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【ショートショート】願いの叶うリモコン

この作品はフィクションです。
実際の団体や人物は関係ありません。

中村太一は、休日にふらりと立ち寄ったリサイクルショップで古びたリモコンを見つけた。

値札には「どんな願いも叶えます」と書かれている。

まさか、と太一は笑いながらも、そのリモコンを買い取った。


「まぁ、暇つぶしにはなるか」


帰宅後、太一はリモコンを手に取り、テレビの前に座った。

「宝くじが当たりますように」と心の中で願い、ボタンを押す。

テレビのチャンネルが変わると同時に、隣の部屋から「宝くじが当たった!」という叫び声が聞こえた。

太一は目を丸くし、リモコンを見つめた。


「本当に叶った…?」


翌日、職場で太一はリモコンを手に取り「上司の機嫌が良くなりますように」と願いながらボタンを押した。

すると、上司が突然ニコニコし始め、太一はプロジェクトリーダーに任命された。

「これで俺も出世コースか」と心の中でガッツポーズ。

次に太一は、天気を操作してみようと考え「晴れますように」と願った。

しかし、結果は突風が吹き荒れ、大混乱に。


「あれ? ちょっと強すぎたかも?」


数日後、太一は街中のカフェでリモコンを使って異常現象を楽しんでいた。

「もっと驚くことが起こりますように」と願うと、カフェの中の物が宙に浮き始めた。

隣に座っていた同僚の友田美咲が驚きの声を上げた。


「太一、何をしているの?」


太一は笑いながら「これ、魔法のリモコンなんだ」と説明した。


「もうやめなさい、太一!」


美咲は必死に訴えたが、太一は「これで世界が終わるわけがないだろう」と笑いながら操作を続けた。

しかし、次の瞬間、リモコンが暴走し、カフェ全体が激しく揺れ始めた。

太一は慌ててリモコンを止めようとしたが、リモコンが突然爆発し、周囲が静寂に包まれた。

気がつくと、太一はカフェの床に倒れていた。

リモコンは手の中で砕け散り、カフェには異様な静けさが広がっていた。


「一体何が起こったんだ…」


呟く太一の前に、美咲が立っていた。

「これは全て君の望んだ結果だよ」と冷たく告げた。

リモコンが壊れたことで、カフェの異常現象が急速に収まっていった。

太一は、自らの欲望に翻弄された結果、現実の大切さを痛感し、改めて日常と向き合うことを決意した。

彼の手には、もう何も変えられない、ただの古びたリモコンの残骸が残っていた。


「もしもう一度、あの力が手に入るとしたら…」


太一はその思いを振り払うように、残骸をゴミ箱に投げ捨てた。

その時、ゴミ箱の中でリモコンの破片が微かに光ったように見えたが、太一はそれに気づかずにカフェを後にした。

美咲がリモコンの残骸を見つめながら、冷たく笑った。


「やっぱり、神様のリモコンにも説明書が必要ね」


最後まで読んで頂きありがとうございました。


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