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ストーリー「豪雨の予感」

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水害被害ストーリー「豪雨の予感」の連載を始めました。実際の水害被害インタビューを通して分かってきた教訓やエピソードを織り交ぜた物語です。できるだけ実在する名称を使用して、水害被害…
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#警戒レベル3

「豪雨の予感」第25話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第25話(水害被害ストーリー)

「そっか、よかった。雨止んで電車動くまでは学校おりや、そこの学校が一番安全やから」
「うん、毎朝前髪乱して通うだけのことはあった」
「災害はいつ起きるかわからんからな。うん、大阪の町が海の下やった何千年も前から上町台地は陸地やったんやから、豪雨くらいでは冠水しないはずやで、そこいたら大丈夫」
「うん、それよりもお母さんと健斗が心配やわ」
「うん、これからどれくらいの降るかわからんけど、在宅避難する

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「豪雨の予感」第24話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第24話(水害被害ストーリー)

愛子の自宅は第二寝屋川沿いに立つ3階建である。自宅の南側の部屋からは眼下に第二寝屋川がみえる。増えていく水の量も具に確認することができる。今はそこに架かる上城見橋の橋桁を増水した川の水面が掠めている

みおのスマホに着信が鳴った、愛子からの連絡である。
「お母さん電話!愛ちゃんから」
「ごめん、すぐいくから健斗代わりに電話でてくれる?」
「オッケー。もしもし愛ちゃん?」
「健斗?お母さんと一緒なん

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「豪雨の予感」第23話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第23話(水害被害ストーリー)

「健斗は今ごろ小学校かな…やけど大雨警報出てるし休校??…てことは今家で一人??…いやまてよこれだけの豪雨やから母はリモート勤務なんかも…てことは二人で家におんのかな??父は災害救助で現場バタバタなんやろうな…え、まって!うちって川の横やん、もし川が溢れたら大変なんちゃうん!もしもやで、もしも流されたりしたら、うち帰るところなくなるやん!え、ちょっとどうしよ」

正面を向いて呟いている愛子の独り言

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「豪雨の予感」第22話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第22話(水害被害ストーリー)

愛子は佳奈の話しを聞きながら窓の外から微かに見える内堀を凝視していた。その内堀の手前にあるランニングコースの茶色い地面に、茶色く濁った堀の水が溢れ出ているようにもみえる。

「うちのメガネ使ってみて、はい」
佳奈は愛子のメガネを借りて外を見た。裸眼だけでは見えてなかった豪雨の景色が目の前に現れてきた。
「え、こんななってたん!めっちゃ雨降ってるやん!あ、ほんまや、堀の水溢れそうになってる。もう溢れ

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「豪雨の予感」第21話(水害被害ストーリー)

「豪雨の予感」第21話(水害被害ストーリー)

時刻は午前11時になろうとしている。愛子がいる大手前高校は15分ほど前から再び線状降水帯による激しい豪雨に覆われていた。お天気アプリの雨雲レーダーによると、現在吹田市あたりから大阪市住吉区あたりまで伸びる南北に長い線状降水帯がえんじ色の細長い帯で表示されている。地図の下にあるスライドバーを横に動かすとそのえんじ色の帯は少しずつ東に進んでいくが、そのえんじ色の帯を追いかけるように絶え間なく同じえんじ

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「豪雨の予感」第13話(備蓄品の確認と避難準備)

「豪雨の予感」第13話(備蓄品の確認と避難準備)

「西岡さん、お疲れさまです。ご心配いただいてありがとうございます。承知しました、安全確保に努めます。避難などの進捗はまた報告します。」

窓の外の豪雨は和らぐ気配がないどころか一層激しくなってきている。西岡以外から着信のないLINEをみながら、みおは家族のことが心配になってきた。

「みんな大丈夫なんかな、、連絡くらいくれたらいいのに」

みおはパソコンの電源をつけたままにして避難の準備をはじめた

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「豪雨の予感」第12話(豪雨稲光と震災被災の記憶)

「豪雨の予感」第12話(豪雨稲光と震災被災の記憶)

豪雨は“バリバリ”と音をたてながら地面に大粒の雨を打ちつけていた。その弾ける雨粒は小さいしぶきになって宙に跳ね返り、あたりの風景を白くしていく。みおが外を眺めている窓ガラスにも容赦なく雨粒が打ちつけ、まるでガラスが割れるのではないかと思うような衝撃音をたてている。真っ白になった景色のなか稲光が光りほぼ同時に雷鳴が轟く。その時間差からするとみおの自宅からそう遠くはないはずだ。みおはその光景に吸い込ま

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