見出し画像

【シュリンプ飼育】エビヤドリツノムシの生体に関する一考察【アクアリウム】

初めましての方は初めまして。そうでない方はいつもお世話になっております。朝霧くもりと申します。

筆者は30cm水槽でシュリンプを飼育しているのですが、立ち上げからずっとエビに片利共生するエビヤドリツノムシに悩まされてきました。
今回は、2年以上エビヤドリツノムシを観察し続けた結果をまとめたいと思います。

この記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。
それでは行ってみましょー!


エビヤドリツノムシの基礎

そもそも何者なのか

所謂「エビヤドリツノムシ」と呼ばれる生き物は学名をScutariella japonicaを言い、淡水寄生性扁形動物に分類されるTemnocephalida(截頭類, 扁形動物門有棒状体綱棒腸目)のうち、日本国内のヌカエビParatya improvisa Kemp(十脚目ヌマエビ科)に寄生する種類になります[1]。
別文献ではSuborder Scutariellidata(テムノケファーラ亜目)に属するらしい[2]ですが、どっちが正しいんですかね。

日本在来種ですが、最近は鑑賞エビを通じてヨーロッパに生息範囲を広げているみたいです[3]。一方、日本では宿主の関係から滋賀県・京都府では絶滅危惧II類に指定されているらしい。なんでや。


生態

「寄生」と書かれていますがエビの体液を吸っている訳ではなく、エビの鰓や眼柄(目の間の細いツノみたいな器官)に付着して水中の微生物を食べている説が濃厚です。性質としては「共生」ですが、エビに対してメリットをもたらしているようには考えられないため、「片利共生」の関係にあると考えられます。
要はエビ自体に害を及ぼすわけではないが、エビの為になるわけではないということです。

下図は論文[4]に乗っていた生態図で、どうやら目っぽいものも確認出来ますね。

引用:K. Kakui, T. Komai, 水生動物 2022, AA2022-1- (2022).

Cはエタノール固定した図とあったので、実際の様子はBに当たると思います。ただ、私が肉眼で観察した中だと鰓内にいるエビヤドリツノムシはCのように丸まっていそうな感じもしました。

分かりづらいですがtnが触手、suが吸盤とあったので、触手で微生物を捕まえて、吸盤でエビにくっついているっぽいです。


ちなみにこの吸盤ですが、観察した様子ではタコみたいな感じで吸い付くような吸盤というよりは、クワガタの爪みたいに細い枝を挟むような形状になっているように見えました。

また、図には載ってませんが口のような器官も吸盤に該当するのではないかと思っています。理由はエビヤドリツノムシの移動方法で、もし目に近い側を口、そうでない側を脚とするなら、口→脚→口→脚のようにして移動していたからですね。


一生

基本的に、エビヤドリツノムシはエビの鰓内で暮らしています。エビの鰓を見ると白い点々が付いていますが、これがエビヤドリツノムシです。
そして、何事も無ければここで生まれ育ち、卵を産みます。

しかしながら、エビは脱皮するため、外殻にいるだけでは脱皮殻に取り残されてしまいます。そこで、エビヤドリツノムシは脱皮直前もしくは宿主が死ぬ直前になると、鰓内から殻の外まで出てきます。

ほとんどは眼柄やヒゲの根本に移動してヒラヒラし始めます。これはヒル等と同じく次の宿主を探しているのだと思われます。しかしながら、この段階で次の宿主に移れることは多くありません。

よって、基本的にほとんどのエビヤドリツノムシは脱皮時に脱皮殻に取り残されます。しかしここからが凄い所で、脱皮殻にずっと張り付き続け、他のエビが脱皮殻を食べに来たところで足やヒゲなどからそのエビに乗り移り、最終的に鰓まで移動します。
これは実際に殻にエビヤドリツノムシが残されていた様子や、エビヤドリツノムシが他のエビの足を上っていく様子が観察されたことからほぼ間違いないと思われます。

ちなみに、脱皮殻の鰓部分にはエビヤドリツノムシの卵と思われる白いポツポツしたものが付いていたため、殻と一緒に卵も残されてしまうっぽいです。ここからどうするかは分かりませんが、その殻をエビが食べ、鰓を通じて体外に排出される際に鰓にくっつくんでしょうかね?


