最近の理一難化と大学の難易度序列の変化について

 大学の偏差値というのは恐ろしいくらいに変わらない。昔から日本一の大学は東大だったし、私立の雄といえば早稲田慶応だった。旧帝大も未だに名門として君臨している。高校の場合は進学実績という客観的に評価できる指標があるため、多少の変動が発生しうるが、大学の場合はブランドが自己目的化しているため、非常に安定しているのだろう。大学の格付けほど長期間変化しないものは現代社会において珍しい。企業の給料も、服のトレンドも、ヒットチャートもどんどん変化しているのに、大学の格付けは恐ろしいくらいに変わらないのである。

 それでもさざ波程度であるが、大学の優劣は上下しうる。例えば最近は東大理一の難化が有名である。じゅそうけん氏のツイートでこういうものがあった。


 これが2023年時点の大まかな大学のレベルと考えていいだろう。もちろん共通テストの傾斜が大きい大学とそうでない大学の差や、文理による有利不利もあるかもしれないが、一番客観的な指標といったこれだと思われる。

 まず圧巻なのは東大理三である。なんと京大医学部に16点の差を付けている。理三・京医と並べ崇められる両者だが、実際はどうにも明確に差が開いているようだ。

 さらに目を引くのは東大理一の高さだ。なんと阪大医学部をも抜いている。これは情報系バブルの影響もあるだろう。京大も東工大も情報系の学科は完全にブームであり、偏差値は非常に高騰している。AIの進歩やジョブ型社会の到来により、理工系人材の価値が高まっていることが背景にあるかもしれない。最近の進学先を見ると、超進学校から東大理一に行く人が減少し、理三と理一の点数差はどんどん縮小している。東大理一の上昇は否定しようのない事実のようだ。興味深いことに、東大理一と東大理二の点数差は大きい。なんと18点も開いている。これまた興味深い。平成時代は理一と理二の差はあってないようなもので、両者の違いがよくわかっていない人も多かったからだ。この点を考えると、やはり東大理一は人気なのだと考えられる。

 以前の記事で東大理二と東大文二のレベルはちょうど同じくらいではないかと推測したが、共通テストの点数を見てもこの仮説は裏付けられる。東大文三は京大理学部と同じくらいだが、これもまた以前と大きく変わらない。興味深いのは東大文一の凋落である。以前は東大理三と並んで最高峰としてたたえられた学部だったが、最近は完全に理一と逆転してしまったようだ。同時に京大法学部も京大に中でかなり下の方になっており、全般的な法学部の凋落傾向を示している。ただし、一橋法は他の学部よりも高くなっている。法学部不人気の現代であっても、なぜか一橋と慶応の法学部は元気である。両者の司法試験合格実績も非常に良い。必ずしも学部系統だけで上下動を説明できるわけではなさそうだ。

 医学部はどうか。医学部ブームと言われる反面、医学部のレベルはそこまで上昇していないようだ。ネットではよく国立医学部は全て東大より難しいといった意見が聞かれるが、そんなことはなさそうだ。共通テストの平均点を見ても、だいたい東大=旧帝医、京大=平均的な国立医、一工=地方国立医という傾向は相変わらずのようだ。神戸医や京府医といった大都市圏の医学部は東大並みの難関とされるが、意外に東大には及ばず、京大理学部と同じくらいのようだ。千葉医はだいたい理二くらいのイメージで語られることが多いが、意外に東大に差をあけられている。医学部の共通テストの比重の大きさを考えればなおさら奇妙である。

 さて、こうした大学・学部のレベル変動に傾向はあるだろうか。しばしば言われるのは文系の凋落だ。まず東大に関しては完全に文一と理一は逆転しており、頭のいい秀才が東大文一に入って官僚になるというエリートコースは過去のものになっていることを伺わせる。東大以上に文理格差が開いているのが京大だ。京大に関しては文系と理系に明確な優劣が生まれていると判断せざるを得ない。もともと文系は首都圏集中が激しいので、そうした要因が大きいかもしれない。京大理系は東大に近いのに対し、京大文系は一橋に近いのである。ただし、一橋と東工大に関してはいまだに一橋が優位のようだ。理由としては、一橋が首都圏に位置し、首都圏一極集中の恩恵を受けられるからだろう。

 もう一つの傾向は首都圏集中だろう。地方医学部の易化傾向も地方の衰退とセットと思われる。最近難化しているのが医科歯科だが、これは首都圏集中の影響だろう。東大理一と受験者層が被るにもかかわらず、医科歯科は難化している。阪大医学部よりもレベルは上回っていることになる。私の時代も医科歯科は理一よりも少し上くらいの立ち位置だったが、いまだにこの関係は変わっていないようだ。最近は首都圏の医学部が地方旧帝大の医学部を上回っている傾向があったが、最新のデータによれば、地方旧帝大も結構盛り返しているようである。

 なお、しばしば平均点と最低点の乖離をもって不正確という議論がある。例えば東大理一は上位層が引き上げているだけで、入試難易度は医学部の方が上といった議論だ。ただ、こうした議論はあまり意味がないと考える。学歴の評価を決めるのは最低値ではなく平均値だからだ。進学校の実績を見るときに人々が注目するのは上位層と中間層の進学先であるのと同じだ。灘高校と言えば最下層が関関同立に進学する高校ではなく、半分以上が東大に受かる高校として知られている。それと同じだ。そういう点では、平均点と最低点の乖離が大きい大学に進んだ方が学歴的な評価は高くなるだろう。そうした行為に意味があるのかはわからないが。

 この数値はあくまで共通テストという一つの指標でしかないことも注意である。実際の大学の難易度を正確に表したものではないだろう。例えば東北大医学部の低さは特徴的だが、共通テストに失敗した人が多く出願しているのかもしれない。同様に、東大理二の場合も共通テストに失敗した人が自信がなくて理二に出願している可能性もあり、実際の理一と理二の点差は大きくない可能性だってある。東大理二のレベルは実際は地方旧帝大医学部に並んでいるというデータもある。

 しかし、これは筆者の完全なポジショントークでもあり、ボヤキでもあるのだが、東大文一は凋落したなあ・・・


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