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【社会人留学】メルボルン大学大学院・卒業生インタビュー

こんにちは^^
今回は、キャンパスで出会った素敵な日本人の友人、Tちゃんへのインタビュー記事となります。

Tちゃんは先学期で修士課程を修了し、帰国されました。大学院での専攻も、入学時期も異なる私たちは、中国出身の共通の友人を通じて出会いました。美味しい食事をしながら、さまざまなトピックについて語らうなかで、私は、Tちゃんの広い視野、物事の捉え方、それを的確に表現する明晰さに心からの刺激を受けました。そして、Tちゃんがどのような留学生活を過ごしたのか、学生とビジネスパーソンの違いをどう感じているか、社会人経験を持って留学をすることの価値について、留学を終えた今どのように振り返るのか、聞いてみたいと思ったのです。おかげさまで、noteの総閲覧回数は約3500回となりました。(読んで下さっているみなさま、本当にありがとうございます。) そこで、Tちゃんのユニークな経験談を独り占めするのではなく、私のnoteを見て頂いている皆さんにもシェアすることを許可いただきました!


1.インタビュー

ココ(以下K):Tちゃん、今日はインタビューの機会をくれてありがとう。そしてご卒業おめでとう!早速ですが、Tちゃんは、留学前、大手メディアで勤務されていたわけだけど、その経験を持って留学したことの価値についてどう考えますか。

T:ありがとうございます!やりたいこと・やりたくないこと、向き・不向きを自己認識するのに良い機会でした。色々な人と会ったり、話したり、文章を書いたりするのが好きだったことから、ジャーナリズムは向いていると思っていたけれど、趣味でもいいかもしれないなと。仕事としては別の分野を追及したいと思うようになりました。

K:留学生活を通じて、歩んできたキャリアに対する見方が変わったんだね。仕事を一時中断して留学することに不安はありませんでしたか。

T:そうですね。日本で培ったキャリアを手放さなければならず犠牲は大きかったですが、もともと海外大学院で修士号を取りたいと考えていましたし、仕事で携わってきたメディアをアカデミックな視点から見てみたいと思っていました。せっかく会社をやめてまでして来ているからこそ、学びは投資と考えて、真剣に勉強していました。

K:学びは投資、共感します。卒業後の仕事の選択肢もきっと拡がるし、濃密な人生経験を得られることも留学の価値だと感じます。授業はどうでしたか。

T:私はメディアを専攻し、さまざまな理論を学びました。前職での実践経験があったからこそ、理論が机上の空論にならず、実践と繋がる面白さを体感しました。自分のしていた仕事は理論体系のどこにフィットするのか、客観的に捉えることができました。実践経験があると、知識の身に着き方が深まると思います。

K:実践と理論を行き来できるのは面白いよね!Tちゃんは、帰国後、異業種で新たな挑戦をするんだよね。ものすごい競争を勝ち抜いて得たドリームジョブ、おめでとう。メディア業界を離れるわけだけど、大学院での学びは今後のキャリアにどのように活かせそうですか。

T:ありがとうございます。不安もありますが、より一層成長できるように日本でも頑張ります!ファクトチェックをする習慣や、どんな情報にもバイアスが存在する事を実践経験、そして学問的見地から理解していることを強みにしたいです。情報収集の仕方も工夫するようになりました。

Tちゃんのフェアウェルディナー@超人気のビストロ
お手紙交換も嬉しかった❤

K:Tちゃんの今後のご活躍が楽しみです!留学生活を経て、自分で変化したと思う事、周りから言われる事などはありましたか。

T:「イキイキしてるね」「楽しそうだね」とよく言われるようになりました。たぶん、日本でよくある属性によるカテゴリー分け、ステレオタイプ的な物の見方から解放されたのも理由の一つかなと思います。オーストラリアは移民国家で、特にメルボルンは国籍の多様性が高い都市です。“みんな違う”ことが前提であり、価値観もさまざまです。たとえば学歴や会社名など、表面的な属性で価値づけされることがあまりないように感じました。

K:私もメルボルンに来て、自分の知っているグローバルとは狭く、限定的だったのだと気づかされました。それほど、多様でいろいろな価値観にまみれているよね。

T:ジェンダーに関してもセンシティブで、授業の自己紹介で、He/Sheのいずれかで呼んでくださいと言われることもよくありましたし、鳥をHeと表現した友人に対して、「あの鳥をオスだと思っているの?」と聞く友人もいました。

K:ジェンダーに関する発言は慎重さが求められるよね。鳥の話は、私も無意識的にHeとかSheとか言ってしまいそうだから、ドキッとしました。そういえば、Tちゃんは寮に住んでいたんだよね。寮生活で印象的だったことはありますか。

