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応援することと、されること。Side-A

2019年10月5日

午前2:30 起床。眠気まなこをこすりながら、身支度を整える。
今日は、Honda FCとの決戦の日。

今治から浜松まで7時間、片道530kmの旅に出る。

本当は7月に行われる予定だったのが台風のために順延された試合だ。
※その時の顛末は以下のnoteを参照頂きたい。

行きたいけど行けないかなぁ…。この大一番の日程が決まってから何度も考えた。そんな気持ちをサポーター仲間に告げると、「車出そうか?」と神の声。日帰りの弾丸ツアーになるけど行こう! 迷うことなくその提案に乗った。

午前3:30、浜松に向かう車内にいた。

弾丸ツアーに参加の3人で、車の運転を交代しながら、浜松・都田(みやこだ)サッカー場を目指した。

午前10:30 浜松SAのスマートインターチェンジで高速道路を降りる。早速都田の文字が道路案内の看板に出てくる。いざ決戦! 車内のボルテージも上がってくる。

午前10:50 決戦の地、Honda都田サッカー場に到着。開門前のスタジアムにひとり、ふたりと青のホーム、白・赤アウェイユニフォームを着たFC今治サポーターがやってくる。遠くのアウェイ戦に心強い仲間たちだ。

午前11:20頃、FC今治の選手を載せたバスが到着。数にして15人ほどだが、サポーターが選手を鼓舞させるためにチャントを歌う。Hondaサポの方々とも交流しつつ開門までの時間を待つ。

午前11:40 開門。スタグルを調達したり、Honda FCのマスコットキャラ、パッサーロ師匠と写真撮ったりとスタジアムを楽しみながら、応援するバックスタンドへ移動する。

緑の芝が美しい。

散水車が走り、コンディションを整えるピッチはこの大一番にふさわしい顔をしていた。屋根のないバックスタンドで、10月とは思えない30度を超えているであろう気温にこの時点から苦しむが、空の蒼さと緑の芝に非日常感を感じながら、汗だくで先程購入した、スタグルのカレーを頬張った。付け合せのらっきょが甘く感じる。

午後1:00 キックオフ。

試合開始直後、暑さのせいか、はたまた早朝からの移動の疲れなのか、今日はあまり上手く声が出せない、咳き込むし、耳の抜けも悪い…。90分声出しをやりきる! と乗り込んだのに、身体がついてきてくれない。

そんなことを考えていたら、前半5分、内村選手が高い位置で相手DFからボールを奪取。そのまま持ち込み、DFとGKの間にボールを流したのを桑島選手がきっちり決めて先制! 最終的に30人ほどは集まったであろうバックスタンドのFC今治応援席が爆発する。

今シーズン、ホーム夢スタでは先制、追加点と加点し、1点を返されたものの逃げ切りに成功してHonda FCから勝利を収めていたFC今治。Honda相手に先制をされると苦しいどころの騒ぎではない。しかし、前半早い時間で先制という理想的な試合に、叫び、タオルを回し、飛び跳ね、周りのサポーターとハイタッチをし、まだまだこれからだとわかっていながらも、目の前の出来事に今シーズンで1番興奮した。

今日も勝つ!

そのためには追加点だ。だが試合展開は先制してから受けに回る展開に。さすがHondaは甘くない。

前半33分、ペナルティーエリアで太田選手がハンドの反則。PKとなり冷静に決められる、スコアは1−1。リードがなくなる。

まだまだこれからだと言い聞かせ声を出す。Honda側は38分にDF堀内選手が2枚めのイエローをもらい退場に。数的優位となった今治だったが、Honda側はそれを感じさせない試合運びで前半は終了した。

ハーフタイム。時折身体がしびれる、あちこちが攣る、脱水症状の傾向が身体から発せられる。

「どうもよろしくないなぁ」

ハーフタイム中にスタンド裏の自販機で購入したコカ・コーラを一気に飲みながらそう、つぶやく。

46の身体にむち打ちながら、続ける応援。

午後2:00 後半戦が始まる。

勝ちたい。

実際に自分が試合をする訳ではないが、選手に手が届きそうなぐらいピッチと観客席が近い都田サッカー場。選手が近くに来れば、この声は届くだろう。少しでも選手の力になればと、コールリーダーのリードを頼りに、チャントを叫ぶ。もう歌うというより、絶叫だ。

後半19分、今シーズンの失点パターンでよく見た、今治最終ラインでのパス回しを狙われる。古橋選手にカットされ、次のアクションでゴールに向かって蹴り込む。慌てて戻りながらそのボールを修行選手が止めた!

