各国のメディア報道の比較のためのメモです。自分の覚書、考察用に作りました。
ババっと作ったので意訳、誤訳等あるかもしれません。
★photo by zubotty様
★更新履歴 23.10.18 まとめを加筆 10.20 誤訳修正、イランの項目を追加
※23.10.18午前。
※意訳多め。
※各メディアサイトのガザ病院爆発第一報で比較。
※多用されるblastという単語には爆発と爆破の意味があるが、文脈により使い分け。
日本
アメリカ
ガザの病院への攻撃により数百人が死亡したとみられる。パレスチナ当局がイスラエル軍の空爆によるものだと主張する一方、イスラエル国防軍の報道官はイスラム聖戦のロケット発射失敗によるものだとしている。
この爆発によりヨルダン、エジプト、パレスチナ自治政府とバイデン大統領の首脳会談は中止された。ホワイトハウスによればイスラエル訪問は予定通り行われるとのこと。
バイデン大統領はイスラエルへの力強いサポートを示し、一方で水と食糧が少なくなりつつある数十万の家を追われたパレスチナ人を襲う人道危機を緩和するために同国を訪問するとみられる。
イギリス
(ライブ要約より)
数百人のパレスチナ人がガザ市の病院の大規模な爆発により死亡。ハマスはイスラエルの空爆によるものと主張。
イスラエル側はイスラム聖戦の仕業だと主張。双方関与を否定している。
バイデン大統領は水曜日にイスラエルを訪問予定だが、予定していたヨルダンでのアラブ諸国の首脳達との会合は中止になった。
イスラエル軍の退避勧告が出て以来最低でも六十万人のパレスチナ人が北部から南部へと避難している。
イスラエルは千三百人の犠牲を出したハマスの襲撃(十月七日)以来、ガザへのライフラインの供給を断っている。
(記事を後で再確認したらアップデートされていたため両方引用)
火曜日に約五百人のパレスチナ人が殺害された件に関してパレスチナ、イスラエル当局は双方関与を否定している。この爆発によりヨルダン川西岸地区及び中東地域での抗議運動が広まっている。
↓(書き換え)
ガザの保健当局はガザ市の病院での爆発で数百人が死亡したと発表した。この件に関しパレスチナ、イスラエル当局は双方関与を否定。この爆発によりヨルダン川西岸地区および中東地域での抗議運動が広まっている。
ハマスが実効支配するガザの保健担当者がイスラエルの空爆によるものだとする一方、イスラエル軍はパレスチナのイスラム聖戦武装組織の誤爆によるものだとしている。
二百三十万人が居住する四十五キロの飛び地、ガザは2006年以降ハマスに実効支配されている。ハマスは、アメリカ指定テロ組織のイスラム主義グループである。
爆発はバイデン大統領のイスラエル訪問の前日に起こった。この訪問はイスラエルへの支援を表明し、市民の犠牲を最小限にするイスラエルの方策を聞くためである。
アメリカの目標はこの混乱が広がるのを防ぐことなのだ。
トルコ
ヨルダン側は、イスラエルがガザ空爆で病院にいるパレスチナ人五百人を殺害し無数の怪我人を出したことを受け、アメリカとの首脳会談を中止すると発表した。この会談にはエジプトとパレスチナの首脳も参加予定だった。だが空爆に対する怒りと抗議を表明し取りやめた。
ヨルダンは、「今は停戦に関すること以外話す意味はない」「停戦し、虐殺をやめるという決断がなされたときに再び対話の席を設ける」としている。
カタール
(ライブ要約より抜粋)
イスラエル軍の空爆が、数千人の市民が絶え間ない空爆から逃れるため、そして治療を求めやってきたガザのAl-Ahli病院を直撃した。
ガザの保健省はこれにより少なくとも五百名が死亡したと発表。また難民を泊めている国連の学校も爆破された。
バイデンとの首脳会談の中止をヨルダン政府が発表した。
千四百人以上が犠牲になった十月七日のハマスの攻撃以来、三千人のパレスチナ人がイスラエル軍に殺害されている。
イラン
ガザの保健担当局は、イスラエル政府の絶え間ない爆撃の中で、al-Ahli病院への空爆により最低でも五百人が死亡したと発表した。
ハマス政府はこれを戦争犯罪だと評している。
イランの外務省の報道官は、この攻撃を「野蛮な虐殺である。シオニスト政府はパレスチナ人に対するこの恥ずべき犯罪を犯し続ける中で、世界にその残虐な本性を見せたのだ。そして戦時中における国際法を守る気がないことを証明した」と述べた。
考察 各国メディアの病院襲撃による首脳会談中止の伝え方の違い:中止はヨルダン側の抗議によるものであるとする中東メディア、中止とだけ報道する欧米メディア、欧米側の情報が多い日本メディア
今回の事件を受けての報道の仕方の明確な違いは、ヨルダンで行われる予定だったヨルダン、エジプト、パレスチナ自治政府、米国による首脳会談中止の伝え方だと思う。
