雑記#6『恐怖心』

 恐怖を構成する要素のうち、半分以上は「雰囲気」が占めているのではないかと考えている。
 例えば、人里離れた山小屋に住む老婆が夜中に包丁を研いでいる様子は、誰が見ても怖いと感じるだろう。しかしそれが電動の砥石で研いでいたとなれば、本来の怖さは発揮されるのだろうか。
 「シュコ.........シュコ.........シュコ……。」という音には、これから起こるであろう最悪の事態を想像させる効果があるが、「ヴィーーーン……ジリジリジリジリジリジリジリジリ……。」という音からは全くもってそのような恐怖心は掻き立てられない。「うるさいな、朝んなってからやれよ。人泊めといて何で今研いでんだよ。」と思うので精一杯だ。見事に相手の術中にはまり油断しきった客人は、抵抗する間もなく山姥の餌食となってしまうだろう。

 この話が後世に伝わった場合、未来の子供達の間では電動砥石の音が恐れられているのだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?