<了>

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