「ろりーたふぁんたじー」 第3話:学校
「それではまずみなさんにはテストをしてもらいます」
「テストってなんだ?」
カエンが机に足を乗せ、ミランに問う。
「歴史のテストと身体能力テストですよ」
「お! 運動は得意だぞ! よし! やるぞ!」
「まずは歴史のテストからやりますよ」
先生が笑顔でカエンに言う。
「うおおおおお! 運動だあああ!」
「カエン、まずは歴史のテストと言っているでしょう。あなた馬鹿なの?」
フウラがカエンを見て、肩を落とす。
「馬鹿とはなんだ!? 歴史のテストだろ! そんなの余裕だ! さっさとやろうぜ!」
カエンは口をカチカチ動かし、火花を出している。
「……(ぐぅ)」
サンネはいつの間にか机の上で寝ている。
「て、ててて、テスト! わたしにはできる気がしませんんんっ!」
なぜかリンコは机の下にもぐっている。
「へふほ! はっひいあうよ!」
ヒイラは新しいパンを頬張り、ガッツポーズをしている。何と言っているかわからない。
「…………」
私はみんなの様子を目を細めて見る。
「それじゃあさっそくテストの紙と鉛筆を配りますね」
先生は6人に答案用紙と鉛筆を配り、口を開く。
「それじゃあ始めてください」
さて、と答案用紙を見やる。簡単なテストだ。ドルエスト国の成り立ちや、国にはどんな地があるかという問題だ。
この程度の知識はお母様に教わっているのですぐに答案用紙を答えで埋めた。その後、周りを見やる。
「なんだこれ? 意味がわかんね!」
「ふん、バカね。なるほど。私もさっぱりだわ。どうすればいいのかしら」
「……(ぐぅ)」
「こ、この鉛筆すごく綺麗にできてます! 林の地でできた精巧なものです!」
「う~ん」
自分以外のみんなはテストに戸惑っている、というかまともに答えられないのがほとんどだった。
私は呆れ、隣の席に座るヒイラに声を掛ける。
「どこがわからないの?」
「何がわからないかがわからない!」
「問題外だね……」
私はため息をつく。
「よし! とりあえず燃やす!」
そう言ってカエンは口から火を出し、答案用紙を燃やす。
「カエン!? それは意味がわからないよ!」
つい私は声を上げてしまう。それもお構いなしにカエンは答案用紙を燃やし、紙を燃えクズにしてしまった。
「なるほど、そうすればいいのね。それじゃあ私も」
そう言ってフウラは両翼から風を作り、答案用紙を浮かし、バラバラにする。
「フウラ!? あなたは真面目な感じだったじゃん!」
「これが正解よ」
「うん、間違いだよ」
「……(ぐぅ)」
「サンネ、あなたはいつまで寝てるの」
私はサンネの席に行き、肩を揺らす。
「うーん、なにぃー?」
「テストだよ。歴史のテスト。あなたも受けるんだよ」
「歴史のテストならわかるよー」
「あ、そうなんだ」
よかった、真面目な生徒もいるんだと安心する。
「朝起きてぇ、ご飯食べて、寝て、ご飯食べて、寝る!」
「それはサンネの1日でしょう。歴史の一ページに乗る出来事じゃないよ」
やっぱり駄目だった。
「リンコ、あなたはどう?」
「サティさん! 見てください! この紙。これも林の国でできた精巧な技術なんですよ!」
そう言って、リンコは答案用紙に顔を擦りつける。答案用紙は空欄だ。
ダメだ。
まともな者が誰一人いない。お父様、たぶんこの学校は終わりです。
「というか先生! みんなに注意してください!」
私は教壇に向かって言い放つ。
「……(ぐぅ)」
先生は寝ていた。
「寝てる!? 寝るのはサンネだけで十分だよ!」
ミランの肩を揺らして起こす。
「……うん、あ、みなさんテスト終わりましたか?」
「ある意味終わってます」
「そうですか! みなさんお疲れさまでした! よくできましたね!」
「何もできていないんですが……?」
「それじゃあ次は身体能力テストですね」
先生は両手を合わせ、笑顔で言う。
「この人も大概だ……」
みんなで外に出て、学校の裏側に行く。そこには大人サイズの藁人形がいくつかあった。
「みなさんにはあの藁人形を倒してもらいます。手段は問いません。みなさん、頑張ってください」
「よっしゃ! そんぐらい簡単だぜ! 行くぜ!」
カエンは口をカチカチと鳴らし、火花を散らす。そしてそのまま口から火を出す。
火は藁人形に当たり、燃え盛る。そしてしばらくして藁人形は燃えカスと化す。
「おお、さすがだねカエン」
私は感心する。
知識や常識がない代わりにちゃんと火の地としての能力を有効的に使えている。
「それじゃあ次は私ね」
フウラはそう言い、両翼を振るう。すると勢いのある風が藁人形へと向かう。そして、藁人形は切り裂かれる。
