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ラックコラム:モアレについて

こんにちは、ラック出版です。
今回はずばり『モアレ』についてのお話をしていきます。

モノクロの漫画を描いたことのある人なら誰しも一度は経験があるかもしれない『モアレ』

基本的にモアレはトーンを使った部分に発生します。
トーンとは小さな点(=アミ点)が規則正しく並んだもので、ぱっと見はグレーのように見える印刷表現の一種。
点の大きさや密度で濃淡を変えることができ、白黒のみで描かれる漫画での色や影の表現には欠かせないツールといえます。

トーンを貼るとぐっと漫画っぽく

モノクロの画面を華やかに彩るトーン。
実はこれがなかなか扱いが難しく、ちょっと変わったことをするとすぐモアレが起きてしまうので注意が必要です。

よくあるモアレの原因はこちら。

・アミ点の崩れ
・グレートーン
・線数違い、角度違いの重ねミス
・細かすぎる(線数が高すぎる)
・印刷に向かないトーン素材の使用


他にも色々ありますが、とりあえず上記を押さえておけばモアレの発生確率はぐっと下がるはずです。

というわけで、解説のためにわざとモアレまみれの漫画を作りました。

宇宙鳥ラックちゃん

以下、詳しい解説をしていきます。
※クリップスタジオでの作業を想定しています。


・アミ点の崩れ
モアレの原因No.1といってもいいくらい多いのがこれです。
本来一定の形であるはずのアミ点が、作業を重ねる過程で崩れてしまうのです。

よくあるのがグレースケールの作業でトーンのアミ点にアンチエイリアスがかかっていて、印刷時にそこが再現されず形が崩れてしまう、というもの。
※アンチエイリアスとは:web上などで画像をなめらかに見せるために線の周囲にグレーの部分を設ける処理

⇒回避策
最初からモノクロ2階調で作業する。
グレースケールで作業がしたい場合は、トーンを貼った後は移動・変形(拡大縮小)などはしないようにする。

この先の項目でも言えることですが、とにかく「統合後は触らない」がモアレを避けるための鉄則です。


・グレートーン
トーンがグレーになっているパターン。これも多いです!
文字だけだとどういうこと?と思ってしまうかもしれませんが
モノクロの点の集合体であるトーンの、その「点」自体がグレーになっているのです。

前項のアミ点崩れは変形が原因でしたが、こちらは不透明度をいじったりすると起こりやすいです。
例えば回想シーンなどで絵を使い回したり、写真素材を使うときなど。

⇒回避策
統合後の絵の不透明度を下げない。また上から薄い白(不透明度を下げた白)を重ねない。統合後は触らない!



・線数違い、角度違いの重ねミス
前二つはデジタル原稿ならではの注意点でしたが、これはアナログ原稿のトーンでも起こりうることです。
アミ点の並びの角度がずれていたり、トーン自体の細かさ(線数)が違うトーン同士を重ねるとモアレが起こります。

⇒回避策
複数のトーンを重ねる場合、「線数」と「角度」は揃える。
変えていいのは「濃度」だけです。(例外もあります)

また重ねミスの別パターンとして、グレー塗りとアミトーンの重なりもよくあります。

トーン化処理を忘れたレイヤーが!というあるあるなのですがほぼ確実にモアレます。入稿前によくよくチェックしましょう。
ギリギリ入稿レイヤー散らかし族には耳の痛い話ですが…(筆者のことです)



・細かすぎる(線数が高すぎる)
トーンのアミが細かすぎて印刷で再現しきれず潰れてしまうパターン。

※見やすいように少し拡大しています

⇒回避策
トーンの線数は高くても70線くらいまでにしておくことです。
とてもシンプルですね。

とはいえ最近は印刷機もどんどん進化して性能が上がっていますし、高い線数のトーンでも問題無く印刷される場合もあります。
(60線くらいが一番「漫画っぽさ」が出ると個人的には思っていますが、ここは好みの問題ですね)



・印刷に向かないトーン素材の使用
背景などの素材としてwebで見つけた画像を使ったものの、その画像が解像度が低かったりして印刷に適さずモアレになるというパターン。

⇒回避策
外部の画像や素材を使う場合は印刷に使える解像度やサイズかどうか確認しておきましょう。
「カラーイラスト用」「web漫画用」のような記載がある場合はモノクロ漫画の印刷には向いていないことがあります。


さてさて。
長くなりましたが解説は以上です。

モアレって、PCやスマホ・タブレット上の表示だと案外気づきにくくて、印刷された本を見て初めて気づいたという経験をお持ちの方も多いと思います。
それは私たち印刷会社でも同じことで、毎日たくさんのお客様の原稿を頂く中で一コマ一コマをモアレがないか気を付けて見ていくことは正直とても難しいです。

なのでどうか!
入稿前にほかの必須項目と合わせてモアレのチェックもお願いします!

仕上がった本が少しでもお客様の納得いくものであることを願って、今回はここでおしまいとします。

次回またお会いしましょう。

著者:CK(ラックスタッフ)