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はじめてのブルベ 200km


はじめに

  1. ブルベができる環境に感謝

    10年くらい前、初めてロードバイクを買った頃の情報源はインターネットのブログ記事だった。当時はネットであればFaceBook、ネット記事であればブログ記事が主流だった。(今ならインスタとnote?)長距離を自転車で走破する、というのはロードバイクの醍醐味であり、自分にとって憧れであった。しかし、3人の子どもを持つ父親として、上はまだ小学生、下はまだ3歳という状態で家を長時間空けるブルベや、そのトレーニングをするには無理があった。しかも、学校の教員という立場だと、週休日の土日は必ず部活が入ってしまうため、テスト前の部活動停止期間など、ほんのわずかな休みというのは、家族のために使うべきもので、自分のレジャーのために使うものではなかった。だから、ヒルクライムなど、短時間で充実感の得られる活動がメインだったのである。(幸い群馬県は、右を見ても左を見ても山ばかり。ヒルクライムレースもあちこちでやっていた)

    そんな時代も過ぎ、今1番下の娘がいよいよ中学1年になった。部活指導や、真ん中の子の送り迎えなど、それなりにやることは多いが、ようやく長時間のライドを楽しめる時期が到来したのである。

  2. なぜブルベに出るのか

    なぜブルベに出るのか? それは長距離ライドへの憧れ。そしてそれを形として残したいという気持ちがあったからだ。200km程度であれば、実際普段のライドでそれ以上乗るという人も多いかもしれない。だが、ブルベは考え抜かれたコースが設定され、それに基づいて走るというオリエンテーリング的な楽しさがあるため、事前準備が楽しそうだったのである。

準備

  1. 出場するブルベの選択
    地元開催のものにすることは決めていた。長距離ライドで、しかも移動まで加わると色々面倒だからだ。幸いAJ群馬さんの企画は「よしもと温泉」出発が多く、そこは家から車で10分ほどだった。

    200km 13時間30分
    300km 20時間
    400km 27時間

    このように、ブルベでは距離と制限時間が定められているが、家族(妻)の理解を得られるのは、どう考えても200kmまでだろう。20時間となると、常人の理解を超えてしまう。私が出場するのは、今回も、おそらく今後も200kmまでだろう。200kmまでなら「普通の人」だ、多分。

  2. バイクと追加装備
    私のバイクはCAAD10というアルミフレームのバイクである。ホイールはdura-aceのc24というやや軽いものにしてあるので負担感はさほどない。ブルベをするにあたり、ベルと反射ベストを追加購入した。トップチューブにつけるバッグなども検討したが、私の場合はトライアスロンがメインで、そちらにお金は投資したかったので、手持ちのリュックで対応し、出費はなるべくしないようにした。(リュックで参加するランドナーは少数である)

  3. 練習
    これといった特別な練習はしておらず、むしろ膝の怪我で練習できない期間の方が長かった。ブルベという特徴を考えると、なるべく負荷のないライドで、休憩も適度にはさみつつ、最後まで走り切るというスタンスで良いと考えていた。6月上旬のブルベだったので、これで痛みが出ないようであれば、月末のトライアスロンは問題ないはずである。

  4. ルートの調査
    ブルベでは「キューシート」と呼ばれる地点ごとの指示が書かれたリストがエクセルで提示され、その通りに走らなければならない。かつて私が使っていたgarmin edge510であれば、ラップ距離ごとに確認して進むという選択肢のみだっただろう。実際、キューシートを加工し、小さなノートにすべて書き留めた。わかりにくいところについては、google mapの「ストリートビュー」で現場の様子を確認するなど事前に準備を入念に行った。おそらく、こういう準備が、個人ライドとブルベの違いであり、楽しみなのではないかと思う。 あとは、スマートウオッチ garmin epixでも、garmin connectで事前に作成されたルートが読み込めるようだったので、(小さくて画面は参考程度だが)、一応取り込んでおいた。

データは2022のものを使用。 Garmin Connectより

当日の様子

最初に断っておくと、あまり写真はない。2回目以降であれば写真を撮る余裕もあったろうが、今回はとにかく走り切るということばかりで、ライド中に記念撮影というレベルではなかったのである。

