見出し画像

2024年6月に読んだ本の感想

6月は風邪が長引いてしまって、長編を書こうとしていたこともありあまり本が読めませんでした。
長編を書いているときって本を読むと影響を受けてしまいそうで、セレクトが難しい。


・「厄除け詩集」井伏鱒二


井伏鱒二、意外とあまり読んだことなかった。
ヨルシカの「雨とカプチーノ」に「勧酒」の引用が出てくるので読んでみました。漢詩訳の言葉の選び方が絶妙です。

ハナニアラシノタトエモアルゾ 「サヨナラ」ダケガ人生ダ

井伏鱒二「厄除け詩集」講談社文芸文庫P.53より「勧酒」

・「陰翳礼讃・文章読本」谷崎潤一郎


これも、有名なのに意外と読んだことなかった。
私は日本家屋で育ったので影があるところに日本の美しさがある、みたいなのなんとなく分かる気がしました。欄間からこぼれてくる光、とか。

・「海と毒薬」遠藤周作


「わたしが・棄てた・女」とか「さらば夏の光よ」みたいな遠藤周作の悲しい恋愛を描いた小説が大好きなのですが、宗教色が強い作品や社会派っぽい内容の作品ははなんとなく苦手そうで今まで敬遠していたので読んでみました。
遠藤周作は文章が読みやすくて重たいテーマの本でもするする入ってくる気がします。

戦時中の大学病院での戦争捕虜への人体実験を描いた、実際の事件をモデルにした小説。
極限状態での人の心理が繊細に描かれていて、現実はそれほどドラマチックではなく人はあっけなく死んでしまう、みたいなのがリアルでした。

・「沈黙」遠藤周作


重く苦しい内容でした……でも読んで良かった。
江戸時代にキリスト教が禁止される中布教にやって来た司祭の心の葛藤を描いた作品。
司祭が棄教に応じないと周りの庶民が拷問にかけられて殺されていくのですが、なんかこれも人の死が実際はドラマチックなものではなくあっけないのがリアルでしたね……。

どんなにひどいことが起きても神は助けてくれるわけでもなく沈黙し続け、今まで信じてきた神がもしもいなかったとしたら自分の人生は何だったのか? 無惨に死んでいった者たちは無駄死にだったのか? という重たい心の葛藤が描かれたすごい作品。

・「星にねがいを」牧野節子

児童書。子どもの頃好きだったので読み返し。
児童書って元々の部数が少なくすぐ絶版になってしまうし電子化もあまりされないので、かさばるけど処分できない……。
両親が離婚して破天荒なママと暮らす小学生の女の子の日常の心の揺れを描いた作品。
主人公が万引きに失敗して補導された時にママが「こうやってやるんだよ!」と飴を万引きしてきてしまう場面があって、子どもの時にびっくりしたのを覚えています。

児童書って極力平易な文章で無駄な描写を削って書いてあったり、キャラクターが個性的だったりするのでたまに読むと文章の勉強になります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?