「おお」
これまた感心した。
「それじゃー、次はサンネがやるー」
サンネは四つん這いになり、ぐるると声を出す。すると、爪が鋭利に伸び、凄まじい速さで藁人形へと向かい、藁人形を爪で切り裂く。
「できたー」
サンネはふわふわとした笑顔で言う。やはり身体能力は高い。
「じゃ、じゃあ、次はわたしが」
リンコが言う。リンコが手を前に差し出すと、近くの芝生が揺れ動き、触手のようなものに変形した。
その芝生の触手が藁人形に向かい、藁人形を串刺しにする。
「すごい……」
素直に感心した。
知識や守護者としての威厳はないが、たしかに実力はある。これは今後が期待できそうだ。
「それではサティさんお願いします」
先生が言う。それに私は頷き、呪文を唱える。
「ダークソード」
右手から漆黒の剣が現れる。
「ダークテレポーテーション」
漆黒の剣を持ったまま藁人形の前へと瞬間移動する。そしてそのまま藁人形を一刀両断する。
「おお! なんかかっけえええ!」
「あら、さすが大魔王サタンの娘ね」
「わあ、すご~い」
「はわわわ!」
「さすがサティちゃんだね!」
5人がそれぞれ反応する。
「それでは最後、ヒイラさんお願いします」
先生が笑顔で言う。その言葉に反応し、ヒイラは背中にある剣を取り出し構える。
「せいやあああ!」
剣を持ったヒイラは藁人形に向かって思い切り走る。そして藁人形に剣を振るう。
ぽよんっ。
剣は藁人形を切ることなく跳ね返った。
「あれ? おかしいな?」
ヒイラは首を傾げる。
「何がおかしいの……」
当然、藁人形をゴム製の剣で斬ることはできない。というかゴム製でもなぜ跳ね返ったのだろうかと疑問に思うが、もう細かいことを考えるのを止めた。
そんな私を余所にヒイラは藁人形を斬ろうとしては跳ね返らせを繰り返している。
「ていやああ!」
必死なヒイラを見てサティはため息をつく。
「ヒイラ」
「なにサティちゃん!? 今斬ってるところだから!」
藁人形はびくともしない。
「ちょっとその剣貸して」
「え? うん、いいよ」
ヒイラは何の警戒もなく、私に剣を渡す。私は借りた剣を手に取り、呪文を唱える。
「ダークシャープネス」
剣先が漆黒のオーラに包まれる。
「これで斬ってみて」
「うん! わかった!」
サティはヒイラに剣を返し、サティは藁人形の前で剣を構える。そして藁人形に向かって走り出す。
「はああああ!」
ヒイラが思い切り剣を振るうと藁人形は綺麗に斬られた。
「できた! できたよサティちゃん!」
ヒイラは嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。
「よかったね」
私は剣についているオーラを消し、笑みをヒイラに向ける。
「ねえねえ! サティちゃん今何したの? どうして斬れるようになったの!?」
ヒイラは私の目の前に行き、目を輝かせ問う。一歩引いて答える。
「魔術だよ。これを使えばあなたの剣でも色々なものが斬れるんだ」
「へえ! すごい! 教えて教えて!」
「そんな簡単にできるものじゃないよ」
私はお母様の教育を受けてやっと習得できたものだ。一朝一夕でできるものではない。というか魔族特有の技なので人間には不可能だ。
「教えて教えて教えて教えてぇ!」
ヒイラは半べそをかき地団太を踏みながら私に言う。
「わ、わかったよ。少しずつ教えてあげるから」
ヒイラの必死な姿を見てつい言ってしまった。
「やったあ! サティちゃんは今日からわたしの師匠ね!」
「えぇ、嫌だな」
本音が漏れる。
「教えて教えて教えて教えてぇ!」
「わ、わかったよ」
またも言ってしまった。魔族である私が人間にどう技を覚えさせるかわからないが、了承してしまったものはしょうがない。
なんとか勉強して教えてあげなきゃ……。
そのところでちょうど先生が口を開く。
「みなさ~ん、よくできました! それじゃあ今日はこの辺でおしまいです。これからお昼ご飯を一緒に食べましょう!」
先生は両手を合わせ笑顔で言う。
「お、飯か! やったぜ!」
「ちょうどお腹が空いていたところなのよ」
「サンネもね~お腹空いたぁ」
「あ、あの、私サンドウィッチ作ってきました」
リンコはそう言って、サンドウィッチを目の前に差し出す。
「おお! サンドウィッチ! おいしそう!」
「……ヒイラ、さっきまでパン食べてたよね」
私が呆れている中、先生はすでにシートを引いて、お昼ご飯を用意していた。
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