出発まで
車で10分の距離の集合場所まで、車載で行った。帰りに疲れ果てていたら、と考えたからだ。行ってみると富士山ナンバー、品川ナンバー、千葉ナンバーと県外ナンバーが山ほど。なるほど、みなさん県外からわざわざいらっしゃっているのか。それに比べ私は地元 5kmくらいのところから車載でごめんなさい。ブルベなどという一見マイナーと思われるイベントで、しかも田舎の日帰り温泉に県外ナンバーが連なるという奇妙な光景に驚いた。事前説明の後、合図が鳴って出発かと思いきや、車両チェックが終わった人たちは次々と出発しているではないか。そういう感じなの? すこし出遅れた感があるものの、他の人たちについて行きながら地元の道を進みはじめた。


出発前の様子。 よく見ると前の人は出走している。
  1. 前橋〜桐生
    前橋から桐生までは、調べるまでもなく知っている道のりだったため何の心配もなかった。事前に設定しておいたガーミンの時計は、右折時には 70m先右折、などとアラーム音と画面表示が出るではないか。腕だから見にくいが、これなら何の心配もない。事前に調べたノートはほぼ無用の長物と化した。以前読んでいたブログの記事では、ブルベは途中から人と人の間隔が長くなり、一人旅になる、という情報を得ていたが、開始30kmまでは前にも後ろにも参加者がいて、グループライドのような楽しさがあった。私は常にソロなので、手信号を使ったことがあまりなく、他の方の手信号を真似しながら学習することができた。

  1. 桐生の山
    このコースには、山と呼べるほどの山はなく、300mくらいしか登らない。300mと言えば、我が家の裏の坂を登るご近所コース練習が150mくらいの坂なので、それを2周程度。なんてことはない。しかし、山といえばコンビニもないだろうと思い、一人グループを離脱し、コンビニで補給を行った。疲れていなくても1時間から1時間半以内ごとに休憩しようとあらかじめ決めていたからである。そして、念願の(?)ソロ。山は比較的得意なので、結局追いついてしまったが、登りというのはやはり苦手な人が多いようである。私は逆に平坦になると一気に抜かれることが多い。女性にも抜かれてしまう。カーボンなら少しは違うのだろうか?それは買ってみないとわからない。そのように、機材の違いのせいにしながらライドを進めていくと、いつの間にか栃木県に入った。いよいよブルベっぽくなってきた。(普段の知っている道じゃ、ちょっとね…。)

  2. 栃木〜PC1(千葉県)
    栃木は山の下りで始まった。途中、なんとなく危なっかしい降り方をするライダーの方がいたので、ちょっとスピードを上げてかわした。そこからは延々と下り。手が痺れるほど下った。30分ほど下ったところで、例の休憩タイムと思い、セブンイレブンへ。すると、さきほど追い抜いた方も休憩に入ったようだ。話をしてみると、埼玉県から来た人で、同じように地図を読み込んだがうまくいかず、道に迷って困っていたらしい。そこで私についてきた、ということだった。それじゃあ、途中まで一緒に行きますか、ということで私が先導することになった。佐野市に入るとやはりブルベの参加者が列をなすようになり、グループライドと化した。ブルベって、こんなによく連なるもんなんだ・・・。これもブルベに参加してわかったことである。渡良瀬遊水地からは、渡良瀬川のサイクリングロードを通るルートになっており、途中何かのトライアスロンレースを横切りつつ淡々と進むこととなった。わかってはいたが休憩地点がない!そして、後ろの人を引いている都合上、あまり遅くも走れない。そういう点で、少し無理をしてしまった。本来なら、長いサイクリングロードに入る手前でもう一回休んでおけばよかったのである。それを「引いている」という意識で休まず漕いだものだから、一気に疲労感が増してしまった。あと10キロ、あと5キロでPC1だ、などとあと少しだから休憩なしで・・・は無駄に体力を蝕むと痛感した。しかも、悪いことにここで気がついたら後ろの人は見えなくなっていた。おそらく疲れて休憩したのだろう。であれば先に休憩という選択肢を選んであげればよかった。せっかく会話できた人だったのに。

  3. PC1(千葉)-PC2(埼玉)
    いよいよPC1に到着した。千葉と言っても先端部分だが、それでも随分遠くにやってきたものだ。進路は相変わらずスマートウオッチが教えてくれる。小さいのに役立つ時計だ。ちなみにサイクルコンピュータは安い中華製のもので、そういう役には立たない。速度とパワー値がわかればいいくらいに考えている。とにかく、ここは折り返し地点だから、あとは帰るだけである。目標は8割程度達成できたと言えるだろう。休憩地点では、コンビニ昼食を含めて30分と決めて休憩した。補給し、家族に安全の連絡などをしていたら、30分は恐ろしいほどあっという間に終わった。

