日記12/24 聖夜に花を摘まない
クリスマスイブ
3日前に読んだ詐欺師が主人公の話が、夢に出てきた。
詐欺師とは知りつつもあまりの饒舌さに聞き入っていると。
目覚めた時刻は昼過ぎ。
時間を盗まれてしまった。
———時間泥棒といえば。
年末は仕事にしろ趣味にしろやることが多いという。
現にこの文章を打っているスマホで、1時間ほどゲームの周回をしてしまった後。
1時間前はプレゼントキャンペーンに片っ端から応募すべく、サイトを練り歩いていた。
こんなに時間を奪うとは。
もっとユーザーが短時間でできるよう効率化すべきだ。
時間がないことを皆が承知しているというのに、どの企業もユーザーの時間を取り合っている。
ハイデガーの言葉を借りるまでもなく、まったく酷い時間泥棒社会だと責任転嫁しながら、
私は電気ケトルから湯気が溢れるのを見てスマホを置いた。
私がこの長文を打つことができるのは、時間がない中でこういった隙間時間を有効に利用しているからなどと、ほざいてみせながら。
全く年末は忙しい。
ベンジャミン・フランクリンいはく『Time is money』
鴨長明いはく『行く川の流れは絶えずして』
郭嘉伝いはく『兵は神速を尊ぶ』
3日前の本いはく『時間は大事』
時間がないのでショート動画のように。
前後の文脈を切り取って短くされた格言たち。
今はこれらのフレーズを連想する時間も勿体無い。
使うのは夢想ばかりの頭でも言葉を吐くだけの口でもなく。
実際に何かを動かす手であるべきだ。
お湯をコップに注ぐこの右手のように。
もっと単純に『カルペ・ディエム』
今日という日に花を摘め。
聖夜など存在しない紀元前の詩にも言われている常識に急かされ。
私はようやく、沸かしたお湯でコーヒーを作り上げたのだった。
とはいえ、
私は5分以上かけて蒸したこのコーヒーを気に入っている。
口に含んで感じたこのコクは。
時間をかけないと出ないものなのだから……。
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