【住まい】流行りという観点で照明を考える
こんにちは。
毎日推し建築家の設計した住まいを紹介している、一級建築士のこじこじです。
照明器具には流行り廃りがある!?
今朝、寝ぼけマナコでいつものようにTwitterを眺めていたら、こんな主旨のポストを目にしました。
「天井にはダウンライトをつけずに綺麗なままにしておくのが流行り」
ふむふむと思いながらそのポストを眺めていたのですが、どうやらいろんな意見があるようでした。私の住む地域ではむしろダウンライトが流行りだよ、とか内装のスタイルによって変わるのでは?とか。
どれも間違いとは言えないよなぁと思いつつ読み流していたのですが、「そもそもダウンライトっていつから存在してるんだ・・・?」と気になって(一端の設計者として知ってたらカッコイイなという下心を原動力に)少し調べたところこんなWebページがヒットしました。
照明デザインをされている方のサイトで、詳しくはぜひ記事を読んでいただきたいのですが、要約すると以下のような感じ。
今から約150年前に電気が発明され、「オイルやキャンドルの置き照明から電気の天井照明への大移動」が起こった
さらに時代が進み、建築界の装飾主義から機能主義への転換という一大ムーブメントが追い風となり1950年代に天井照明が普及した
なるほど、そもそも照明器具は床や壁にかけておくのが通常で、燃料はオイルやキャンドルであったと。そして建築に装飾や権威ではなく機能的であることを求める時代になったことで、床や壁をフリーにできる天井照明が普及するのは必然の流れ、ということですね。
天井照明は部屋を高い位置から効率よく均一に照らすことができるので、それまでの重心の低い照明と比べるとたしかに機能的です。
もう少し調べてみると、ダウンライトが開発されたのは20世紀の初め頃ということらしいので今から100余年くらい前。
そう考えると長い人類の歴史の中ではまだ始まったばかりですが、現代人の感覚からすると「照明は天井に付いているのが当たり前」と言えそうです。
ダウンライトの採用率が減ってきている気がする
話を冒頭の話題に戻すと、では最近の住宅の照明事情はどうなのか。私の肌感覚でいうと、ダウンライトの比率は少しずつ下がってきているな、という印象(特に戸建て住宅の現場では)。
一昔前(10年くらい前?)部屋の天井面中央に1つだけ付ける大きな照明器具(いわゆるシーリングライト)がデザイン的に野暮ったく思われてきたころ、それに代わるメイン照明としてよく使われるようになったのがダウンライトでした。
天井面に露出せず埋め込み型なので、どこかシンプルでスタイリッシュな印象があるんですね。タワーマンションやおしゃれな店舗では今でもよく使わていると思います。
一方でダウンライトは器具単体でそこまで照度を確保できるものではないので、メイン照明としてシーリングライトと同じくらいの照度を確保するにはたくさんつける必要がありました。その頃と比べると、数的には減ったんじゃないか。つまり、大きな空間(LDKなど)のメイン照明として使われる頻度が減ってきたんじゃないか、と予想しています。
と同時に、「そもそも部屋の隅々までそんなに明るくなくても良いのでは?」という考えも徐々に広まってきているように思います。
私は仮にこの現象を「キャンドルリバイバル現象」と呼んでみることにしました。
「キャンドルリバイバル現象」とは?
それこそエネルギーは電気のままではありますが、キャンドルの置き照明や壁付きの照明器具のような灯りの重心の低さがもたらす陰影の奥行きが豊かな住まいをつくるんだ、という静かなムーブメントのことです。住まいはただのシェルターではなくて、やっぱり落ち着くとか居心地が良いとか愛着が湧くとか、そういう機能以外の要素も大事だよね、という機能主義からの揺り戻しのような現象。
この現象は小説家である谷崎潤一郎が執筆した「陰翳礼讃」で谷崎が述べる「陰影が作り出す奥行の美しさ」に端を発しているという考えもありますが、この陰翳礼讃が世に出たのが1930年代なので、まさに置き照明から電気の天井照明に移行しつつある時代。やはり時代が動くとき、当然反対意見も存在するんですね。時がたった今、それが「キャンドルリバイバル現象」として再燃しているように思うのです。
結局、みんな違ってみんな良い
とまぁ、結局は照明器具の特性に応じて適材適所が良いんじゃないか、というシンプルな結論に落ち着いてしまうのですが、今日は私の推し建築家さんの作例を交えて適材適所の照明計画っていいなー!ということを解説できればと思います。
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