だが、そこはペナルティエリアの外だった。

一発レッドで退場を宣告される修行選手。フィールドプレイヤーをひとり代えなければならない、交代は内村選手。急遽出場となる岡田選手、ゴール真正面、ゴールラインから16.5メートル。ペナルティエリアの少し外にボールはセットされ、古橋選手がフリーキックを蹴る。鋭く振り抜いた右足で、サイドネットを揺らす、2-1。

修行選手の退場で狂った歯車、Hondaがどんどんその牙を剥いてくる。

「そういえば、今シーズンのHondaは後半鬼のような強さを見せてたな……」

そんなことが頭をかすめるが、なんとか耐える。しかし、後半44分に追加点を決められる、3-1。

メインスタンドの時計を見るともう試合時間はほとんど残っていない。それでも、諦めない。得失点差の関係もある、それよりなにより、得点という形で意地を見せてくれ! とチャントを叫ぶ。

AT5分、何も起きないまま、試合は終わった。

途中何度も声が出せないときがあった。
腕も上がらなかった。
目一杯、悔いのない応援がしたかったのに出来なかった。

暑さで体中が痛く、足は攣る。自分のつらさより、選手たちのつらさの方が何倍も大きいだろう。

自分はクラブが存在する限り、応援は続けられる。だが選手は違う、結果を出さなければシーズンオフには厳しい現実と向き合うことになる。

たった一つのプレイが、ひとつの勝利が、チームの順位が結果が正に人生を変える。そんな戦いをしている男たちに、かけられる言葉は、応援の言葉以外にない。

午後15:30 試合の終わった都田サッカー場。観戦に来ていたお客さんはほとんどスタジアムを後にしていた。公共交通機関のバスは1時間に1本程度のダイヤなので、その時間を逃さない観戦の知恵だろうか。

帰り支度を整えた選手が、クラブハウスから出てくる。出待ちのサポーターに挨拶をして、バスに乗り込む。選手を乗せたバスが見えなくなるまで、FC今治コールをし、都田サッカー場を後にした。

午後17:00 浜松駅まで電車組を送り、駅ビルの餃子屋で浜松名物の浜松餃子を食べ、日が沈み薄暗くなったあたりを見渡しながら、短い時間だがアウェイ旅的に駅前をぶらついた。

浜松、次いつ来るんだろう?

そんなことを思いながら、午後18:00、進路を西に今治に車を走らせた。

日付が変わり、午前1:30 今治に到着。7時間ほどの帰路もなんだかあっという間だった。車内では、試合のこと、SNSに投稿される今日のこと、選手からの投稿、残りのシーズンのこと、いろいろ話した。

こうやって沼にハマるんだよね~と誰かが言った。

これが面白いから、FC今治見に行こうよ! アウェイ行こうよ! と言語化できたらいいんだろうなぁ。朝3:30に集まり、20時間。結果だけだと応援するチームの負け試合を見て、浜松餃子食って帰る旅。

まったくもって合理性のある行動ではない。だがそれがいい、様々なことを合わせても、二度と出来ない体験ができるから。

この旅を通じて、応援する楽しさ、90分間で味わえる、最高の喜びと絶望。それがあるから、サッカーの応援は辞められないんだろうなと、またひとつサポーターとしての経験値が増えた、都田弾丸遠征であった。

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▲浜松餃子は餃子の餡がキャベツと玉ねぎ豚肉&ゆでもやしが特徴

Side-Bに続く。

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