T:ミャンマー出身の友人の実家が差し押さえられ、家具も壊され、家族とも電話ができない状態になってしまったとき、「All the best!」では済みませんし、本当にかける言葉がありませんでした。自分にとって、多くの日本人にとっての当たり前は当たり前ではないことを痛感させられました。また、国際機関による援助がいかに限定的か、西洋スタンダードが機能不全に陥っている現実を知りました。

K:・・・お話を聞いて胸がいたみます。メルボルンは、まるで世界の縮図のようだね。世界情勢について、とても他人事とは思えない距離で感じられるというか。刺激的な日々を過ごしているとストレスも少なくなかったのではと思うけど、どんなふうにストレスを発散していましたか。

T:毎日、日記を書いていました。その日の出来事を客観的に見つめなおし、気持ちの整理をするのに良かったと思います。

K:私も日記をつけています。留学生活は、出会いや感情を揺さぶる出来事の連続で濃密な日々なので、振り返り甲斐があるよね。私は、経験から学ぶことをモットーにしているのだけど、こちらに来てから色々ありすぎて、本当に経験学習がはかどる。(笑)Tちゃんは、どんなことを日記に書いているの?言語は日本語?それとも英語?

T:なるべくネガティブなことは書かないようにしていました。一見マイナスに思える出来事も、エクササイズだと思って、ポジティブに転換していました。ネガティブなことを書くと、思考がネガティブになりそうだったので。(笑)振り返ってみると、友達への感謝の気持ちを多く書いていたように思います。最近は、英語で書いています。

K:お友達への感謝の気持ちであふれる日記、素敵だね。日記のほかにも、何かよいストレスコーピングがあればおしえてください。私自身、結構ストレスが溜まってしまうので(涙)

T:留学当初、寮のコミュニティーに中々入れず悩んだ時や、就活のプレッシャーで大変だった時など、寮のカウンセラーに話を聞いてもらいました。頭の中を整理しやすいような問いを投げかけてくれたのが良かったです。カウンセラーと話すうちに、自分に厳しくなりすぎていることに気づかされました。特にハッとさせられたのは、「What’s the worst thing that could happen? (最悪、何が起こるというの?)」という問いかけです。結局、考え得る最悪のケースはけして最悪でもないとわかり、肩の力が抜け、視界がひらけました。友達と話すのもよい気分転換になりましたし、親が口を挟まずに愚痴を聞いてくれるのも助かりました。いろいろな人と交わる大切さを実感しました。

K:信頼する人に話を聞いてもらうのは癒されるよね。いろいろな人と交わる大切さ、まさに人生はチーム戦ですね。カウンセリング機能は日本と比べてとても充実しているよね。大学が、“Look after your well-being as your first priority (心身の健康を最優先に)”を標榜しているのが好きだなぁ。ところで、学生とビジネスパーソンの違いについて、どう考えますか。

T:学生は、自分が責任主体。日々の時間の使い方から意思決定まですべて自己責任で、それが成績に反映される一方で、仕事では自分に主導権はなく、主語が自分以外というのが違いでしょうか。

K:そうだね、学生の今、自由と責任が表裏一体であることを強く自覚しています。仕事は、私の場合、それなりのキャリアを積んでいたことも影響してか、わりと自分に裁量があってスケジュールも柔軟に組めたりできたのだけど、Tちゃんは会社都合で動くことが多かった?

T:そうですね。学生とビジネスパーソンをそれぞれ一括りにして一概に語るのは難しいと思いました。学生の場合、たとえばLaw schoolは、plagiarism(語句や文章の盗作、誤った引用)は他学部以上に厳格といいますし、ココさんの所属するビジネススクールはグループ課題がたくさんあって本当に大変そうですよね。仕事も、業界、会社、職種、働き方によって受けるストレスは違うのだろうと思います。前職は日々起こる変化が激しかったです。私は、究極、学生は気楽だなと思うのですが、ビザの制約や、就職活動含め将来に対する不安など、学生(留学生)特有のストレスは非常に大きいと思います。

K:聞かせてくれてありがとう。最後に、オーストラリア、メルボルンへの愛を叫んでいただきながら、締めていければと思います。

T:留学生活を振り返ったとき、まず思い出すのは、さまざまな美しい景色です。留学中は色々な都市を旅行しました。特に、ウルル、タスマニアのポートアーサーが強く心に残っています。ケアンズでのシュノーケリング、パースの大自然に、アデレードのワイナリーなど、行く先々で異なる経験をしました。どの都市にもユニークな魅力がありましたが、住むならメルボルンが一番です!天候は不安定ですが、現代的な建築から歴史を感じるエリア、大自然に至るまで観光名所がたくさんありますし、公共交通機関も充実しています。多国籍であり様々なカルチャーが交じり合っているのも居心地が良いですね。

K:Tちゃんの旅行記を聞いて、私もどこかへ旅行に行きたくなりました!Tちゃん、帰国前の忙しいところインタビューに協力してくれてありがとう。帰国後のますますのご活躍を願い、応援しています!

