エッセイ#28『長い商品名』

 100円ローソンのホットスナックは、値段も手頃で種類も豊富なので、入店したついでによく買っている。
 先日寄った店舗には、地元の100円ローソンでは売られていない、少し高めの揚げ物が陳列されていた。見た目としては、いたってシンプルな大きめの唐揚げで、丁度私の手の平と同じくらいのサイズ感だった。何だか美味しそうだったので、昼食をこれで済ませることにした。
 会計待ちの列に並ぶ間、問題は発生した。商品の棚に貼られたプレートを見ただけでは、どこまでが商品名かわからないのだ。コンビニのホットスナックにありがちな、サブタイトルまでがまるで商品名かのように書かれているタイプのプレートである。これで書かれている文字を全部読み上げようものなら、きっと店員さんに小馬鹿にされるに決まっている。「唐揚げ!ごっち監修 でかっ!からあげ(旨塩味)」……。あぁ、どうしたことか。
 私は列に並ぶ間に頭をフル回転させ、「唐揚げ!ごっち監修 でかっ!からあげ(旨塩味)」の省略を試みた。「唐揚げ!ごっち監修」は流石に省略可能だろう。「1億人の大質問⁉︎」みたいなものだ。「でかっ!からあげ(旨塩味)」。これもでもまだ、恥じらいの方に天秤は傾いてしまう。それに「でかっ!」は普通に言いにづらい。そうなると残るのは「からあげ(旨塩味)」になってしまう。これだとこの商品の個性がほぼ消えてしまう。全てのホットスナックを見たわけではないが、多分この棚の中に別の「からあげ(旨塩味)」がある気がする。
 省略の正解がわからないまま、会計の順番が回ってきてしまった。頭は空っぽのまま、口だけが動き出した。
 「この、一番下の真ん中のをください。」
 店員さんは笑顔で対応してくれたが、その笑顔が怖かった。真顔の方が全然嬉しい。ただ、この100円ローソンには二度と行くことはないはずだ。だから大丈夫。大丈夫。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?