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映画『めがね』/鎧を脱いだ、素のじぶんで。

人は、何かを手放すには
強烈な体験が必要なのかもしれない。

それくらい、みんな
色々大事に抱えて生きていて

でもほんとは必要なものなんて少ししかなくて。

ほんとはバッグひとつで
軽やかに生きられたら。


欲張りで、たくさんのものを
なかなか手放せない自分へのメッセージのような、
タイムリーに観たこの映画。

『めがね』


ユーモラスで、エキセントリックなんだけど
優しくてあったかくて
慈愛にあふれてる
そんな人、そんな場所、の映画。

そんな場所に、2時間身を置くうちに
すっかりとりこになって
あれ、もしかしてまたこの場所に来たいかも?と思ってしまう、不思議な場所が描かれます。

いや、言っときますけど、、
この映画、かなりシュールです。
シュールなものが大好物な私でも、
ちょっとひくぐらいシュール。

なのに、なんだかほんと
いいんですよね。

以下、ネタバレになってしまうので
映画をこれからご覧になりたい方は、ここまでで。


あるキャリアウーマンらしき女性(たえこさん)が
離島に飛行機で降り立つところから物語が始まります。

たどり着いたのは不思議なお宿。
このお宿が、、清潔で、それこそ海外の安いB&B的な雰囲気ではあるのですが、
来るなり早々に「みんなで一緒にご飯を食べましょう!」とかいわれちゃって、せっかく一人で休みに来たのに、ちょっと面倒な関わりを求められるお宿。

戸惑い、拒否しつづけるたえこ。

だってちょっと変な人たちだし、
知らない人達だし
嫌ですよね、、、

ですが、たえこもたえこで、かたくなで。
全てすすめられるものを拒否し続ける。
スーパー頑固。

決して譲らず、
こんな宿やだ!となり、出ていくのですが、

結局どこにも行く場所がないことを悟り
また宿に戻ってきて
宿のみなさんとの関わりの中で
だんだん穏やかな時間が流れていきます。


象徴的なシーンがある。

宿のシンボルでマドンナ的な女性(さくらさん)が
道で途方にくれたたえこを自転車で迎えに来てくれるシーン。

さくらさんは、何も言わない。

だけど
「(自転車に)  のってけ。」
「それ(荷物)は、置いてけ。」

というその二言を全身で発していて。

ずっと引きずってきた
重い重いスーツケースを置いて
彼女の自転車の荷台に身一つで乗せてもらう。

それは、
今まで大事に持ってきた
スーツケースの中の服やら化粧品やらドライヤーやら本やらだったかもしれないし、
仕事や見栄や気が重くなる人間関係のような
有形無形の重荷の象徴だったかもしれず

それをすべて手放しても
そのまんまのあなたで、大丈夫。
というメタファーのように感じた。

足が棒のように疲れ切った彼女にとって
さくらさんの自転車の荷台の乗り心地は
どれほど軽やかだっただろう。


さくらさんのつくる、かき氷。
ことこと煮た甘いあずきの上に、シャリシャリふわふわの氷、
やさしいあまさのシロップをかけて。
みんなでだまってしゃりしゃりいただく。
美味しそうだなぁ。食べたいなぁ。
自分なら、さくらさんへのお礼は何にしようかな。

バーベキューのお肉も柔らかくて美味しそう。

海辺でたそがれ、気持ちよさそうだったな。

メルシーなんちゃら、強烈だったな。
でも色々緩まりそうだな。

さくらさんオセロ弱すぎるな。かわいい。

観ながら自分も一緒に泊まってるような
ゆったりとした時間を味わう。


最後、必要なものすらも手放してしまうたえこの、
軽やかで柔らかな表情が印象的。

わたしもここ、泊まりに行ったほうがいいかな。
・・・いや、でも、朝起きるのがこわすぎるなぁ〜。笑

ほんと不思議な物語なのですが、近いうちにまた観たくなってしまっている、中毒性のあるすてきな映画なのでした。


#めがね #映画レビュー #人生の夏休み  

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