会談中止がどのような文脈でなされたかを中東メディアは比較的詳しく述べている。
(イスラエルによる病院攻撃への抗議の意味でヨルダン政府が会談を取りやめたと報道)
それに対し、大方の欧米メディアはただ中止とだけ伝えている。中止の原因が何にあったのかを明確には伝えていない。
また、日本のメディアに関しては、それ以前の問題も多い。まずNHKは、
1.そもそも首脳会談の中止を直接伝えておらず、アメリカ目線の「ヨルダン訪問延期」にしか触れていない。
2.「ホワイトハウスはバイデン大統領が18日にイスラエルを訪れたあと予定していたヨルダン訪問を延期すると発表しました」「バイデン大統領は当初、ヨルダンで・・・協議する予定でしたが、ガザ地区の病院で起きた爆発を受けて・・・アッバス議長が喪に服すると表明したことを踏まえた判断だとしています」とあり、まるでバイデンが中東諸国の気持ちをおもんばかって会談を延期した、みたいなニュアンスである。
※ただし、各国の立場表明、国連や外相のコメント等を比較的まんべんなく取り上げている点は評価。
また、日テレニュースは、
1.パレスチナ側が「会談をキャンセルした」と伝えているが、日本語におけるキャンセルというのは中止というより一方的な予約・出席取り消しといった意味合いの方が強いので、正しい伝わり方をしない。英語のcancelledを和製英語に変換しただけに見える。
2.「ヨルダンで会談予定だったパレスチナ自治政府のアッバス議長が、バイデン大統領との会談をキャンセルしたとAP通信が報じました。ガザ地区の病院への空爆を受け、パレスチナ自治区に戻り、対応にあたるためとみられます」とあるが、これだと会談中止の原因がパレスチナ側が爆発の事後処理にあたるため、という文脈になる。
と、首脳会談が中止されたという事実と、それを発表したのはヨルダン政府であるという事実がそもそも抜け落ちた報道となっている。
対して、欧米目線ではあるもののきちんと事実を伝えているのが毎日、次いで読売という感じがする。
国営放送たるNHKはいったいどのような取材の仕方をしているのか。
また、ヨルダン政府がなぜ首脳会談を中止したかという文脈に関しては、現在ヨルダン川西岸、レバノン、リビア、イラン、トルコ、ヨルダン等の中東諸国において抗議デモが多発しているという事実から鑑み、中東メディア側の「イスラエル軍による病院襲撃への抗議」が一番自然な気もする。
また、ヨルダンが首脳会談の条件として停戦を要求したという報道が事実ならばそれは間違いないだろう。
こうして見てみると、日本語の情報には限界がある、ということがよくわかる。よく日本のメディアを「マスゴミ」と呼ぶ人たちに対して、以前はそこまで言わなくても、と思っていたが、今回の報道があまりにも事実をきちんと伝えていないので、確かにそんな感じもしてきた。
中東情勢に詳しい某先生がおっしゃっていた、「日本の記者というのは自分で情報を取ってくることをしない(例外もいるが)。だから英語で自分で調べないと本当のことはわからない」という言葉が確かに的を射ているように思う。
また、基本的に日本のマスコミというのはアメリカ側、欧米側の目線で情報を伝えるということもわかった。これは、日本のマスメディアがロイター通信(イギリス本社、ユダヤ系)やAP通信(ニューヨーク本社、アメリカの放送局や新聞社の協同組合) から情報を引っ張ることが多いためと思われる。
よって中東側の言い分というのは、英語で中東メディアをググらない限りわからない。
まとめ
確かにハマスの奇襲攻撃はテロ行為以外の何物でもなく、それは決して正当化されない。しかし、ハマスが単なるテロ組織ではなく投票により選ばれた政党であるにも関わらず政権を取った途端に引きずりおろされたこと、第二次大戦後シオニスト達がそこに何百年も居住していたパレスチナ人たちを追い出しイスラエルを建国したこと、度重なる中東戦争を経てガザ地区は事実上封鎖され、基本的なインフラも乏しく、貧困の中で未来のない生活を強いられてきたこと、等々を考え合わせれば一概にハマスが悪だとも思えなくなってくる。
また、シオニスト(イスラエル建国支持者)=ユダヤ人ではないということにも留意する必要がある。
ユダヤ人の中には反イスラエル派も存在し、彼らははっきりとイスラエルは教義に反していると言っている。(十戒の盗むなかれ、殺すなかれに違反)(動画参照↓)(出典 VICE Japan)
以上、自分の覚書のため各国メディアの記事を比較してみた。
素人なので意訳や誤訳も多々あると思うが、何かの参考になれば幸いです。
今回の爆発で犠牲になられた方々のご冥福をお祈りします。