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【1982】利用しうる燃料(再生可能エネルギー)は膨大になる

【1982年の卒論回顧】代替エネルギー開発におけるソフト・エネルギー・パス理論の有効性(18)
 
(99頁)
 
2 ソフト・エネルギー・パス実現上の課題
 
 現在いわゆるハードなエネルギー供給システムに大きく依存している産業部門において、太陽・風力・地熱・バイオマスといった再生可能なソフト・エネルギーに、エネルギー源を全面的に切り換えていくことが、果たして可能かどうか非常に疑問が残る。
 
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 ソフト・エネルギー・パスをとるには、用途に応じたエネルギーを与えてやり、徹底的な省エネルギーをせねばならないが、今までの省エネルギーは、どの例もコストダウンのための省エネルギーであって、あくまでも目先の経済的合理性の範囲内でしか行われていない。
 
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 営利的な省エネルギーではなく、まさにエネルギー温存、あるいはエネルギーの自給自足のための、ソフト・エネルギー・パスにのっとった省エネルギーは、行われていない。
 さらに、ソフト・エネルギー・パスの省エネルギーは、相当のコストおよび時間が必要とされている。
 エネルギー供給面においては、ロビンズの分析結果によると、日本のエネルギー最終需要の68%(注1)は加熱用で、そのうち、100度C以上の熱需要が22%(注2)、100度C以下が46%(注3)になっている。
 
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 家庭やビルにおける暖房や給湯用のエネルギー需要は、100度C以下の低温であるから、再生可能エネルギーで供給し得る可能性は大きいが、100度C以上の熱に限っては疑問が残る。
 ここで、エネルギー問題が困難な状況にあるからといって、生活レベルを落とす必要はない。
 
(103頁)
 
 ただ現段階では、どんなテクノロジーを組み合わせればどの目的にもっとも効果的であるかを判断するのはどう見ても困難であるが、利用しうる道具立てと燃料は、膨大になるに違いない。
 
新しいエネルギーを開発する技術は、それを貯蔵し、輸送することによって、さらに可能性をひらく。
 ゼネラル・モーターズ社が最近発表したところによれば、同社は電気自動車用の高性能バッテリーを開発した(注4)という。NASAの研究所では、従来の鉛と硫酸を使ったバッテリーの3分の1のコストで製造できる「レドックス」という蓄電装置を完成した(注5)。
 
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 これらのテクノロジーは、大部分まだ初期の開発段階にあって、なかには実用化にほど遠いものも多い。
 従って、今後、ソフト・エネルギー・パスを実現していく上で大切なことは、技術面ではもちろんのことであるが、省エネルギーや自然エネルギーの利用拡大が、人間に対して大きな利益をもたらすことが示され、大衆にソフト・エネルギー・パスの存在を知らせることも必要である。
 
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 そのためには、ソフト・エネルギー・パスが新しい雇用をもたらし、経済成長を
もたらすことが示されねばならない。
 このような過程を経なければ、ハード・エネルギー・パス的な価値観すなわち効率重視からの脱却はできないし、もちろんのこと、ソフト・エネルギー・パスも壊れ去る以外にはない。
 
(つづく)マガジン「ソフト・エネルギー・パス理論の有効性」に編綴
 

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