ショートショート30「村のお稲荷様」
やっと夏休みに入ったと思ったら、もう秋の気配だ。
その証拠に田んぼは黄金に色づき始め、赤トンボが飛んでいる。
正直言ってまだ遊び惚けたい。もう少し夏が長くなればいいのに。
そんな事を思っていると「もう夏は終わり」と言うかの如く山から狐が降りて来てた。
この狐は秋が近づくと田んぼの小さな社にやってくる。
神様の使いだとか、秋の化身だとか、色々言われていて村の皆は手を合わせ供物を差し出す。
商売繫盛、屋内安全から厄除け、農作祈願、この村は何から何まで神頼みだ。
そういえば去年、先輩が彼女ができるようにと頼み込んだらしい。
狐につままれるんじゃないかって思うよ。
神様も人の欲を聞いてばかりで嫌にならないのだろうか。
すると、狐は萌黄色の目を俺に向け答えた。
「油揚げ10年分で手を打ってやったぞ」
油揚げ目的か。
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