    前半の反省を踏まえ、後半はちゃんと休みながら帰ることに決めた。完全にソロとなってしまったが、道は時計が教えてくれるし、コンビニはところどころあるしで問題はないだろう。ところが、である。動き出して20分くらいのところで右太ももが攣ってしまったのである。太ももが攣ると、こんなに痛いのか。これはもう漕げるレベルではない。なんとか自転車から降り、ストレッチを行った。まだ折り返し地点なのに、この様子では途中リタイアもありえるか・・・。そんなことも頭をよぎった。予備で持ってきたものと言えば、輪行袋、予備のチューブ2本、一応タイヤも一本買っておいた(以前のライドでパンクがタイヤにまで影響したことがあったため)。 そんなときに、これは電解質の不足ではないか?と勝手に想像した。汗が大量に出ているのに、あまり塩分を補給していないから…。近くの自動販売機でスポーツドリンクを一本買い、コンビニで塩ラムネを買って補給した。そこからゆっくりと漕ぎ始める。すると痛みは出ずになんとか進むことができた。暑い日の長距離ライドでは、出る汗のことも考えておかなくてはいけない。スポーツをする人なら誰でも思いつくことを、今更ながら痛感した後半スタートだった。そこから、だんだんペースが上がってきて、ついに群馬県にもどってきた。地元の山が見えるとこんなにも人は安心感を覚えるものなのか。山って不思議な存在感があるな。

  4. ゴール
    PC2からゴールまでは、いつも練習で使う利根川自転車道なので、まったく新鮮さはなかった。ペースの落ちた脚で、淡々と戻っていく。そしてそのサイクリングロードの先にゴールが待っていた。さすがに「はじめてのブルベ」というだけあって、後半1/4がサイクリングロード。ランドナーが疲れていても、事故に遭わないよう工夫されていると感じた。ゴール後は、軽い軽食が用意されていたが、疲れていたので、いただいたよしおか温泉の無料券で温泉休憩。なんというか、最高である。11時間程度自転車に乗ってからの温泉。これでビールでも飲んだら、寝てしまうかもしれない。


千葉県入り。群馬ー栃木ー茨城ー千葉と4県目に入るとさすがに感動。

まとめ

  1. ブルベがトライアスロンの練習になったか?
    それはなんとも言えない。長距離を安定した速度で巡航しただけなので、少なくともオリンピックディスタンスのトレーニングになならなかった。しかし、ロングまで考えた時、200キロを走ることができた、というのは経験としてはマストであったと言える。なにしろ180キロ自転車を漕いだあとに、フルマラソンを行うわけだ。今の自分で考えてみると、間違いなく不可能である。ゴールをした後の感触は、「もう動きたくない。」もうすこし体力がついてこないと無理だろう。しかし、こういう距離を何回かすれば、ミドルくらいは見えてくるかもしれない。

  2. 怪我の痛みはどうだったか?
    膝の痛みはなかった。2月に苦しんだ痛みはある程度克服できたと言えるだろう。ただし、1月のフルマラソンの時は、後のケアを怠ったために炎症を起こしたと言えなくもないため、長距離ライドの後のケアをキチンとしていきたい。

  3. ブルベを振り返ってどうだったか?
    まず、ルートがすばらしかった。一般道がほとんどだったが、ちゃんと自転車が走っても邪魔にならないような道が選ばれており、さすがに工夫されている。このルートでまた走ってみたい。時期も6月上旬で、年間最も日が長く、台風の後とはいえ、晴れの日だったのでコンディションも最高だった。200km以上のブルベは望んでいないので、200kmをいつ、どこで走るか、というふうにブルベを選べば他県も見えてくるのだろう。今回ブルベで他県から来た人も、時期や距離で選らんだ結果そうなったと、終わった今はわかる。

  4. これからブルベに参加しようと思っている人へ
    ブルベについて、1番楽しかったのは、事前準備だと思います。これでもかというくらい入念に準備して、それが思い通り進む楽しさや、予定外のことに対してどう対応するのかという楽しさを味わう楽しさが醍醐味だと感じました。私は結果としてスマートウオッチのルート設定が全部教えてくれましたが、それでも行ったことのない道の交差点が、ストリートビューで見覚えがあったりすると、随分と安心しました。私は、帰りの温泉の準備まで終わって、初めて準備完了だと思っていたので、そこまで準備してそれを予定通り楽しめたときは達成感を得ることができました。

    あと、自分がどれだけ苦しい思いをしたとしても、その時間の間、家族(妻)は家族の面倒を見てくれているわけです。そういう人に対して感謝の言葉を忘れずに、できれば少しでもいいからお土産を買っていくと良いと思います。



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