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言葉のない世界【話すおむすびの本棚#1】


“話すおむすびの本棚”では私が最近読んだ本について好き勝手に紹介します。
何でもアリな読書日記のようなものです。


どもども、おむすびです。

今回紹介する本は、

『残像に口紅を』(筒井康隆)

です。

この物語の舞台は”文字と言葉が消えていく世界”
「あ」が消えれば「あなた」が消える。
だんだんと言葉が失われていく中で日々を過ごす作家、佐治勝夫。
最後、文字がすべて消えたときーー。
という“究極の実験的長編小説”です。

本当に物語として成立するのだろうか、と半信半疑だったけれど全く違和感なく読み進められました。
後半から表現に苦労して「なんとか」を連呼し、最後の方は単語のみで文章にもなっていないのに言いたいことは何となく伝わってくるからすごい。
作者の頭の中の国語辞典はすさまじい厚みと重さなのでしょう。
(あまりにも言葉と漢字がハイレベルすぎてよくわからないままスルーしたところがぼちぼちあるのはここだけの話。途中で挫折しなかっただけ偉い。)

次第に減っていく本棚の書物、輪郭のぼやけた人物、記憶から消えていくものの数々……。
“残像”のような余韻にはゾワッとさせられました。
もし自分がこの世界に存在したらいつかは消えてしまうのだろうか、そのときはどんな感覚がするのだろうか、そんな想像が膨らんで恐ろしくなる。

その一方で文字と言葉が消えていく世界のルールをいいように使い、楽しんでいる佐治が面白かったです。

私が好きなシーンは“村田晶彦”という作家の授賞式に出席した佐治。
その作家が賞状を受け取るまさにその瞬間、彼は「村田晶彦の『む』。消えろ。」と念じるんです!
世界から「む」が消えれば、当然“村田晶彦”も消えるわけで……。
その後の展開は読んでみてのお楽しみ。

作者の遊び心と探求心全開の小説、気になった方はぜひ!
(ちなみに、巻末でルール違反が5ヶ所指摘されています。探しながら読むのも面白いかもしれません。おすすめはしないけど。)

ではまた~。