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「赤い糸を盗る」 第15話:始動

 日曜日。虎太郎と狐人、芽衣、竜美は結局、普通に楽しんで、遊んだ。

「いやー今日は楽しかった!」

 ショッピングモールを出て、芽衣が両腕を上に掲げ、体を伸ばす。

「それはよかった」

 狐人も進展とまではいかなかったけど、芽衣と一緒に遊びに来られた。それだけで狐人はここ1年間で最高に嬉しく、つい、笑みがこぼれた。

 狐人はスマホを開き、メッセージアプリを開く。

「オレもこんなに遊んだの久しぶりだわ。楽しかった! またこの4人で来ようぜ」

 虎太郎も成果がなかったものの、久しぶりに遊んだこともあり、存分に楽しんだ。
 思い残すことはあるが、また次の機会があるだろうと前向きに考える。

「…………」

 竜美はスマホを眺める。

「どうしたの銀杏さん?」
「あ、いや、なんでもないわ」
「どう? 銀杏さんは楽しかった?」

 芽衣が笑顔で尋ねる。

「ええ、楽しかったわ。今度は馬鹿と腹黒なしのふたりで遊びに行きたいわ」

 竜美は微笑み返す。

「おい狐人、馬鹿って言われてるぞ?」
「自覚がないのが一番かわいそうだよね。馬鹿で腹黒ってすごいハイブリットだね虎太郎」
「ああ、自覚あったわ。腹黒よりはマシだったわぁ!」
「馬鹿が何を言ってるの!?」
「ほら、ふたりとも最後くらいは喧嘩しないの」

 芽衣がふたりに人差し指を立て、頬を膨らませる。

「ご、ごめん」
「今のは銀杏が悪い」
「もう、銀杏さんもそんなこと言わないでまた来ようね」
「え、ええ。そうできたら、いいんだけど……」
「うん?」
「いえ、なんでもないわ。それじゃあ私はこっちだから」

 竜美はそう言って、3人とは別方向に去ってゆく。

「あ、ばいばーい」
「じゃあな」
「…………」

 芽衣と虎太郎が手を振る。

「あ!」

 狐人が声を上げる。

「おう、どうした?」

 虎太郎が反応する。

「買い物するの忘れちゃった……」
「え? 黒崎君何か欲しいものあったの?」

 芽衣が首を傾げる。

「うん、学校で読む本読み終わっちゃったから新しく買おうと思ってたんだ」
「あ、そうなんだ。じゃあわたしたちと一緒に見る?」
「いや、付き合わせるのは悪いからいいよ。じゃあふたりとも、ここでバイバイ」
「うん! 黒崎くん、またねー」
「またな。帰り気を付けろよ」

 そうして狐人も去ってゆく。

「いやー楽しかった。いっぱい写真撮ったんだ、ほら!」

 芽衣と虎太郎はふたりで駅まで歩く最中、芽衣がスマホの画面を見せる。

「お、いつの間にそんな撮ったのか。……っ!?」
「うん? ああ、乙女の写真フォルダをそんなに見ないでよ……」

 芽衣は頬を赤く染め言う。

「…………」

 虎太郎は絶句する。さすがの虎太郎も、芽衣の狂気に気付いてしまった――。


 虎太郎、芽衣と別れてから10分後。

「やあ」
「…………」

 大きな観覧車のもとにふたりの男女が邂逅する。


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