見出し画像

(毎週ショートショートnote参加作品)株式会社"のおと"

加奈子は髪をかき上げ、看板を見上げた。
「株式会社 “の音”」
興味を惹かれた加奈子が店に入ると、昔ながらのカセットテープがいくつも置かれていた。

「夏祭りの音」
「打ち上げ花火の音」

なるほど。だから”の音”なのか。
変に納得した加奈子はふと一つのテープに目を止めた。

「かの音」

加奈子はそれを手にしてレジにいた老人にお金を払うと、老人は加奈子にニヤリと笑いかけてきた。

加奈子は家に帰り、テープを再生した。しかし、何も聞こえてこない。
ちぇ。不良品か。
しばらくしても何も聞こえてこず、加奈子はいつの間にか眠ってしまった。

深夜。
包丁を持った男が部屋に入ろうとした時、高い音が聞こえてきた。
玄関のドアを開けた瞬間、音はますます大きく聞こえ、不愉快さに我慢できなくなった若い男はそのまま逃げるようにして出ていった。

翌朝、加奈子はラジカセを見た。
ああ、再生したまま眠ってしまったのか。
ベッド脇に置いた老眼鏡を掛け、加奈子は停止ボタンを押した。

=======================

(410字)

たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
いつもありがとうございます☆

参考: https://www.skklab.com/archives/6484#i

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?