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【ショートショート】巻き戻す針、進む時間

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

タカシは過去の失敗に悩む冴えないサラリーマン。

ある日、ひょんなことから古びた時計店に足を踏み入れる。

店内は暗く、壁には無数の古時計が並んでいた。

埃っぽい空気の中、タカシは一つの精巧な懐中時計に目を奪われる。

店主は「その時計には時間を巻き戻す力がある」と不気味に笑った。

半信半疑で時計を巻き戻してみると、なんと数時間前に戻っているではないか!

「これはすごい!」と興奮したタカシは、過去の失敗をやり直そうと奮闘するが、何度試みても同じ結果に。

「なんで、何度やっても…」

絶望の中、現代に戻った瞬間、時計は壊れてしまった。

タカシは青ざめ、「すみません、壊してしまいました」と店主に謝る。

店主は微笑み、「いいんですよ。その時計の役目は終わりましたからね」と言った。

過去に戻れないと悟ったタカシは深い後悔と共に未来を見据える。

「もう振り返らないぞ!」と意気揚々と時計店を後にしたその時、背後で壊れたはずの時計が再び動き出す音がした。

「え?」と店主が驚きの声を上げたが、タカシはそれに気づかず、無言で未来に向かって歩き続けた。

店主は静かに笑い、「まあ、また失敗するんでしょうけどね。それもまた人生だ」とつぶやいた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

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