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日常に溶け込む鳩避けの音

皆さんは「鳩避けの音」を聞いたことがありますか?

駅・公園・工場などで鳩が寄り付かないようにするために、高い音を継続的に鳴らしている場所があるようです。

僕が毎日通る箇所にそのような場所が一つありました。もともとかなりうるさい場所だったのでただの騒音の一つだろうと思って気にも留めていませんでしたが、ある時友人にその音は鳩避けなのだと教えてもらいました。

一度それと認識した次の日から、やたらその音が気になるようになりました。むしろ、それまでは僕にとってそれは「ない」のと同じことでした。

一度認知したが最後、それがどうしても気になってくるというのは、病名が付いていることを知ってから初めて悪化したように感じるあの身体の異変、あるいは寄り目にして浮かび上がってくるあの錯視画を初めて見た時、あるいは壁の隅にこびりついた染みに初めて気が付いた時のようなものだと感じました。

「知ってしまうことで、厄介なものを作り上げてしまった」というカントっぽいそれに出会って、知らない方が幸せなこともあると同時に、幸せでいるにはある程度無知でいる必要があるのではないか、とふと思いました。


ちなみに後で調べたところ、鳩避けに音を鳴らすというのはそれほど意味がないそうです()。でも、僕にこういうことを考えさせてくれるきっかけとなったという意味では、逆に僕があの音に一つ意味を与えることができたといえるのかもしれません。

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