ウィスキー樽で造った白ワイン、美味しかったねぇ。

2.インタビューを終えて、ココ所感

帰国を目前に控えたTちゃんの充実感あふれる表情がとても素敵でした。そして奇しくも、インタビュー中(@市内のカフェ)、Tちゃんが印象的だったという科目の教授が通りすがり、Tちゃんが今後のキャリアについて話すと、教授から「ぜひ、私の授業にゲストスピーカーとして参加して欲しい!」というオファーが。プロフェッショナルコネクションを拡げられるのも、大学院の良いところですね。

異業界、異業種への転向も、優秀なTちゃんのさらなる努力があってこそですが、社会人留学がもたらすひとつのチャンスだと感じました。オーストラリアと日本の時差は1時間(サマータイム時は2時間)ですし、またコロナ禍を経てリモート面接が通常の選択肢になっていることから在日本企業との面接も比較的スムーズそうです。

社会心理学者Lewin, K.(クルト=レヴィン)が残した「よい理論ほど実践的なものはない」という金言(といわれていますが、私はまだその主旨を完全に掴み切れていません)があります。理論を学びながら実践経験を振り返ることで、その金言の意味することの解像度が高まったような気がしています。理論と実践を行き来できることが、社会人留学で実感する面白さであり、価値であると感じました。

またTちゃんも私もメルボルンが大好きなのですが、それほど心惹かれる都市に出合えたのは本当に幸運だったと感じています。

3.Tちゃんの転職活動(メディア→外資系戦略コンサル)

転職については、「これをやったから成功した!」というよりも、とにかくできることをがむしゃらにやっていたら結果的に拾っていただけたなという感想です…

あくまでも私個人の経験談ですが、ざっくり以下の流れで転職活動は進みました。思った以上に怒涛だったので、情報収集と面接などの準備を抜かりなく早め早めにすることが重要かなと感じました。

①留学開始~卒業1年前:当初は「オーストラリアで就職したい」と思っていたが、ビザをはじめ様々な不利な点を知り、現実を受け入れ始める。日本での転職に向け情報をぼんやり集めておく。

②卒業1年前~半年前:転職活動が卒業半年前に本格化することを見据え、その時の学業負担を軽くするために一旦学業に専念する。取れる科目は取っておく&最終的な平均点を稼ぐために各科目できる限り高得点を狙う。転職については、「エージェント登録とコミュニケーション」「受ける業界の決定とその業界の概要の把握」「卒業後すぐの転職に向けてのスケジュール確認」の3点を行う。

③卒業半年前~3か月前:転職活動に専念。学業は最低限。筆記試験(SPIや玉手箱)対策、一般面接対策、ケース面接対策、そしてそれらの本番と、怒涛のスケジュールでした。特に一般・ケースの面接対策はもっと前から少しずつ取り組んでいたほうが楽だっただろうなと、今振り返ると感じます。

④卒業3か月前~卒業:転職先が決まって一安心。しかしすぐに各科目の最終課題に追われる日々に。同時に帰国も近づくため、オーストラリアの友人とのキャッチアップやオーストラリア旅行を満喫する。

なお、未経験で外資コンサルに転職する場合、それまでの経験にはあまり重きを置かれません。そのため、面接で留学の話を深掘りされることはありませんでした。唯一向こうが気にすることが多かったのは、「新卒時の就職→留学→転職」の一連の流れにおける一貫性、または途中で方向転換があった場合は、そこに筋が通った理由があるかどうか、という点でした。

私は「前職メディア→留学での専攻もメディア→転職先はコンサル」と一見不思議な方向転換だったため、土台にある自身の一貫性(人と関わりたい・色々な業界を見たい・海外への興味、など)を簡潔に理論立てて説明できるように気をつけていました。

私の次のキャリアにおいて、海外修士は特に必要ではないはずです。ただ、世界の優秀な方々がいるフィールドに出ていく、という将来的な可能性を考慮すると、修士号は持っているに越したことはないのではないかと想像しています。また、他言語でのコミュニケーション力、異文化理解力や適応力などは、私が志すキャリアでは重要な能力だと考えます。これらは日本に留まるよりも海外に滞在した方が養いやすいと思うので、そういった意味でも海外修士は糧になったと感謝しています。

Tちゃん、貴重な体験談の共有、本当にありがとうございました!


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