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びっくり箱

左翼的なもの。
それを嫌いだということは簡単だ。
だけどわたし自身が、そこに演劇の生い立ちを持つ。
仲間の為に、世界に向き合って
演劇はするものだと
肌身に染みついている。

もし、そうではないとしたら?

お客様に楽しんで頂く。
驚き、考え、心を揺らして観て頂く。
そのことだけだとしたら?

わたしは台詞を覚える。
確実に。
そして体を動かす。
そして感情、仕草、背景
キャラクタを固定していく。

そして、それを魅せる。
楽しみにして
お客様に会えることを。
それだけだとしたら?

肩に乗っているこの荷物は
原始わたしが演劇をはじめたときから
乗っていたものだろうか。

楽しい、だけだったのは。
わたしが左に傾倒する
前だったのではないか。

わたしには世界は重すぎた。
仲間も重すぎた。
わたしには左側の世界は
霞んでよく見えなかった。

だから、裸一貫。
はじめ、そうだったように。

洋服を脱ぎ捨て
皮膚一枚でお客様に微笑みかける。
ウケるか、ウケないか。
それが役者だという
あの原点に戻るのだ。

大いなる原点に。

そこでは人は皆平等で
チンドン屋さんの控室みたいに
びっくり箱の中身みたいに
無邪気な思惑が息を潜めている。

恐れない。
面白がる。
考えない。

そうやってわたしは
とうとう
チンドン屋さんになりたい。

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