アル建築士

一級建築士で設計事務所勤務の30代設計士です。 「住宅心理学」という、存在しない学問に…

アル建築士

一級建築士で設計事務所勤務の30代設計士です。 「住宅心理学」という、存在しない学問に興味があります。 備忘録として、住宅建築のことや日々のしあわせ、思うことを綴りたいと思います。

最近の記事

日本の子どもは割合(%)の計算が苦手らしい。

割合って相対性の話。 相対性は具体的な数字抜きにしなきゃいけないから、子どもも苦手なんだろうと思う。 でも、苦手なのは子どもだけなのか? 自分が設計した建物が実際に形になってきて、初めてそこに身を置いたとき、設計した本人でさえ「思ったより天井低いな」とか、よくある。 空間把握能力は、そこに身を置いて、感覚値と実測値のすり合わせをひたすら行うことでしか鍛えられないのだな、と日々痛感している。 (例えば、住宅の天井高2400mmと病院の天井高2400mmでは、病院のほうが

    • 住宅と料理の共通点「ケ・ハレ」

      関西弁がチャーミングな料理研究家、土井義晴さんの著書に、こんなことが書いてあった。 『料理には「日常」と「非日常」がある』 氏いわく、家庭料理は日常、外食は非日常に分類されるとのこと。 土井さんは家庭料理の「一汁一菜」を提案している方で、つまり家庭料理ってそんなに手間をかけなくてもいいんだということ。 逆にプロの料理人はお金を取るのだから、手間と時間をかけて料理をつくらなければならない、ともおっしゃっている。 私は住宅設計者なので、これはとても住宅にも共通することだなぁ

      • 畳コーナーを小上がりにする理由は、「目線の高さを揃えるため」ではない・・・!?

        家の新築にあたり、「リビングの一角に、畳の小上がりが欲しいんです」という人は多い。 「戦前の床座」から「戦後のLDK」に生活様式が変化してなお、ゴロンっと寝転がれる畳の空間が欲しいという要望は途絶えない。 ところで、「小上がり」とは、「ちょっと床が上がっている」という意味である。 なぜ小上がりである必要があるのだろうか。 腰かけて足を下ろしたいから? 下に引き出し収納をつくりたいから? …確かにそれも理由のひとつだと思う。しかし、もっと本質的な理由があるようにも思える。

        • 築20年で日本の住宅の価値がゼロになる本当の理由

          「日本 不動産価値低い 理由」でGoogle検索してみる。 「(ヨーロッパの石造りに比べて)木造は耐久性が低いから」 「地震大国だから」 「財務省が耐用年数を22年と決めたから」 「人口が減少しているから」 「空き家が増加していて、供給過多だから」 「価値が下がるのが前提になっていてメンテナンスしないから」 ・・・う〜ん。言われてみればそんな気がしてくる。 一方で、なんかどれも結果論的で、本質的じゃないような気もする。 新しいものが大好きなニッポン人設計士として住宅の設

        日本の子どもは割合(%)の計算が苦手らしい。

          和風ってなんだ

          「〇〇さんの設計は、和風なんだね」 と同業者に言われたことがあります。 和風の定義ってなんですか? と聞き返そうかと思ったけど、聞くだけムダだと思ったので聞き返さなかった。 彼らがいう和風というのは、勾配屋根で、軒が出ていて、木なんかの自然素材を使っているような外観のことを言うんだと思う。 確かにそんな特徴は表れているかもしれないけど、和風の本質はそんなところにはないと思う。 そもそも和風という言い方に引っかかる。 「日本っぽいデザイン」みたいなニュアンスがあるよね?

          和風ってなんだ

          日本で家を建てるという事

          岡倉天心の「茶の本」は日本人の美意識を世界に広めた名著として有名ですが、家づくりのヒントも書かれていると個人的には解釈しています。 日本人にとっての永遠とは、物質ではなく、精神的なものであって、西洋人のそれとは考え方が根本的に異なるという指摘があります。 例えば、西洋の教会建築。あれは物質的に永遠を目指したものであって、物質が人類の文化の象徴として崇め奉られていて、ひいては個人のアイデンティティにまで波及するわけです。 (2019年にフランスの有名な教会が焼けたときに市井

          日本で家を建てるという事

          チェックリストを消す≠設計

          大手ハウスメーカーで家を建てたことがないから分からないけど、当事者のポジティブな感想としては 「スムーズに打ち合わせが進んだ!」 とか 「議事録も完璧にまとめられてて、好印象だった」 なんて声が聞かれる。 実態は知らない(今後知ることもない)けど、企業として抑えるべき住宅設計のポイントがマニュアルにまとめられていて、それをひとつひとつ潰すような確認作業をしているんだろうな、と想像できる。 普段忙しくて、家づくりに時間をかけられない人はそれでも良いと思う。 ハウスメーカーも

          チェックリストを消す≠設計

          施工者から仕事をもらう設計者の問題点3選

          田舎の建築設計事務所に勤務している設計士の戯言でございます。 事務所や店舗などの一般建築に限らず、住宅の設計の仕事って、必ずしも建物のオーナーさんから直接ご依頼いただくとは限らないんですよね。 よくあるのが、設計事務所としてお付き合いのある建設会社や工務店からの依頼。 「うちに住宅の依頼があって、ちょっとプラン考えてほしいんですが」なんて具合です。 こういった「施工者からの紹介案件」について、「むむむ」と思うことがあったので、自戒を込めてメモがわりにnoteを使わせていた

          施工者から仕事をもらう設計者の問題点3選

          「家は性能」が全てなのか問題

          (写真は東京都新宿区にある林芙美子記念館) 用・強・美の優先順位は? 用・強・美という言葉を聞いたことがありますか? 調べたところ、古代ローマ時代の建築家ヴィトルヴィウスが提唱した建築の3大要素で、 用…機能性、使いやすさ 強…安全性、耐久性 美…意匠性、美しいデザイン とのことです。 まぁ誰が言い出しっぺかなんてのはどうでもよくて、この3要素が建築をつくるうえではとても重要だよ、という話。 そしてよく聞くのが、その重要度。 「用(使い勝手)が最も大事で、強(安全

          「家は性能」が全てなのか問題