ちなみに、エビヤドリツノムシは殻だけでなくソイルや水草に付着することも出来ます。また、殻からソイルだったり、ソイルからソイルだったりと結構アクティブに動き回ることもあります。エビに寄生していない状態でどれくらい生きれるのかはわかりませんが、最低でも1日は生き残れるっぽいですね。
そして、別のエビの鰓で生活し、卵を産んで繁殖していくっぽいです。基本的には宿主はエビだけで、他の生物とは関係しないような気がしています。

この考えは結構的を射ていると思っています。飼育下ではエビヤドリツノムシが大繁殖し、自然下では準絶滅危惧種レベルまで減ってしまうのが「小魚など、宿主のエビが他の生物に食べられた時点でエビヤドリツノムシが死んでしまう」ことに由来しているのではないでしょうか?


対処法

エビヤドリツノムシに害がないと言いましたが、実は害がある場合があります。それは弱ったエビに大量に付いた場合で、脚やエラ、ヒゲなどにたくさんついているとそれだけでさらにエビに負担がかかるみたいです。

見栄え的にも良くないですし、エビヤドリツノムシはできるだけ水槽内から根絶した方が良い存在というのは間違いありません。

しかしながら、根絶というのはエビを飼育している以上ほぼ不可能のように感じています。
一応塩水に弱く、エビヤドリツノムシが付いたエビを薄い塩水に入れ、塩水をエビヤドリツノムシに吹きかけることで取ることができます。ちなみに、ただ塩水に入れただけでは取ることは困難です。

プラナリアキラーが効いたという例もあり、分類を考えるとそりゃ効くだろって感じはするのですが、やはりエビへの影響を考えると使いづらいです。

一番有効な対処法はエビヤドリツノムシが付いた脱皮殻を取ることと、そもそも水槽内にエビヤドリツノムシを持ち込まないことだと思います。
エビヤドリツノムシがいるかどうかは、鰓付近の白いポツポツの有無で判断しましょう。


シュリンプ飼育の役に立つこともある

先述した通り、エビヤドリツノムシは基本的に鰓で過ごしていますが、そのエビが死ぬ直前や脱皮前に外に出てきます。つまり、エビヤドリツノムシが目に見える所に居るということは、そのエビが脱皮直前か死ぬ間際の状態であるということになります。

よって、「脱皮の瞬間を見たい」とか、「そのエビが死にそうかどうか」というのをエビヤドリツノムシによって判断することができます。

ちなみに、経験則からするにエビヤドリツノムシが付いた死にそうなエビは、寿命や衰弱などで回復する見込みはないと思われます。つまり、エビヤドリツノムシが移動している時点で手遅れってことです。丁重に弔ってあげましょう。

逆に、脱皮の兆候があるのにエビヤドリツノムシが出てきていない場合は、脱皮を失敗する可能性があります。
カルシウム不足で内殻が上手く生成できていないのか分かりませんが、一度脱皮に失敗して落ちたエビからエビヤドリツノムシがわらわら出てきたことがありました。確かな情報ではないですが、参考になる部分もあると思います。


〆の挨拶

ここまでお読みいただきありがとうございました!
もしかしたら新発見の事実もあるかもしれません。専門家の方の意見を是非お待ちしております。

参考になった方はいいね、フォロー頂けると励みになります。
また、X(@asakumo_hikari)のフォローもお願いします!

また次回の記事でお会いしましょう!
サラダバー!


参考文献

[1] H. Ouchikawa, et al., Nature of Kagoshima. 39 (2013).
[2] https://www.lberi.jp/iframe_dir/species/uzumusi.html.
[3]
 R. Maciaszek, et al., Knowl. Manag. Aquat. Ecosyst. 422 (2021).
[4] K. Kakui, T. Komai, 水生動物 2022, AA2022-1- (2022).

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?