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日記6/13 Noteの山で【ハーモニー】を書かないわけ

 昔Kindleセールで買ったSF小説、伊藤計劃「ハーモニー」を、100ページほど読み直す。

〈definition〉
〈i:大人になること、それは〉
〈d:WatchMeを身体に入れて〉
〈d:どこかの生府の合意員になって〉
〈d:生府のサーバにカラダを繫がれて〉
〈d:生活指標をどこぞの健康コンサルからもらって〉
〈d:共同体のセッションにオンオフ両方きちんと顔を出す〉
〈/definition〉
つまりは、そういうことなのだ。

 ネットブログには優しくない文体。
 コード風の言葉を文章に入れられると、ブログ上ではコード入力したと判断されてしまい、文字が勝手に変換されたり他の機能が表示されてしまうことがあるから厄介だ。

 とはいえ

 ハーモニーを読んだ人は、その文体を、危険だと承知で真似したくなる。
 (アニメから入った人は、その口調に憧れるかもしれない)


 例えば積み本の山を表現する時、
 私はとりあえずその本のタイトルを羅列する。
 しかし伊藤計劃にかかれば

〈list:item〉
〈i:哲学者の図鑑〉
〈i:今月号の文学雑誌〉
〈i:セールで買った文庫本たち〉
〈i:好きな作品の設定集〉
〈/list〉

 となる。
 偶然だけれど、文字列の凹凸が実際の積んだ本の山の形になってるのも趣深い。
 リスト化してるくせに歪(いびつ)な形、それは私が社会病質者(ソシオパス)なせいだとWatchMeに警告されてしまう。

 話が逸れた。
 ともかく。
 ハーモニーについて語るのは簡単だが、記述するのは難しい。
 それは作中での、主人公のしがらみと似ている。

 人間が社会に全て監視されるおかげで、健康的で文化的で中々素晴らしい生活を送れる世界。
 その中で主人公は、わざわざ扮装地帯に向かっては、監視がオフラインな場所で吸う非合法な葉巻や酒を嗜む。

 私の日記も

〈list:item〉
〈i:ハーモニーなんて作品について書く〉
〈i:捻くれた文体や思考をする〉
〈i:まとまりのないハッシュタグ〉
〈/list〉

 などせずとも、大人しく

〈commonsense〉
〈i:人気ブログの文体を真似ること〉
〈i:公式に勧められたテーマを書くこと〉
〈i:よく読まれるハッシュタグを使うこと〉
〈/commonsense〉

 そうすれば、
 大人気などは言わずとも、
 それなりに読まれ、それなりに読んだ人を幸せにあるいは満足させられる良い日記は書けるのかもしれない。

 しかしWatchMeだ。
 作品では、人間は様々な身体拡張や監視機器を体には埋め込まれていて、血中アルコール量、ホルモンバランス、死ぬ寸前に見た視覚情報まで全てリアルタイムでされている。
 最初は必要性、このようなシステムがないと生きていけない汚染環境だったものだけれど。
 作中の現代だろ、病気の兆候はあれば、その段階で臓器の分泌機能や運動機能が調整、または薬効成分が状態に合わせて産生されるから、実質寿命か自殺でもない限り死ぬことはない世界へと至った。
 コンタクトレンズには視界に入った食事や建物などの情報が必要に応じて映し出される。
(目の前の人間の情報が映し出されるのは、相手の顔を覚えられない人間にとっては理想郷だろう)

そんな調和(ハーモニー)の取れた世界の中ですら主人公の周り、ひいては全世界で猟奇的で謎に満ちた犯罪が行われることで、ストーリーが奏でられる。

つまりは、
多少の拗れた文章は、調和のとれたブログたちの中であっても良い∧(アクセント)となるのであろう。
むしろ、テンプレすぎな極端化を防ぐ一助、玉石混合の石居(いしずえ)とさえなっている。
子綺麗で大きな石だけでは脆い瓦礫しか作れない。

「まあ、そう言うな。結局、人間は極端な出来事を経験しちまうと、丁度いい頃合いをとるのが難しいんだな。反動で思いっきり逆の方向に針を振っちまう。いまの生命主義社会は、その結果だ。財布が使いこなせたら、貯金箱はいらんのにな……ってトァンちゃんは、貯金箱なんて知らないか」

ハーモニー

 私はまだまだ貯金箱という名の、実体は財布から溢れた硬貨入れを使っている。
 しかし現代では確かに「ハーモニー」の未来を追うように、貯金箱なんて百均ショップでも見かけなくなった。
 貯金箱に入れた分だけポイントが付与されない限り、もう夏休みの工作のラインナップからも消えていきそうだ。

 そんな令和6年。
 硬貨の山すら作らない中で、読むものの少ない日記の束をここに積み立てるのはなぜだろう。

 そんな理由を頭の中で巡らせながら、概要もうろ覚えなハーモニーを読み進める。
 結論を焦る必要はない。
 完璧(ハーモニー)な答えは、山を積むうちに見えてくるだろうから。

 …オチが弱いのは、
 完璧を捨て去ったせいでまとまりがまくなってしまったせいなのだけれども。

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