見出し画像

日2/27 焦る10分の先に【サキ短編集】

23時50分。

デジタル盤の記号を横目に
私は今から日記を書く。
今日の事は今日中に書き上げるべきだからだ。

最近買った本たちの話
ポケモンの新作情報の話
あるいは愚痴交じりの失敗談

それらを記録に残してはみたいが
生憎と今日は残り10分間しか待ってくれない。

選べる話題は、精々一つ。
なのでキーボードの一番近くの
詰まれた山から本を一冊
取り出してみたら、「サキ短編集」の文庫本(新潮文庫)だった。

約200頁の薄い本。
薄さが分かりにくければ、スマホの厚さといい勝負と言えば伝わるか。

だというのに内部には21編もの物語が積み重なっている。
それでいて、小話もギャグが単発であるのみではない。
一話の中に、ちゃんと芸人のコント一個分くらいの
ナンセンスからユーモアがしっかり幾重にも
積み重なっているから、密度は濃厚。
こんな急いで書いてる日記より
そちらを読んでくれたほうが
充実した読後感を味わえる
と、言いつつではあるが
下らない日記も後少し
で終わるので
お付き合い
願いたく

こんな世多話にもならない文章を
掻いていていたら今日は残り1分。
誤字を直す余裕もない。

何よりだが、私の指は
50秒で日記を書き終わるほど達者でない。
もう諦めよう。

私はサキ短編集を手に取り
パラパラとめくった。
そして開かれた物語のタイトルは「開いた窓」。
今日が終わる残り10秒で、ある文章が目に飛び込む。

即座に話を作り出すのは彼女の得意とするところであった。

羨ましい。
なんの話か分からないが。

そんな感想が漏れた0時10分であった。

この記事が参加している募集

海外文学のススメ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?